071 相手を思うからこそお土産は難しい
窓から入ってくる眩しい光で目が覚める。
もう少し寝ていたいけど今日も忙しいだろうから、上半身を起こすと足元にリバーがいた。
一瞬頭が混乱する。
部屋に二部屋とった。というか取ってもらった。リバーとは部屋を別けて寝た。鍵もかけた。
でも、メイド服のリバーは僕の下半身近くで座っており、黙ってズボンを見ては固まっている姿勢だ。
手には紙と羽ペンが握られている。
「お、おはよう? 何……を?」
「おはようございますラック様。いえ以前ラック様に趣味を密たほうが良いといわれまして、では観察日記です。と、まだ4日目なんですけどね」
「それは言ったけど…………止めて」
僕自身も無趣味というか趣味らしい物もなく、いつも頑張っているリバーにも訪ねた事があるのだ。
それにリバーの趣味が分かればいつも僕の事を面倒みてくれるお礼に何か協力できるかもしれないし。
でも僕の観察日記はそれは趣味にしないで……。
むぅ、仕方がありません。ラック様がそういうのであればと。紙とペンを閉まってくれた。後で三日分の紙を回収して燃やさなきゃ……。
「と、とりあえず今日は錬金術士やギルド方面かな……そっちを回るから」
「青白い骨でしたよね。それでしたらどこにもないです」
「無いって探しても無いのに。あっズボンありがとうちょっと後ろ向いててくれる? 履き替えるから」
リバーからシャツやズボンを貰っては着替える。昨夜は無料貸し出しのネグリジェを着て寝たからである。
後ろを向いているリバーの声が聞こえてくる。
「錬金術士協会に登録されている28名と冒険者ギルドに聞いておきました」
まじで!?
リバーの後頭部から首筋を見る。
子供っぽいけど、そういう所はちょっとドキっとするときがある。
「じゃなくて……え、28名?」
「上からいいますと、西区にいる短足だったアレキ様から順番にです。次にオーク並みに太っているブル様、そこから近くに住む…………え。説明は大丈夫ですか? わかりました。
メイドの恰好をしていったので皆さま快く質問に答えてくれました♪」
うーんメイド服関係ない。
「もしかして徹夜で!?」
「結果的にそうなりましたかね♪」
「寝て」
「と、申されてもラック様いる所にリバーありです」
あーもう。
「そうじゃなくてっ! 凄い助かるけど、そこまで僕のために体張らなくていいというか、メイドの仕事って思っているかもしれないけど、リバーは仲間なんだし僕の事で無理をさせたくないんだよ。その無理をしてないのかもしれないけど、今日一日僕はリバーが僕のために徹夜したのに一緒にいるだなんてって思ってしまうだろうし」
あっ、つい怒鳴ってしまった。
「うう………………リバーの行動は駄目だったでしょうか、しょぼーん」
「い、いや……えーっと」
泣きそうな顔だ。
どちらかと言えば泣きたいのは僕の方で、子供をしかって泣かせてるみたいで心が痛い、いつもこの調子で流される。
ラック。今日こそは鬼になってきちんとしかるんだ!
「しょぼぼぼーん」
「う、いや。ご、ごめん」
反射的に僕が謝ってしまった。
「じゃぁ今日もラック様の後ろについて――」
「それは駄目。あーええっと……今日は体を休める事! 命令! そう命令」
あまり使いたくない最終手段。
僕専属のメイドを自称してるリバーへの最大級の攻撃だ。
お願いじゃなくて命令。
他人に命令するのほんっと嫌なんだよね……心が痛い。
「わかりました。今日はリバーゆっくりと寝ます」
「そ、そうしてってリバー!?」
「何でしょう?」
何でしょう? ってリバーは足をクイっと曲げると靴を脱いでエプロンを外しスカートも脱いだ。下半身は太ももあたりまであるニーソックスと下着だけになり、上半身の部分も脱ぎ始める。
「と、突然」
「はぁ……メイド服のままでは寝苦しいのでこのままラック様の使ったベッドで寝ようかと」
「えぇ……自分の部屋は? もう一室取ったよね?」
「はい、鍵はここに」
リバーは鍵を僕に手渡してくれる。
ぼーっと鍵を見ていたらその間にもリバーはメイド服を脱ぎだした。
この状態で部屋に戻ってとはもう言えないし……ニーソックスを最後にもっていくあたり、僕の事をわかっているというか、わかってほしくなかった。
「へ、部屋に鍵かけて寝てね! ま、また明日!」
「おやすみなさいラック様」
僕が部屋からでるのとリバーがベッドに倒れ込んだ音と同時に重なったようなきがする。
あんな小さい子供でも女性は女性なんだよね。
ドキっとした自分がちょっと恥ずかしい。
階段を下りて朝食でにぎわう酒場で僕も食事を済ます事にする。朝からステーキは食べれるけどあっさりとした物を中心に食事をすませた。
他のお客と一緒に店をでて歩き出す。
「さて……どうしようかな」
今日の予定が始まる前に全部終わってるのである。
外に出てみたものの何をしていいかわからない、リバーの言っている事は本当だろうし嘘はつかない……はずだし。
「あっ。ミリアさんの所にいくか……」
確か材料のアテが無かったら孤児院に来い。って言っていた気がする。孤児院とか流石都会だよね。
地方の村はそんな場所は無くて村で裕福な人が育てたりするのが日常だ。
となれば。
「お土産がいるよね。ええっと……」
何人いるのか、子供がどれぐらいなのかまったくわからない。
これでも僕は大人だ……それなりの物を買って行かないとだめだよね。
お金もあるんだし。
いやまてよ……僕がお土産を貰って迷惑になるかもしれない、嫌いな食べ物買っていったらそれもこまる。
子供がこんなの食べれませんわーって泣きだしたら僕としてもどうしていいかわからない。
玩具だったら……ああ、これも駄目だ男の子に女の子人形を買って行ってもだめだよね。
子供用の剣とか買って行っても女の子に困るし、そもそもその玩具で怪我したら責任は僕になるよね。
うん。日用品のほうが良さそうだ。
「子供用の下着のほうがいいよね」
「……………………変態だな」
ミリアさんがボソッと呟き僕は慌てて後ろを向く。
ミリアさんがドン引きしているような顔で僕を見ている。なんでだろう?
「あ。おはようございます」
「……公園で座っているのを見かけてな……」
「なるほど。丁度孤児院に行こうと思って、ミリアさん小さい子供ってどんな下着はくんですかね? ピンクとかが良いんでしょうか?」
「ラック。絶対に孤児院に来ないでくれ……」
「えっなんで!?」
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