072 ファイヤーコーン♪
「何がえっちですね」
「…………朝から何を言っているんだ? 変態か?」
僕とミリアさんは孤児院に行くために歩き出している途中だ。
ミリアさんが僕を気でも狂ったのか? と小さく呟いているのが思いっきり聞こえているけど、本当に狂ったのかもしれない。
話数がえっちだな。って意味不明な文字が頭に浮かんだから……。
その話数が何なのかも僕にはわからない。
「…………とにかく。ラックが子供下着フェチじゃなくてよかった」
「ああ、さっきの事ですよね。誤解が解けて良かったです。お土産に困りまして」
誤解を解くのに一時間ぐらいかかったような気がするけど。
「私に任せてもらっていいかな、足りない分は私も出そう」
「えっ! いやいや、お金ならあるんですし僕が出します」
「…………もう少し使い方を考えたほうがいいぞ? 将来のために貯めないのか?」
「えーっと……前はそうだったんですけど、結局溜めてもふいに0になるなら。あと自分で稼いだようなお金でも無いですし、何人いるんです?」
30万ゴールド以上貯めたのは、サーリアの借金で全部消えたし、元々最低限あればいいかなって方だからなぁ。
「そうか……では子供は上から赤ん坊まで33人、大人は通いも入れて10人。最後に私を入れても今は44人だな」
「多いのか少ないのかわかりませんね」
僕の想像よりは多かった。
でも買えない事は無い。白金貨1枚ぐらいなら出してもいいかなって思っていたし。
ミリアさんには世話になっているんだし、僕も孤児院という場所で暮らす子には優しくしてあげたい。
「最近は戦争も無いので少ないほうだな。でも他の孤児院よりは多い、それに男の子は14を過ぎると仕事に出て18ぐらいまでには自然に孤児院を出るし、私の育った孤児院はちょっと特殊で」
特殊? なんだろ。
「ハイオークでもいるんですか?」
「…………どんな孤児院だ」
「え、でもミリアさん強いですし。確か騎士団の二人もそうだって聞いたので、ハイオークが職員にいて日々訓練してるのかなって」
「私だったらそんな孤児院絶対行きたくないな。話を戻すと、そのユーリーとセシリア含め、孤児院には送金してるからな別に足りない物は無いんだ。気軽に安めのお菓子を大量にあればいい、嫌いだから食べない。という奴はいないよ」
へぇ。孤児院事情に詳しくなる。
ミリアさんに連れられて近くの屋台へと連れてこられた。
ふわっとした白い塊の絵が書かれており。
「ファイヤーコーン!」
思わず叫んだ。
屋台の女の子がこっちを見て笑顔になる。
「そう。やぁルイーダ。買いに来たよ」
ミリアさんが若い店主の女性に気軽に声をかけている。
年齢はミリアさんより若そうで頭にバンダナ。手には白い厚手の職人手袋をしている。
誰だろう、知り合いみたいでルイーダと呼ばれた女の子も僕を見てはいらっしゃい。と笑顔を見せてくれた。
それよりも『ファイヤーコーン』だ。
お菓子の一種で乾燥したコーンを大きな鉄鍋にバターや油と砂糖や塩を入れて炒るだけのお菓子。
僕も村でよく作ってもらい食べた。
季節に関係なく乾燥したコーンがあれば冬でも作れるし小さな袋一つでも鍋いっぱいにでき定番のオヤツ。
量も凄くて食べた感じになって……。
はっきり言うと、僕は苦手なお菓子である。
だって食べ飽きたんだよ。
屋台のルイーダさんはミリアさんと話し込んでいて、いろんな小袋をもらっている。いろんなっても乾燥コーンだろうけど……あれちょっと違う?
「あれ? それは色が黒い粉ですけど、そっちはピンク?」
「コーヒー粉。キャラメル粉。チョコレート。変わり種のカレー粉とかだな、このピンクのは乾燥したストロベリーだ炒る時や炒った後に最後に絡める」
立ち眩みがした。
思わず膝から崩れ落ちる。そんな味があるだなんて都会はやっぱりすごい。僕の村では軽く塩振って終わりだったよ。
食べてみたい。
あの塩っ気の塊のオヤツが甘くなるだなんて卑怯だよ。
「あら、彼氏さんが崩れ落ちたわよ」
「彼氏ではない。弟みたいな……いや仲間だな。
これでいで本気を出せば私より強いし、今はちょっとした呪いで弱いけどな、ルイーダ彼氏にどうだ?」
えっ!?
ミリアさんの話で思わずルイーダさんを見る。
僕から見ると可愛い女性で胸も服の上からは判別は難しいが小ぶりで丁度良さそう。
くびれもあるしお尻だってかわいらしい。
「ごめーん、彼氏いるのよ」
だよね。
こんな可愛いこがフリーなわけがない。
「そうか、二人ともすまないな」
「所で凄いのねお兄さん、ミリア姉さんより強いって。
あの大丈夫? 振られたのがショックで具合が悪いとか? 立ち上がらないけど……」
「いえ、あまりに味が沢山あって思わず。僕の村では塩しかなかったので」
「あははは、味変しないと人気でないからねーええっと、じゃぁお兄さんが買ってくれるのかな? 全部で金貨1枚って所」
思ったよりも安い。
話しながら積んでくれた袋の数は30ぐらいそれに味を変える粉が10個ほど結構おまけしてくれたのだろう、大丈夫なのかな。
「では、今後ともごひいきに」
「さて、ラックいこうか、後ろに小さい子が待っている」
「うわっと、ごめんね」
大きな箱を手渡されてそれを両手で持とうとするとミリアさんが持ってくれた。
さすがに男の僕が持ったほうが良いだろうし、それぐらいはもてる。たぶん。
「あの、僕が持ちますよ?」
「孤児院につく前に倒れられたら困るからな」
「いやー僕だってそれぐらいは…………」
ミリアさんが僕にファイヤーコーンの箱を地面に置いて、僕がそれをもち…………持ち上げた!
結構重い。
とおもったら突然軽くなる。
うん、ミリアさんが持ってくれたから。
「日が落ちるといけないからな」
「…………そうですね」
孤児院までは話しながら行く。
ミリアさんは元々このファイヤーコーンを買いに外に出た所、休憩スペースの椅子で僕が座っていたのを見かけたらしい。
その話のついでに、僕が材料がこの街にない事をミリアさんに伝えた。
「なるほどな……確かに知り合いの職人も、夜中にメイド姿の女の子走っていたって今朝言っていたな」
「ですよね」
「詳細はわかった。ラックにとってその男は自分が死ぬかもしれないのに助ける値がある男なのか?」
グィンの事だ。
自分の命と引き換えにしたら自分の命のほうが大事なきもするけど。
「うーん……グィンが死ぬと悲しむ人いるからなぁ」
「ラックが死んでも悲しむ人間はいるぞ?」
「そうですかねぇ、あっミリアさんもし僕が死んだらリバーの勤め先探しをお願いします」
「…………こいつは」
突然に怒られた。
しかも名前で呼ばなくて、とうとう『こいつ』まで格下げされてしまった。
やっぱり、突然リバーの事を頼んだら怒るかぁ。ミリアさんならいい勤め先とか知ってそうなのに。
「まぁいい。孤児院が見えて来た。私はラックを紹介した後にちょっと出かけてくるから、そのまま孤児院にいてくれ」
「はぁ……あの。僕はもう孤児院で暮らすような年齢じゃないんですけど」
「誰がラックが生活するのにいてくれ。と言ったんだ」
違うのか。
でも、ミリアさんに相談しに来てるのにミリアさんが居なくなったら僕はいる必要は無いんじゃ?
だからてっきり孤児院で暮らせって言ったのかと。
「明日でもいいにはいいが、ラックは目を離すとすぐに居なくなるからな」
「そんな犬猫じゃあるまいし……ましてや自分の意思で歩くんですし」
「先日は鳥の様に飛んでいったしな」
「あ、はい。帰りを待ってます」
僕がミリアさんに約束すると子供達の声が聞こえる大きな建物が見えて来た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます