073 待ってろと言われたので犬の様に待ちます

 もう顔はシワシワのお爺さんとお茶を飲みあう。場所は孤児院の中の客室。


 ミリアさんから軽く紹介されたこの人は孤児院の院長をしてる人でサマサさんというお爺さん。


 顔に大きな傷があり四十年前まではバリバリの現役兵士だったとかなんとか。

 当時付き合っていた女性と共に孤児院を買い取り今にいたるらしい。


 話す事は別にいいんだけど、初対面の人。それも一番偉い人と一緒に何を話せばいいのか。


 ミリアさんは言っていた通りにお土産を他の人配ってさっさと消えるし。

 子供たちに囲まれた僕を院長に合わせるからといって連れてこられたのだ。




「とまぁワシがこの孤児院を買ったのは罪滅ぼしもあってだなぁ」

「なるほど」

「…………聞いてるか?」

「なるほどです」

「なんだったら2、3人種付けでもしていくか?」

「なるほ…………えっ!?」



 思わず前を向くとサマサさんがニヤニヤ笑っている。

 良かった冗談だ。



「話を聞いていないかと思ったけどちゃんと聞いてるようじゃな」

「すみません。聞いて無いように見えてしまって。あっでも半分はその聞き流してました」

「はっはっは正直でよろしい。昔からミリアは何でも自分一人で決める子でな、その許してやってくれ」



 許してやってくれもなにも……。



「あのミリアさんが迷惑とか思った事は無いですけど」

「そうか。アレも君を弟のように思っているのだろう」

「え。弟さんいるんですかっ!」



 サマサ院長さんは、すぐにしまった。と、言う顔をして押し黙った。押し黙ったままじゃわからないけど、何となくであるけど分かったかもしれない。


 多分もうこの世にいない弟さんなんだろうなぁ。

 僕が裏でミリアさんの過去を聞くのも悪いし話題を変えなくては……。



「ええっと……何か話題を」

「そうじゃな……やっぱり種付けするか?」



 あ、これ真面目なトーンだ。

 サマサ院長はまっすぐに僕をみているし、僕は周りを確認した。

 大きな窓がある部屋で窓からは女の子や男の子達がボールを蹴ったりして遊んでいる。

 端の方には砂場で遊ぶ子も見えており、近くにいる女性が一緒に遊んでいる所を見ると職員の人だろう。



「子供はちょっと……あの20代前半で胸は中ぐらいの可愛い子います?」

「ふむ。20代前半となると既に院から巣立っておるからのう10代前半では無理か?」

「無理です!」



 小さすぎるよ。

 いや。その年齢で結婚する子もいるよ? 特に女の子なら。

 でも僕はそこまで小さい子は趣味じゃないし、それで喜ぶようならリバーをもう襲ってるよ。



「ミリアから飛んでもない未来を持った青年がいる。と前評判すごかったのにのう。ロリコンではなかったか……では熟女好きなのか」

「そこまでは……いや。綺麗な人は嫌いじゃないですけど、ちょっと怖いですよね」

「ふむ。確かにな……」



 サマサ院長は腕を組んでうんうんと唸っている。きっと思い当たる過去があるんだろう。

 僕はよく怒られるけど、怒られるのが好きじゃないからね。

 怒られてもしょうがないか。と納得してるだけで別に怒られたくはない。



「では、育ててからというのはどうじゃ?」

「え……育てる?」

「そうじゃ。自分好みの女性に育ててからじゃ」



 その考えは無かった。

 いや、うん普通にありだよね。

 にやっと笑うサマサ院長。その体が爆音とともに突然に吹っ飛んだ。



「ひげばっ!」



 慌てて横を向くと、身長より大きい杖をもった女性が僕らをみていた。綺麗な人で見た目は20代ぐらい。



「随分と楽しそうなお話ですわね。わたくしも混ぜてもらいましょうかしら? 後はお客人も変な事考えるとああなりますわよ」



 壁に激突してぺらっぺらになったとおもった院長さんが起き上がる。光り輝く薄い壁があり魔法防御だ。



「死ぬかと思ったぞ。クローリア」

「もちろん死なない様に打ちました」

「ええっと……?」



 サマサ院長さんは、ほこりを落とすように衣服を叩き戻ってくる。ソファーに座ると若い女性はサマサ院長の隣に座った。


 孫?


 年齢的に見るとそんな感じだ。



のクローリアだ」

「ご紹介されましたのクローリアでっす」

「孫じゃなくて!?」



 もうこれは犯罪レベルだよ。

 思わず声に出すとサマサ院長は、頭をポリポリとかきはじめた。

 横のクローリアさんが小さく笑うと僕を見てくれた。



「ハーフエルフなんですの」



 髪をたくし上げるとクアッツルよりは短いけど人間とは違う耳が生えている。



「あ、えーっとおめでとうございます」



 自分でもよくわからないけど、なぜか口からお祝いの言葉がでる。クローリアさんは小さく笑うと、面白い方ですね。と笑い出す。


 僕もつられて笑うと、クローリアさんの笑いが突然に止まった。



「うちの娘達は商品じゃないんですのよ」



 トンっと大きな杖を床にたたきつけると部屋全体が凍りだす。

 寒い寒い寒い寒い寒い!



「ま、まてクローリア。この青年は、あのミリアが言っているラック青年だぞ!」

「えっ……あのっ!?」



 クローリアさんが杖をもう一度床にトンッと軽くつくと部屋が元通りになる。ど、どうやったんだろう……。



「そうねぇ、うちの娘。3、4人はらませて帰る?」



 ど、どうなってるんだ。

 この夫婦も僕が言うのも何だけどちょっと変というか、そもそもミリアさんは僕の事をこの二人に何を伝えたのか。



「ええっと……先ほども言ったようにもう少し大人びたというかですね……はい」

「じゃぁ、私にする?」

「は?」



 クローリアさんを思わず見る。年齢は20才前半に見えて胸も大きくもなく小さくもなく、顔は美人だ。

 え、いいの!?



「もちろん冗談よ?」

「ですよね。わかってます」



 あぶない。

 もう少しで頷きかけたし、サマサ院長の顔が無表情から微笑みにかわった。



「こうするとね。彼、夜は凄い頑張るから」

「そ、そうなんですね」



 それしかいいようがない。

 視線を合わせにくく外を見るとミリアさんが帰って来たのが見えた。ナイとセシリア隊長だっけかな。その子も一緒だ。



「あっ。帰って来たみたいですね」

「あら早かったわね。んーーあの子……まぁいいでしょうミリアがいるんですし」



 クローリアさんはナイを見た後に意味深な言葉をいいだす。

 ばれてる。完全にばれてる。

 わかるのかなぁ……となると問題が起きる前に何とかしたほうが、何ともできないけど。



「君。心配しなくていいわよ……あれがわかるのはエルフぐらいじゃないかしら」

「そうなんですかね……」

「おい! 二人とも何の話だ! ワシにもわかるようにいえ」



 サマサ院長がクローリアさんに怒るも、クローリアさんはそれを簡単にあしらい始める。

 ミリアさんは僕に気づくと外側から窓を叩いて来た、急いで開けるとため息をつきはじめる。



 なぜに……ちゃんと待っていたのに。




「ちゃんと待っていてよかったよ。またいなくなるかと思って思わずため息が出た」

「無茶苦茶な……」

「ナイとセシリアを連れて来た」

「はぁ……ええっとこんにちは。それとナイほんっとうにごめん」

「いいんです。パパに勝手について来たので……でも一声かけて」

「う、うん。今度誘拐される時は誘拐されるからって声かけるから」



 ミリアさんが何か言いたそうな顔なので、そっちを向いた。



「………………まぁ細かい事はいいか、ラックだしな。セシリアは休暇を取ってもらった。すぐにダンジョンに行くぞ」

「…………どこの?」



 ミリアさんのこめかみがピクピクって動いた。

 あっこれ、怒っている奴だ。

 僕の言い分も聞いてほしい、僕は材料の場所を教えて貰うつもりでミリアさんについて来た。

 なのにミリアさんはちょっと待ってろと外に出たのだ。

 戻って来ては直ぐにダンジョンに行くぞ。と言われても、ダンジョンはどこから出て来たの!? って言いたい。


 うん、言わないけど。


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