051 遅れて来た元パーティーとの再会……だったんだけど。
魔族のナイさんがいて凄く助かる。
先ほどから何度か骨型、獣型、スライム型など魔物に襲われたけど、全部ナイさんがハンマーで撃退してるから。
さらに撃退すると、周りにいた魔物は様子を見る感じで襲って来ない。
「ナイさんって強いんですね」
「ナイサン……じゃない。ナイ」
尊敬を込めて、さんをつけたんだけど外したほうが良いのかな。
「どうおもうリバー?」
「ナイ様、上に戻るまでまだまだ遠いんですか?」
「……トオ……イ」
「楽しい遠足ですね。ラック様どうなされました?」
「いや、なんでもないよ」
リバーが、ナイさんの事を『様』をつけるのはいいのか。これは僕に対するイジメ……ではないか。
なんだろう。それとも信頼の証って思った方がいいのかな。
でも、僕は普通の人間だよ。
魔族に信頼を簡単に勝ち取るような人物じゃないし。
そもそも、ナイはなんで僕のいう事を聞くんだろう?
「あのナイさ……ナイ! 何で僕のいう事をきくのかな?」
もしかしたら、僕が伝説の魔物マスターとかの才能があるとかなんとか。たまに魔物と友好的な冒険者とあうけど、僕の隠れた才能がここに来て開花されたのかもしれない。
「……人間……大事……しろ……いわれた」
「そ、そう」
違った。
うん、やっぱり僕は普通の人間だよ。
ふいにナイが立ち止まる。
大きな石の上に剣が突き刺さっており天井からは光が差し込んでいる。
最初に思ったのは『墓』
まさにそう思わせる雰囲気の場所だった。
ナイはポーチからティーセットを取り出すとティーカップに香りのいいお茶を注ぐ。そしてそのティーカップを全力で振って中身のお茶を石にぶっかけた。
「ええ…………」
僕が驚くと、二杯目も同じようにしては石や剣にたたきつけるようにかける。
跳ね返った液体が僕の顔やリバーの衣服に飛び散る。
「ちゃ……すき……」
「ナイ様。紅茶でしたら石にかけるよりも、お供えしたほうがいいですよ?」
ナイはリバーと僕を見てから「そう……なの?」と聞いてくる。
リバーにしてはまともだ!
「た、たぶん」
「わか……った」
正しくいれては石の前にティーカップを置き始めた。
誰のお墓なんだろう……何とも言えない気持ちになる。
一応は手を合わせると、背後で物音が聞こえた。
振り返ると、十歩ほど先にグィンの驚く顔が見える。
他にもツヴァイとサーリアも一緒だ。
「冗談だろ……? この世で一番会いたくない奴が何でここに……俺は死んだのか?」
「グィン!?」
「これはグィン様」
僕らが近づこうとすると、剣を向けられた。
「止まれ。偽物かもしれないからな。本物でも……止まれ」
たしかに。
その考えはなかった。もしかしたら、このグィンが偽物の可能性もあるのか。偽物に偽物と呼ばれるのは何となく悲しい。
どこからどうみても、グィン達は本物に見える。
先ほど会いたくない。と言われたけど、僕も顔は会わせたくなかったよ。
サーリアがため息とともに僕を見て来た。
「二人とも何時までにらみ合っているのよ……話しかければいいじゃない。偽物だったら倒すだけよ」
「そうだな」「そうだよね」
僕とグィンの声が被った。
うわ。グィンの眉がピクピク動いて怒り出しそうだ。
ここは僕から声をかけたほうが良いよね。
「ラック」「グィン!」
…………。
僕とグィンの声がまた同時に被る。
お互いに一瞬黙った後にもう一度喋る事になった。
「グィン!」「ラック!」
…………。
「お、お先にどうぞ」
「ちっ。その間抜けは本物らしいな。あの口うるさい女騎士はどこだ? 殺してやりたいエルフもいないな。それとその横の角付きは亜人か?」
「ええっと、クアッツルとは別れて、ミリアさんは病気で……今薬? を取りに来た所で……この人はたぶん魔族」
「ふーん……」
グィンは納得したのか、僕の話を聞くと考え込んだ。
「ええっと本物みたいね。じゃぁラック…………会いたかった!」
「えっ! さ、サーリア!?」
駆け足によって来た突然サーリアが抱きついて来た。
ちょ、ちょっとまって。
えっ!?
グィンを見ると、舌打ちしてるよ!?
「ラック様良かったですね♪」
「いや、ちょっとまって。リバーも勘違いしないでっ」
僕は慌ててサーリアを引き離す。
それでもサーリアは僕に抱きついてきて来た。
「離してっ! ナ、ナイ。ごめん引き離してっ! このサーリアは偽物だ!」
「……ん……」
「ちょ、あんた何なのよ! ま、魔族でしょ。なんでラックのいう事聞くのよ! 偽物じゃないわよ! ラックは私と街にいくの!」
そんなはずはない。
サーリアは突然僕に抱きついてくるような性格じゃない。
「で、でもサーリアはもっとピュアで、人まえで抱きつくような……」
「でもラック様はネトラレたんですよね?」
「うっ…………それはその、グィンならサーリアの事を幸せに出来るし…………」
思わず土下座のポーズになると、グィンの舌打ちが聞こえてくる。
「俺はお前のそういう所が大嫌いだ」
「ご、ごめん」
顔をあげて謝ると、グィンは舌打ちをしだす。
そのうち舌打ちが癖になってるんじゃないかな。と心配してしまう。僕のせいで舌打ちマンって呼ばれたらグィンかわいそうだなぁ……。
「お前、変な事考えて無いか?」
「か、考えて無いよ!?」
「ラック殿、その魔族は味方でござるか?」
「ツヴァイ……いや、味方というか。たまたま出会った人。いや魔族で、人間にやさしいんだ、上に行くのに道案内をしてもらっている」
「そうでござるか……ここまで来るのに他に魔族は見当たらなかったでござるのでな」
相変わらずツヴァイは必要以上に喋らない、すぐに無言になり僕らと距離を取り始めてる。
「ラック様♪」
「な、なに?」
「鳥だけにですね♪」
「な、なにがっ!?」
突然にリバーが変な事を言い出した。
平常運転と言えば平常なんだろうけど、たまに怖い。
離されて落ち着いたサーリアの肩をグィンが軽く叩く。
「そもそも何でお前ら、このダンジョンにいるんだ? 入口は結界があっただろ……別れたというエルフか何かの力か?」
「ええと、まぁそんな感じで……」
なんとなくだけど、リバーの屋敷からダンジョンに来た。ってのは黙っておいたほうが良い気がして、黙る。
それに関してはリバーも何もいわないし。
「なるほどなぁ……」
「僕らはもう終わってその帰るだけなんだけど、グィン達は?」
「俺達はまだだな」
グィンはやや疲れた顔をして前に出る。
墓の前にいる僕の近くに歩いて来た。
「手伝ってあげたいけど……急いで帰らないといけないから」
「ああ。気にするな、もう終わる」
えっ!
グィンが素早く動くと剣を抜いた。
僕はとっさにその剣を弾こうとすると、真横に飛んで来たツヴァイがいて、僕の剣を抑え込む。
「ふむ……グィン殿。軌道しか、かえれないでござるな……」
「いや、上出来だ」
僕の剣がツヴァイの剣を弾くと、グィンの剣は既に動き終わった後で、魔族であるナイを背中から胸へ貫いていた。
「ナイ!!」
僕が叫ぶと、グィンの蹴りが飛んでくる。
その間にリバーが割り込んで来た。
「リッ!」
「うぐぐううううう」
僕とリバーは壁際までふっとぶ。
背中を壁に打ち付けたけど、それよりもリバーが心配だ。
「リバーっ怪我は!?」
「あたたたたた、も、もうしわけございません。守るつもりが守られるとは、あっリバーでしたらポーション飲むので大丈夫ですよ♪ それよりもギッタンギッタンにしてやりましょう」
やりましょう。って何で戦うの前提なの。
それよりも、ナイは!?
ナイは自分の胸から出ている剣を信じられないような顔でただ見つめていた。
「じかいいいいい、ナイしすううう!」
「……いや、リバー変な事叫ばないで! 殺させないし」
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