068 タイムワープしたと錯覚するリバーちゃん
馬車を乗りづいて王都に来た。
王都を守る兵士さんに証明書を見せて中に入る。
「ラック様! ストーップ! ストップです!」
「え?」
街に入ったとたんにリバーが叫ぶので僕は立ち止まる。
周りの人も立ち止まるが、興味を無くして直ぐに歩き出していく。さすが王都と言った所かな、これが村だったら一斉に野次馬だ。
「おかしいです!」
「ええっと何が?」
「先日まで宿場にいて、なんで次の日に王都なんですか!」
言っている意味がわからない。
ちゃんとユーリーさんに手紙貰ったし、馬車の手配してもらって直通の馬車でここまで来ている。
途中で野宿したり宿場に泊まったりと次の日ではないし全部順調だった。
「途中であるはずの温泉イベ。メイドと主人の禁断のラブ。突然の出産、かっこラック様が。などイベント全無視です」
「そんなイベントはないし、出産するのは何で僕なのっ。
…………いや、リバーが出産させるとかそういう意味じゃなくてね」
僕の言葉にリバーは少しにやにやしている。
いつものからかいか……。
「怒るよ?」
「どうぞ」
「………………はぁ。とにかく何事もなければ普通につくよ、紹介状にある工房にいって話を聞いてもらうよ。宿も取らないとだし」
「そういう雑用こそメイドに任せてもらえれば」
「頼まなくても自分で出来るからね」
王都という事で僕はもう一度お城を見上げる。
大きいお城でその周り囲むように川がながれているはずだ。
ここからではお城の上層部分しかみえないし、それだけで大きさがうかがえる。
「ラック様、お城なんて見上げてどうなされました?」
「いや。大きいなぁって」
「城ですからねぇ……攻め込むのでしたら墓地に隠し階段があるのでいきます♪?」
「…………いかない」
「わかりました」
冗談だよね? という言葉は抑え込む。
絶対に僕の希望通りの答えが返ってこない気がしたから。
王都を歩く事歩く事、城の外壁をぐるっと回ってさらに端のほうにある工房エリア。
筋骨たくましい人達が僕らを邪魔そうによけながら道を走っていく。
うん。邪魔なんだろうな。
それでも、冒険者や貴族風の上品な服を着た人たちともすれ違って活気が凄い。
リバーに連れられて手紙に書かれた一件の工房前についた。
そこに貼られている紙を読み上げる。
「死にたい奴だけノックしてください」
「じゃぁノックしますね♪」
止める間もなくリバーがノックをした。
まって、僕はまだ死にたくはない。
…………やりたい事もないけど。
今開けますー。と女性の声と共に扉が開いた。
見た目は僕と同じぐらいの成人女性、髪は赤系のショートでヘアバンドをしていた。日に焼けた肌でスポーツブラなのか平均サイズの胸の谷間が見える。
ヘソが見えており下はスパッツだ。
もう一度谷間に目がいくと、汗の雫が胸の間に吸い込まれていく。
「んーそういう事する店じゃないから。用が無いなら帰って」
バタンと扉が閉められた。
「ラック様暫くみてましたものねぇ……」
「え? ええっ!? そ、そんなみていたかな」
「はい。とっても、最後また胸見てましたし」
そ、そこまで見てないし。
でも、死ぬ事はないみたいだし、もう一度ノックをする。
シュン!
「えっ」
扉が開いた瞬間、僕の前に剣が突き付けられた。
あと半歩、いや首を曲げていたら剣先が鼻に刺さっている所だ。
「しつこいな、鼻の穴が三つになりたくないなら、そういう店いきなよ。メイド連れてるから貴族なんだろうけど、文字も読めないわけ? こちとら今は休業中だっていうのに。
次ノックしたら下半身のナニを切り取って女の子になってもらうよ」
剣先が離れるとバタンと扉が閉まった。
周りでみていた人達が小さく笑い通り過ぎていく。
「えーっと……」
話を聞いてほしい。
その最初の視線は僕がわるい。それは本当に悪かったと思ってるけど。誤解なのは話をすればわかるはずだ。
三回目のノックをしようとしてリバーに腕を止められた。
「ラック様って本当、変な時に凄いですよね……流行りのTSになられても困りますし、リバーがノックをしましょう」
「T……S? なにそれ?」
「お気になさらずに」
僕を後ろ下げるとリバーがノックをする。
あぶない! また剣を付きつけられたらっ!
扉が開くと眉を寄せた先ほどの女性がリバーを見下ろしている。
「何用?」
「あれ……? 攻撃されてない?」
「いやな予感がする相手には最初は攻撃しないよ……」
「ドラ様、はじめましてラック様専属の……んメイドのリバーです♪ ユーリー様から手紙をお持ちしました」
ドラさんっていうのか、あれ? 自己紹介されてないし手紙の宛名に書いていたかな……?
ドラさんは手紙を受け取る中身を直ぐに読みだす。
読みだした後に、工房の入り口を開けたまま入りな。と中に消えていった。
「ラック様入りましょう」
「そ、そうだね」
何かふに落ちないけど、入れたのでよしとしよう。
工房の内側は小さい庭になっていて、小さい井戸がついている。
その奥に大きな煙突がある家があって中に入ると、それが工房らしかった。
壁や棚には剣や鎧などが飾られていてピカピカに磨かれている。
「適当にすわんな。貴族様にはもうしわけないが、ふざけんのか!?」
「えっええ……?」
いきなり怒鳴られて、しゅんとなる。
「まぁまぁドラ様、そう怒られてはラック様が身も心も…………ちいちゃっくなっちゃいますよ」
なんで、途中で言葉とめたし。
「ちっ。そうだね……説明しようか? この手紙には師匠が作った魔剣の贋作を作れ。って書いているんだよ。鍛冶師に対して贋作を作れってのは、かなりの侮辱なんだよ」
あっ……そ、そうか。
普通に考えてそうなのかもしれない。
「す、すみませんでした」
「でもあのー。その師匠に頼んだ仕事ですよねこれ」
「師匠は死んだよ。その魔剣を作った後に」
ドラさんは吐き捨てるように教えてくれた。
「そんな危険な魔剣……ご、ごめんなさい」
「い、いや……死んだのは魔剣のせいじゃなくて……その報酬で貰った金でその………………女遊びがたたってな」
「腹上死ですね♪」
「ふく……え?」
「簡単にいうとえちえちしすぎて興奮してあの世にいっちゃう。という事です」
ドラさんが、顔を赤くして下を向いた。
照れているのかな。
「恥ずかしい……」
照れてはいないらしい。
「男にとって夢のような死に方と思います、ねーラック様♪」
「ノーコメントで……でも、わかりました。本当にすみません……今回の件は無しにします」
僕も冒険者だからわかる。良く他の人からランクが低いからこれぐらいしろ。とか色々言われた事もあるし、そんな侮辱な事をしたくない気持ちもわかる。
「まて。誰がしないって言った?」
「え。でも……」
「作るよ、師匠の武器を超えた本物の贋作ってやつを。どっちにしても、最近やる気がなかったんだよ。これも良い機会だし依頼は受ける」
いや。
本物超えられたらバレそうな気もするんだけど。
とはさすがに黙っておいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます