078 アンタわかるよね?とドラさんに怒られました。
街を守る大きな壁の前でミリアさん達と別れる、馬車は借り物なので返す手続きなどあるからだ。
僕が残っても邪魔だからね。
風呂敷を背中に背負った僕は直ぐに鍛冶職人のエリアへと歩き出す、後ろにはリバーが当然の様についてきた。
一応声をかけるべきだよね。
「ええっと、リバーあれだったら休んでも良いんだよ? 僕が行く場所全部につ着いてこなくても」
「クビですが……お姉ちゃんごめんなさい……リバーは首になりました。もうリバーには体を売るしか……道は残ってないんです……」
リバーが地面に座り込み足をくいっと曲げては際どい角度で僕にみせつけてくる。
これがもう少し大人の女性だったら危なかったかもしれないが、リバーにはまだちょっと色気が足りない。
「いやいやいや、嘘芝居は置いておいて」
地面に座り込むリバーにいうと、リバーは立ちあがる。
「それもそうですね♪ 暇ですしラック様一人ではまた問題事を起こすかと思いまして、それにしてもラック様はリバーの扱いに慣れて来たというか」
「長いからね……あと、問題は起こしたくはないんだよ? むこうからくるだけで」
本当にそうなのだ。
僕としてはもうお金は十分に……いや、今回の魔剣の製作や滞在費などで7割ほどなくなるけど、それでも、もうセカンドライフってので暮らしたい。
まだのんびり暮らせばこの王都でも10年は暮らしていける資金はある。冒険者を続けても命を削るだけだし、続ける理由も今はない。
「それだけラック様が魅力的。という事ですよ♪」
「そうなのかなぁ」
嫌われるよりはいいけど、別に魅力的になってもしょうがないきがする。職人エリアに来るも以前と変わった所はない。
ドラさんの工房まで行くと、相変わらず『死にたい奴だけノックしてください』と書かれた張り紙が張ってある。
ノックしないわけにもいかないのでノックすると、すぐに足音が聞こえて来た。
扉が開くと、タンクトップで相変わらず胸の谷間が凄くで目のやり場に困るドラさんが僕らを見下ろしてくる。
見下ろしてくるのはドラさんの背が高いわけじゃなく僕らが階段の下にいるから。
「あんたらか……キャンセルの話だろ? あんな素材なんて普通ないもんな。ちゃんと報告してくるとは珍しいな。
キャンセル料は別にいらないから、そのうち街で見かけたら酒でも奢って、じゃぁ」
バタンと扉が閉まった。
あの、僕はまだ一言も喋ってない。
後ろからリバーがちょっとラック様どいてください。と、いって前にでてきた。
リバーはノックの連打をしだす。
周りの通行人が見だすほどの連打だ。
「だああああうっせえ! 死にたいのかっ! って…………まだあんたらか、まだ用あるの?」
「あるから叩いてるんです。ラック様、この方はおばかさんなのです♪」
「…………子供だからってなぁ、あんたの所のメイドだろ? しつけ出来てないわけ?」
「なんと! リバーが文句を言うとラック様が怒られるのですね。リバー黙っています。ラック様代わりにどうぞ」
どうぞって言われても、うわードラさんがめっちゃ機嫌悪そう。腕を胸の下で組んで眉毛なんてピクピク動いている。
勇気を出して言わないと。
「あの! ざ、材料とってきました」
「…………え、まじでいってる?」
腕を降ろしてきょとんとしたので僕は風呂敷を床に置いて中身を見せた。
バラバラになったスケルトン君が青白い光を出して強調してるようだ。
きっと立派な魔剣にしてもらうからね。
「うわ……まじだ。じゃなくて! おい、触らない様に包みなおせ。いや! まってろ今手袋持ってくる。いいか! 絶対に触るな」
ドラさんは扉を開けっぱなしで奥に消えた、すぐに分厚いエプロンと手には鍋つかみ見たいのをはめて戻ってくる。
「触ってないだろうな……魔力を通さない手袋だよ。これをつけないと危ないから。アタシもちょっと触ったら一月ほど指が動かなかったし」
またまた大げさな。
「でもラック様普通に触ってますよね?」
「冗談だろ? そんな奴は人間じゃないよ……」
「え、はい。そうですね」
リバーが嘘をついたようになったけどごめん。
むくれないでほしい。後でアイスでも買うから許してもらおう。
ドラさんはしっかりと風呂敷を包むと深く息を吐く、とても緊張していたようだ。
「じゃぁ確かに材料は受け取った。半年後にまた来て」
え?
返事を待たずにドラさんは扉を閉めた。
「リバー?」
「何でしょう?」
「ドラさん何て言ったのかな?」
「半年後ですね。いい休暇ですよかったですね」
いやいやいやいやいや。
半年もたったらグィンもう手遅れだよ! 腐るよ!
ドラさんの工房の扉を連打する。
直ぐに小走りに走る音が聞こえると扉が開いた。
「あーー! 何! 扉壊れる! って……あれ、まだいたの?」
「ドラさん。あの半年後って」
「たった半年で出来るようにするから」
「出来れば明日には無理ですかね?」
ドラさんの表情が固まった。
思いっきりため息をつかれた後にクビをくいっと動かす。
「とりあえず入って。何度も叩かれるのも困るし」
「は、はい」
「お邪魔しますー♪」
中庭を抜けて工房けん移住建物にお邪魔する。
汗が噴き出してポケットからハンカチをだす。
僕のズボンをキュッキュっと引っ張られて後ろを見るとリバーだ。なんだろ?
「ラック様。その趣味は素晴らしいとおもいますが、怒られますよ?」
「え。何が?」
「はんかち♪」
ハンカチが何だろ。と思って広げると、Tバックだ。
…………うああああああああ! これミリアさんのだ! か、返してない!
「ん? どうしたんだい?」
「な、なんでもないです」
僕がポケットにしまうのとドラさんが振り向くのはほぼ同時だ。
「汗が酷いけど、ハンカチぐらい持ってないわけ?」
「忘れました」
壁に掛けてあるタオルをドラさんは僕に手渡してくる。
「あげるよ」
「ありがとうございます」
良い匂いのタオルで汗を拭きなおす。
適当に座って、というので前回座った椅子に座るとドラさんも座りだした。
「さて……アタシに死ねって言ってる?」
うわ。目が怖い。
別に死んでほしくはないし。
「何でそんな話に……」
「はぁ……たっく。一応それなりの物は作れる鍛冶士だよ。でもアタシは師匠みたく上手くはないし。
さすがに魔剣を作るとするとさ、国に許可もいるわけ。
道具は……まぁ揃っているか。本当は道具とかもギルドから貸して貰ったりと手続きもいる。
同じ道具で叩くにしても1日2時間ぐらいで道具も休ませないといけない。
そもそも魔剣と呼ばれる業物を材料あるから夜までにって出来るわけないよね。
確かに材料は持って来たのは凄いし約束は守る。でも期日までは約束できない」
全部喋り終わるとドラさんは、わかった? と、念押ししてきた。という事は僕の行動は全くの無駄足になる。
「はいはーい。リバーでーす!」
「なに? メイド服の子」
「道具もあって寝なかったりしたら何日ですか?」
嫌な顔をしつつもドラさんは指を折って数えてくれている。
「ひとつき、いやそこまでは……一応言うけどどれだけお金積まれても寝るからね、集中力きれるし」
「はい、十分に寝てください」
リバーが僕にだけ聞こえる声で本当に小さく、寝れるなら♪ と、付け加えていく。
その言葉が聞こえてないと思うがドラさんがちょっと引いてる顔しているし、その気持ちはとてもわかる。
「ちょっとこのメイド怖いんだけど、アタシに何させるき?」
「リバーは何もしませんよ? 作るのはドラ様ですし。ラック様ここは一度帰りましょう。お忙しい所大変ありがとうございました♪」
「え、あ……うん。あのなるべく早くお願いします! ま、またきますから」
「一応作るけど一年たっても取りに来なかったら売るからね」
僕はわかりました! と叫ぶのが精いっぱいで、リバーに手を握られてそのまま外に出た。
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