074.5 (第三者視点・サーリア)ある女性の転落人生
コーネリート先生がいる船。
正式名称は無く好きに呼んでいいわよ。と言われたので先生の船として呼ばせてもらっている。
その地下にある医務室で私は床に杖をたて詠唱を開始した。
目の前の人を救いたい、その思いが魔力を高める方法の一つ。
「ハイリカバーヒール!」
足元に魔法陣が現れては消えていき、部屋の中が光り輝く。
ベッド上で寝ているグィンの表情が和らいだようなきがして息を吐いた。
「はい、しゅうりょー。流石自慢の弟子だわ、サーリアいい結果ねー」
隣で見ていたコーネリート先生が拍手してくれる。
「私よりコーネーリート先生がかけてくれた方が……」
「先生がかけちゃうと起き上がった時に彼氏貰うわよ?」
「私がやります」
コーネリート先生ならありえる。
私と暮らしていた時は堅いイメージあったのに、この船で生活スタイルをみかけると結構緩い。
何人かの男とキスをしているのをたびたび見かけたし。
「サーリア。勘違いしてるかもだけど出生率の問題でちゃんと合意さえあれば船でなにしてもいいのよ? あなた先生の弟子なだけあって得意でしょ?」
「得意じゃないです!」
先生はそう? というと呻き声をあげるグィンの側にいき注射を手にした。
ラックの血を吸い上げてゆっくりとグィンの体へ入れていく。正直いうと気持ち悪い。
なんで他人の血なんていれるのよ。と叫びたい。
「血というか魔力よ」
「何も言ってません」
「そう? 空耳かしらね、この作業は中和作業よ。にしても高魔族の血を飲んだぐらいで強くなれるなら、魔族戦争の時に全部の魔族を殺しまくっているわよ。
一体からコップ40杯とれたらそれだけで40人が強くなれるのよ? その40人もいれば新しい高魔族を狩れるでしょうし……」
「……それはそうですけど、グィンだって強くなりたくて」
先生は、はいはいと。立ち上がる。
「先生が悪いですよー、優等生のサーリアが偉いんです」
「別にそうは言ってませんけど……ラック遅いですね。逃げたのかしら……所でラックの魔力を食べた魔食いの武器ってなんなんですか。その魔食いってのをグィンに刺したら魔族の血ってきえませんかね?」
「んー私よりサジェリのほうが詳しいんだけど、簡単にいうと生命力を吸い取る魔物から作った武器って所かしら…………サジェリに会ったら聞いてみるといいわ」
先生が意味深な言葉をいってくる。
聞きたいけど聞いていいものか……。
「あのー私あの人嫌いです」
「ラックちゃんを取られたから?」
「…………違います。ずぼらというか話聞いてないですよねあの人」
私が質問しても、あーだの、うーだの言って最後にはそうかもね。と全く興味を示さない人だった。
そのくせラックには素晴らしいね。とかじゃぁ、こっちの仕事も頼もうか! とかラックもそれで良いように使われて喜ぶし。
「ラックちゃんの何所か嫌いなの?」
「嫌いってわけじゃ。グィンのほうが好きなだけですー」
本当にそうなのだ。
別にラックが嫌いじゃなくてラックは幼馴染で頼りがいもなくなよっとしていて、冗談で言った『彼氏にしてあげよっか?』を何年間も信じるちょっとアレな幼馴染であって。
信用はしてるけど恋愛感情は厳しい。
だったら押し倒すぐらいしてこいっていうの。
「若いっていいわねー」
「そんな、先生だって…………見かけは若いですよ」
「あら、喧嘩売ってるのかしら?」
全力で首を振る。
でも、見た目かわらないし深くは追及したくないし。
先生を怒らせると毒系の魔法を打たれる。
じわじわと体をむしばんでいって、自分で治しなさいね。と魔法書だけおいて消えるのだ。
「にしても、これ以上遅くなるようだったらグィン君を封印したほうがいいわね。クリスタルに詰め込む方法で何百年も持つのよ」
「そんな魔法聞いた事ありませんけど……」
「ええ、伝えてないもの。覚える? 失敗するとクリスタルが割れてとんでもない事になるけど」
そんな危ない魔法を簡単に教えようとしないでほしい。
「辞めておきます」
「しかし、本当に遅いわねぇ……もう面倒だからこの子ゾンビにしちゃう?」
「しません! それと面倒って何ですか面倒って! グィンは生きてますし! それにそれに……うう……もうなんで私ばっかりこんな目にあうのよー!」
「あらあら泣いちゃった」
泣きたいわよ! 泣くに決まってる。
今頃は貴族の家で優雅にお茶を飲んでいるはずだったのよ。それがグィンの家から追い出されるし、危険なダンジョンに行かされるわ、そのグィンは半分死んでるし。
捨てた幼馴染に頼らないといけないって屈辱的な事になるし。
私の人生落ちているじゃないのよ!
どうせ落ちるならラックだけでいいのに!
不幸を背負って来たような男よね。私もグィンもラックにかかわったばっかりにかわいそうよ。
「サーリア。そういうのを東方の国ではサゲマンっていうのよ?」
「意味はわかりませんが何も下げてません!」
コーネリート先生は私を見ながら微笑むし、何かを蹴飛ばしたいのに蹴飛ばす相手もいない。
本当にかわいそうで……もっと泣いてやるわよ!
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