079 転送魔法陣には危険がいっぱい

 と、いうわけなんです。と、僕はコーネリート先生へと事情を説明した。


 場所は変わってコーネリート先生の船の中。

 王都付近に隠されている魔法陣に乗っての移動。というかそこ魔法陣まで案内してくれたのはリバーで、なんでリバーがこの場所を知っていたのかは、何となく聞けない。


 妙につやつやした顔のコーネリート先生と魔法陣を守っている今にも倒れそうな疲労を見せた猫のような尻尾の生えた亜人さんが僕らを出迎えてくれた。


 激務なんだろうな。

 休んだほうが良いだろうに。僕が体を心配すると、絶対に休まない! と言われたので仕事熱心だ。



「所でラックちゃん早かったわね。あと2年は帰ってこないと思っていたわよ」

「2年ってグィン腐りますよね?」

「ええ腐るわね」



 会話が止まってしまった。

 コーネリート先生はニコニコで僕を見てくるし。



「あの。とりあえずリバーが先生にお話しがある。ってのと、僕の今の状況を――」

「ラック! 帰って来たって本当!?」



 扉の向こうからサーリアが入ってくる。

 僕を見ては走って近くきて腕を引っ張る。



「ええっと……」

「御託はいいから早くグィンを治しなさいよ! あまりにも遅いから本当に心配だったんだから」

「え、僕の事!?」

「……………………グィンの事よ?」



 う、だよね。



「ご。ごめん。ええっと実はまだで……」

「は?」



 手を引っ張る力が弱くなった。

 サーリアは信じられない物を見るような目つきで僕を見てくる。



「何しに帰って来たのよ……」



 そういわれるとつらい。

 ええっと別の案を聞きに帰って来たんだんだよ。



「サーリア。怒らないの、ラックちゃんはな魔法陣を使ってまで帰って来たのよ?」

「え?」

「ん?」



 魔法陣が危険とか全く聞いて無いんだけど。



「人間と持ち物を一度分解して再構築するのよー? 危険じゃないわけないじゃない。うっかりハエとか一緒にはいって失敗すると、あら不思議。ハエの亜人の出来上がり♪ だから使う人も限られるし、サーリアがラックちゃんを迎えに行かせたのも魔法陣使わなかったでしょ?」

「そうですよね……私が使おうとしたらコーネリート先生は辞めときなさいって」

「そうよ。弟子がツヴァイ君とまざってキメラになったらかわいそうだもの。失敗するような中途半端な魔法陣は書いてないけど一応心配はするのよ?」



 あっさりというコーネーリート先生の言葉に全員が無言になる。



「えっと……取り合えず無事でよかったわね。な、何か報告あるのよね?」



 あまりの話にサーリアの怒りも飛んでいて、僕に少しだけ優しくなった。嬉しいような悲しいような……。



「上で話しましょうか。先生もちょっと疲れちゃったし」

「あっすみません……魔法陣の調整中だったんですよね?」

「ええ。調に魔法陣が光って先生びっくりしちゃった」



 先生は、ちらっと魔法陣を管理している人を見ると管理している人が咳き込む。

 うん、大変そうだ。



「どうでもいいけど、私にもわかるように説明して欲しいんですけど。地下の空気なんて臭いし」

「あら、換気は十分にしてるのに」

「…………そういう問題じゃないんです!」



 相変わらずサーリアとコーネリート先生は仲がいい。

 僕もリバーに行こうか、と言って船底の魔法陣エリアを出て上へと目指す。


 もう一度サーリアに何が起こって、何が問題なのかを説明しながらだ。



「ふーん……いい考えね。ラックの所のメイド、リバーだっけ? ごめんね。名前ちゃんと覚えてなくて、どうせすぐに消えると思っていたから」

「はい。リバーです! 振った男に頼み込む事しかできないサーリア様ですよね。リバー完璧に覚えています」



 ちょ! 思わず転びそうになる。



「…………子供のいう事だし許してあげるわ。次言ったらラックを海に叩き落とすわよ」

「ラック様を叩き落としたら誰がグィン様を治すのでしょう?」

「ぐ…………」



 いや、あの二人とも辞めて。

 リバーも勝ちほこらなくていいし、ほらサーリアの手見てみて、握りすぎて血が出てるんだけど。



「コーネーリート先生よ!」

「先生忙しくて無理だわ……ってもうサーリア泣かないの」

「泣いてません!」



 声が震えているけど、僕からは何も言えない。

 なんだったらもう帰りたい。



「ラックは私の味方してくれるわよね!」

「え。ああ、うん。味方の意味がわからないけど……僕は精一杯するよ」

「どうよ!」



 サーリアがドヤ顔でリバーにマウントを取っている。



「サーリア様、味方とは言ってませんよね? 精一杯は成功するとは限りません」

「あの、二人とも喧嘩は……」

「「喧嘩じゃ」ありません」ないわよ!」



 息ぴったりに怒られてしまった。

 コーネリート先生は静かに笑うだけで助けてはくれないし、つらい。



「さぁ、この部屋でいいわね」

「ここって……食堂?」

「大正解ー、食べながら話せば元気もでるわよ。回復魔法に頼ってもお腹は減るし」



 それもそうだ。

 傷が治ってもお腹は減るし喉の渇きも癒える事はない。…………はず。



 24時間営業の大きな食堂でちょっとした料理と飲み物を手にして大きなテーブルに座る。

 大きな長方形になっていて。僕、隣にリバー。向かえにサーリアと先生が座る。



 僕は改めて現状をコーネリート先生とサーリアに説明した。


 僕の魔力を持った魔剣は他人が持っている事、その魔剣の偽物を作るのに材料を集めた事、偽物の魔剣を作るのに半月はかかる事。そこから取り換えに行くのでさらに時間がかかる事などだ。


 話を聞き終わったサーリアが飲んでいたグラスを床に落とした。



「絶望的じゃない……わかったわ。そいつを殺せばいいのよね」

「え。誰を……!?」

「誰って、ラックの魔力を奪った魔剣の持ち主よ。そいつを殺して死体を隠すのにここに戻って来たんでしょ?」



 全力で首を振る。

 確かにジャックさんは僕の事をなぜか恨んでいるようだけど、僕はそこまで恨む理由もない。

 殺されそうになったようなきもするけど、それ込の試合だ。

 逃げる事も出来たのを逃げなかった僕も悪いのであって、今は試合の事で恨むなどはないし。


 それに相手は王国の兵団長、そんな人間を殺したら不味いし、別に兵団長じゃなくても殺すって事は駄目だよ。



「もっと平和的に」

「平和的に解決したら何年かかるのよ!」

「ええっと……2年ぐらいっいっ」



 テーブルの下から思いっきりサーリアに蹴られた。

  


「暴力でしか解決できないサーリア様は置いておいて、そこでリバーは提案あるのです」

「なによちんちくりん」

「ドラ様は工具の休息と自身の集中力が続かない。と言っていましたので、お二人にもちろんリバーもポーションなどを飲ませますけど限度がありますので」



 ん?

 え……あっ……それってつまり。



「いい考えね先生もそれなら見てみたいわ」

「いいわ、全力で回復させてあげる」

「あの! それってつまりドラさんに24時間働けって事ですか?」



 思わず質問すると、僕以外の3人は同時に頷く。

 いや、それなら早く作れるだろうけどさ……え、いや……流石に。



「ラック、生きている人間と死にかけての人間どっちが大事なの?」

「久々に人体実験するとなると想像するだけで楽しいわ」

「ラック様安心してください。



 別にリバーに念をおされたわけじゃないけど、ここで反対意見を出せるほど意見はないし、コーネーリート先生も反対しないって事は、安全性があると思うし。

 最後に僕がまぁ寝れるならまぁいいかなって……つい黙ってしまったら、知らない間に決定していた。






※16日は自分に回復魔法をかけてくれる人がいないので(つ∀-)お休みになります

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