075 転落してる人生
落ちるだけの人生かもしれない。
たった数ヶ月で僕はもう5回ぐらい落ちた気がする。人生からも現実からも……。
これはサーリアに振られたかもしれない。
それまでは結構順調だったしさ、可愛い幼馴染がいて、誘われて都会にいき、良くはないけど最低限生きるすべを教えてくれた先生達とも出会えて、パーティーも組んだ。
稼ぎも悪くなく貯金もあったけど、振られてから全部なくなったし。
最後には、天井と床が崩れて僕は落ちていき気づけば死んだ。
良く死ぬときは過去の事が思い出すというけれど特に何も思い出さなく…………あれ? 死んでない。
それでも宙ぶらりんなのはかわらなく、背後を見るとガレキの先端に背中の衣服が引っかかっていた。
一瞬だけ気絶していたのかもしれない。
落ちた上を見るとうっすらと光が見えている。
「ラアアアアアアアクウウウウウウウ」
ミリアさんの声が聞こえて来て僕は大きく返事をげっほげほ、宙づりの状態で大声は無理だよ。
幸い足元は見えるので引っかかっている衣服を外してガレキを滑り落ちる。
尻餅をついた後にもう一度穴の開いた天井を見上げた。
「いきてまああああああああすうううう」
叫ぶも返事は帰ってこない。
もう上にいないのかもしれない。
「と、なると……僕が上に戻らないと困るんだよね」
まずは状況確認だ。
冒険者は焦ってはだめ……建前は。
ええっとまず落ちた穴は登れないし、助けが来る様子もない。広い空間で幸い魔物はいない。
床は粘土質で雨が降った後みたいに少しぬかるんでいる、それのおかけで助かったと思われる。
武器は王都でミリアさんに買ってもらった羽ペンのように軽いショートサイズの魔法剣、振ると炎属性の光が空中に輝く物凄い高い剣だ。
後はリバーが用意してくれたポーションというなの多分ハイポーション以上の回復薬。
恰好だけなら一流の冒険者。
ダンジョンの中というのにちょっと薄暗いだけで比較的明るい。
幸い魔物はいなく……地面がゆっくりと持ち上がった。
ぼこぼこと音を立てると僕よりも身長が高い泥人形のようなものになる。
どうみても魔物です。
「いるじゃん!」
その人型の泥人形がゆっくりと手の部分を持ち上げてくる。
殴ってくるきだろうか? 剣を抜いて振り回す。
魔物の片腕を切り落とし、囲まれる前に走る。自分でもどこに向かっているかわからないけどとにかく走る。
だって後ろからどんどんその数か増えていくんだもん。
たぶんこの沼地みたいな床が全部危ないのかもしれない。
どんなに走っても壁は見えず足がもつれそうになる、それでも前に走ると地面が固くなった。
その場所に転び前にでて後ろを見ると泥人形はそれ以上僕を追って来なかった。
「はぁはぁはぁ…………助かった……?」
暫く座って息を整えると急に寂しさがくる。誰も答えてくれないからだ……。
いや、冒険者はこれが普通だ。
僕はグィン達とパーティーを組んでいたけど、ソロ冒険者のほうが数は多い。
とにかく上を目指そう。
口の中に薬草を含んで元気をつける。
自然に出来た穴にはいりあちこち壁を触る、堅い感触ですぐには崩れてこないだろう。
壁をみても冒険者がつけるような印がない、それもそうか。
普段は入れないダンジョンらしいし。
まぁ元々僕一人で材料を探すつもりであったし、一人になった所で予定通りと言えば予定通りだ。
でも、護衛できた人が皆離れるとちょっとつらい。
魔物に見つからない様にして最下層へといき骨を拾って帰る。これが当初の予定。
ゆっくり静かに、足音を立てない様に進む。
これが一番のベストだ
息苦しい空気がある空間にでた。
あちこちに物が散乱していて、何かが暴れた後がある。
壊れた剣や木箱、その木箱からは非常用の食べ物などがみえた。
「これは嬉しい。まだ食べれるよね? ええっと乾燥した肉とパンかな。あっ美味しい、もう少し欲しいかな……」
周りには不評なんだけど僕はこの食べ物がすきだったりする。口の中に入れてひたすらに噛む。
しょっぱい味とお肉の味が唾でしみだして何時までもかんでられる。
もっとないかな……。
「暗い……」
僕が呟くと灯りが増えた。
この光はランタン級の光だ。
「え。ありが…………」
振り向いてお礼を言う前に言葉が止まる。
青白い骨の骸骨が壊れかけたランタンに火をつけて照らしているからだ。
「まままっままっままもの!」
「カッカカカカカカッカカカカカカカカカッカ」
スケルトン! それも骨が青く輝いていて僕が探していた魔物!
骨を鳴らして笑い出すと歯の部分がかけて飛び散っている。
って、それよりも距離を取らないと!
ミリアさんから絶対に触るな、触らせられるな! と何十回も聞いているから、アレに触られると魔力の流れが止まり生命力が吸い取られる。
足で蹴飛ばす!? いや、骨だしかわいそうなきもするし、靴の裏なら触っても平気かな? いやそれよりも、とりあえず壁際まで走った。
特殊スケルトンは僕を見て? 壊れたランタンを照らしてくる。
襲ってくる様子はない……。
特殊スケルトンは壊れた木箱から、僕が食べていた干し肉をつかみ口に入れた。
当然骨だからすぐに落ちる。
「カッカッカカカカッカカッカカ」
笑い出す姿はもう怖いよ。
見つかった以上戦うしかないんだけど、当然僕が勝てる相手じゃないので逃げる事を考える。
でも!
でもだよ……骨も欲しい。
うーん……どうしよう、言うか言わないべきか。
「えーっと、あの! 聞こえていたらその骨をくれませんか?」
「カタカタタ」
スケルトンの笑いが止まると僕を見る。そりゃそうだよね、穴の開いた目でみられると吸い込まれそうになる。
しゃがみだすと、乾燥肉についていた骨を僕に投げて来た。
「痛っ!」
スケルトンは満足したのか壊れた木箱を蹴り上げて遊んでいる。様に見えた。
言葉わかるのかな……いやわかっているよね。骨が欲しいっていって骨投げてくれたんだし、でもこの骨じゃない。
僕が欲しいのはあのスケルトンの体の骨だ。
本音を言えば頭意外の骨全部欲しい。
だって材料は聞いたけど部位まで聞いて無いんだもん。
最初の魔剣に使った骨が腕の骨だったら肋骨1本もっていっても足りないよね。
「あの!」
「カッカ?」
あ、よかったこっち向いた。
「この骨じゃなくて、あなたの頭意外の骨下さい!」
「ッカッカ…………ッカ!」
空洞のだった目の穴に青白い炎が二つ灯った。
手には壊れた剣をもっていて、その青白い炎が赤く変わった瞬間に僕の方へ突進してきた。
「うわ! 冗談です。冗談!」
「カッカッカカカ!!」
とんでもなく怒っている。
何とか初動をよけると、折れた剣が岩に刺さっているのがみえた。
「まったまった! 誤解です誤解!」
「カッ?」
よかった……話は通じる。
赤い炎の目が青く戻った。たぶんだけどあの目が赤になると攻撃してくるんだと思う。
「腰から下を全部下さい!」
「…………カッ!」
青かった炎の目が一瞬で赤くなった。
さすがにと思って半分にしたけど駄目だったらしい。
あ、やばい。僕の腕が特殊スケルトンに捕まれる。
「アームマナアップ!」
最近は1回しか使えないけど振りほどくかなくては……って!
「あれ?」
「カッカ……?」
おかしいな、ミリアさんがいうには掴まれると物凄い虚無感になり触られた所から先が石のようになる。と、伝えられたけど全然手は動く。
特殊スケルトンのほうも何か驚いているような感じだ、骨なので感情が読み取れないけど。
僕から手を離すと近くに飛んでいたコウモリを瞬時につかんだ。
コウモリはキューと鳴くとシワシワになり息絶える。
「あっやっぱそうなるんだ。って!」
振り向くとまた突進してきて僕の両腕を押さえつけて来た。
背中は壁に当たり痛い。
これが女の子だったらもう一呼吸顔を前にだすだけでキスが出来る距離になる。
至近距離で特殊スケルトンの目の色が赤から青、青から無へと戻っていくと僕の手を放してくれた。
先ほど僕が非常食を食べていた場所へと戻っていくと壊れたランタンの前で座り込み始めた。
なんていうか、ちょっとかわいそう。
「ええっと、その調子の悪い時もあるよ……」
「……………………カ……」
骨を鳴らす音も元気がない。
何とか元気をつけてもらって、せめて腕の1本でいいから骨を貰って行きたい。
周りを見ても落ちてるの無いし。
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