070.5 (第三者視点・スタン殿下)王と寝室と二人の王子
いやしかし参ったな。
豪華な寝室で寝ている父の姿を見て最初にそう思った。
横にいる兄さんがこちらを向いて心配そうな顔をしてくる。
兄さんは何も心配する事はない。
「スタン……これは」
「ルーカル殿下。国王陛下です」
「ごほっ……兄弟なんだからいつもみたいにルーカル兄さんと呼んでおくれ、いまは周りに誰もいない」
「わかりました。では父です」
ごほごほと小さい咳が続く。
肺が痛いのか腹痛なのか、それとも心臓か……兄さんは昔から体が弱い。
これもそれも、母上のせいだろう。
王族の血に耐えられなかったのか兄さんを生んで直ぐに亡くなった。
「父……スタン。冗談はよしてくれよ? この頬はコケ、自慢の金髪は白髪になり、歯もない。腕は盾さえもてないような腕で足にいたっては人間の足ではない……亜人の足だ」
「と、申されても紛れもない父なんですよ兄さん」
兄さんはベッドのすがりつくように倒れた。にしても魔族の血を入れたとたんにこうなるとは……いきなり兄さんで試さなくて正解だった。
面白い事が一つわかったのは、この状態でも生きている。という事だ。
兄さんが来る前に腹を切ってみたが自然に傷が治った。
ぎょろりとした目で見てくるが、体が動かせなく唇を動かすだけで終わった。
あの平和ボケした父がこのような状態になるとは……面白い。笑いを堪えるのに必死になってしまうな。
「サーキュアー自治区の新女王との会談で毒を盛られた。ってのが有力――」
「ばかな……父はあそこを国と認め、友好関係を……」
「ルーカル兄さん落ち着いて咳がでそうだよ。有力な説なだけなんだ。いまは証拠を集めている所だよ」
「そうだね……ごほっ……不甲斐ない……自分もスタンのように立派な力があれば……」
兄さんの体を支える。
「兄さん……僕は小さい頃に兄さんに助けられた。あの時に比べたら僕なんて力なんてない。
兄さんは、僕を魔族から助けてくれたじゃないか……愛人の子である僕を」
「懐かしいね……ごほっあの時は夢中でね……」
「大丈夫だよ、兄さん。暫くは病気という事で、兄さんは何も心配いらない……」
「………………コーネリート先生には……」
さすが兄さんだ。
解決方法を頭をフル回転させて導き出す。
「診せた後だよ。先生の力でも死なない様にする以上は……元の抵抗力が低かったとの事。どうする兄さん……今なら父の命を絶つ事は出来る」
心臓と、新しくできた魔石。この二つを砕いてやればいい。
これで名実ともにこの国のトップは兄さんになる。
「そ、それは……この自分に国王殺しをすれと……」
「兄さん。コレをみて誰が国王と思うんだい?」
濁った眼で天井を見ては息をするだけの化け物だ。
そんな化物を父と呼ぶ、優しい兄さん。
「兄さんがしないのであれば、僕がしよう」
「ま、まて……ごっほ」
「気分が優れないようだね……兄さんに黙って処理しておけば」
「スタン。そういう冗談は駄目だよ、本当に困った時は僕に相談してくれるからね。このような姿をしていて、もはや国王じゃなくても父は父だよ……ごほっ。
確実な証拠を、新女王は和平派と聞いていたし、だれの差し金だったのか。場合によっては……」
兄さんはそれ以上に何も言わない。
口から血を吐く兄さんを部屋だから連れ出した。
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