047.5 (第三者視点・グィン)元パーティーは特務依頼を受け入れる
「あなた個人はともかく、パーティーでお渡しできる依頼はありません」
「なんだと……」
俺は受付嬢をにらむ。
「に、にらまれても怯みませんよ! 双翼の翼へ!! への依頼達成率は4割をきっています。
これ以上の依頼を受けるのであれば、一度パーティーランクを二つほど下げてっ――」
「ルチ君!!」
俺は階段から降りてくる爺さんを見る。
確かこの街のギルドマスターだったな。そんな奴が俺の前で文句を言ってくるルチという女の後ろに立った。
「あっギルマス。聞いてくださいよ、この人は規約を読まずに『特務があるはずだ』って言うんですよ。こんな失敗続きのパーティーに特務なんてあるわけないじゃないですか」
「ルチ君!?」
「あるかないか聞いただけだ。無かったら帰る。それと俺達がA級だからこそ4割は成功したんだ。ここのギルドではクリアできないクエストを発注するのが趣味なのか?」
確かに失敗は続いているが、成功してる依頼もある。その癖にこの女は俺の事を、役に立たない。と言っているんだ。
女でなければ顔をぶんなぐっている所だな。
「ル、ルチ君! 落ち着きたまえ。君達がグィン君だね、すまないねワシは余りギルドにいなく……話はうかがっているよ。き、気分を悪くしたのなら謝ろう」
「……そうだな。ギルド員からの謝罪なら受けよう」
「えっ……私がっ!? な、なんでですか? だって……この人達の……絶対に謝りませんから!」
驚いている女に一言声をかけてるべきだろうな。
「じゃぁそれでいい。ルチと言ったな、仕事が終わったらココに来い」
俺は馴染の高級ホテルの名前と部屋番号を書いた紙を女の前に滑り込ませた。
その紙を見た女は肩を震わせてギルドマスターへと顔を向けた。
「え? これって。えっ!? ギルマス!?」
ギルドマスターはその紙を見たはずなのにルチという女の顔を見ようとはしない。
「勝ったな、今夜たっぷりと」
「何が?」
突然俺の肩に手が置かれた。
青い手袋で声は綺麗な声をしているが、すごみがある。
ちっ、失敗か。
「サーリア……外で待ってろと」
「外まで聞こえたわよ、この女の声……助けに来たのだけど要らなかったかしら?」
「いや、助かるよ」
「そう。じゃぁこれは要らないわね。ごめんね、可愛い受付さん」
ちっ、サーリアが紙をもぎ取ると、自身の胸の谷間に閉まったな。
取るわけにも行かないし、諦めるか。
軽い遊びに本気を出しても意味がない。
「グィン君と……サーリア君かな? 話は解決したみたいだし、上で話そうか」
「ギルドマスターのお爺さん、この子に不利な意地悪は辞めてね」
「わ、わかってる! いや、わかっておるよ」
冒険者ギルドの中を見回すと、落ち目とささやいていた連中たちは俺と視線を合わせようとしないのが殆どだ。
中には俺と視線を故意に合わせてくる奴もいるが、相手にはしない。
「ツヴァイは外か」
「いつも通り細かい所は3人……じゃなくて2人で決めてくれって」
「そんな顔をするな。今回は大丈夫だ」
ギルドマスターの後についていき、部屋へと入る。
部屋に入ったらうさんくさい金髪の男が両手を広げて立っていた。
「来てくれると信じていたよ。グィン君の言う通り冒険者ギルドに話は通したこれで受けてくれるのかな」
あまりにも変な依頼だったから、俺はギルドを通せ。と注文を付けた。
そしたらこれだ。
本当に冒険者ギルドを通してきやがった。
「君達の活躍は聞いているよ。
最近は喧嘩して実家から討伐命令を受けているとか……こちらの依頼を受けてくれるんだ。そのへんはこちらに任せてくれたまえ。
もちろん、サービスだよ」
「ちっ」
「グィン……」
サーリア、そんな目で俺を見るな。
俺はもう負けない。
「いやー本当は君達の仲間だった補助魔法士にも興味があったんだけどね」
「えっラックの事?」
「サーリアっ!」
簡単に誘導質問にひっかかって、少しは我慢を覚えて欲しい。
「おや、サーリア嬢。意外そうな顔だね、実は補助魔法士という名称は便宜上つけられているだけで、その能力は未知数なんだよ。
自らの魔法力を分け与える。
それにともなって――――」
「いない奴の御託はいい」
「そうかい? 万が一見かけたら、冒険者ギルドに呼んでもらえるかな。100万金貨ほど前金で払おう」
「ことわ――ぐっ」
「わかりました」
サーリアに足を踏まれた。
仮面と名乗った金髪男はギルドマスターの前にあるテーブルに白金貨を10枚並べた。
それを革袋にいれてサーリアに手渡した。
「所で君達。いつまでたっているんだい?」
「そ、そうですね! わかりました。カッ……ごっほごほ。歳のせいか喉が弱くて……ほら、そこのA級の二人も座りなさい、座りなさい」
失敗か? あいつを超えるために依頼を受けたが、あいつの影が付きまとう。
「そんなに補助魔法士が大事なら首に縄でもつけておくんだな」
「返す言葉も無い、つけていたけど逃げられたんだ」
本気で言っているのか判断に迷う表情だな。
「依頼内容は以前伝えた通りだよ。出来れば早めに出発してほしい。
A級冒険者グループでも失敗はあるからね、この依頼はA級以上と思っているし」
「失敗したら口封じか?」
「く、くくくくちっ!?」
ギルドマスターの爺さんが口をパクパクさせ始める。本当にギルドマスターなのか?
ギルド受付員が呼んでいたから本物か。
「そんな勿体ない事はしないよ。これからも良い付き合いはしたいからね 、本心なんだけど、これを言うと何故か皆震えるんだ……おや、グィン君は震えないんだね」
「まぁな」
「強い者は大好きだよ、君達が失敗するのであればだれが行っても失敗するだろうね、気にしなくていい」
「仮面様は随分と兄思いなんだな」
俺は嫌味を込めて言葉を返す。
「そうだね、兄がいるから弟が出来るんだよ。感謝しなければ……君にも」
たっく、どいつもこいつも回りくどくてイライラしてくる。
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