047 角の生えたおねーさん
「で、場所は……それって僕でも取れるの……むしろ取っていい奴なのかな?」
「ラック様!? 急に弱気になったんですか?」
自分の部屋に戻り着替えをしながらリバーへと質問した。
時間との勝負となってもも作戦は建てたい。
高魔族の血。
それがあれば助かるらしいけど、残念、いや幸いな事に僕はまだ魔族を見た事がない。
人の言葉を話すが、人間と相成れない化物達と言われていた。残忍で冷酷で人を狩るのか趣味という話で、その強さは普通の冒険者なら一体倒すのに数十から数千の人間がいるとまちまちだ。
いた。というのは、そういう残忍なのは昔の話で現在では人間社会に溶け込んでいる魔族もいるとの話も多い。
例えばサキュンバス。これはもう男性の性を吸収する魔物で、一部の夜の店で最上級の値段で相手をしてくれるとか、グィンが僕に教えてくれた。
いつか奢ってくれるっていっていたっけ……サーリアに睨まれて断ったけど、今思えば行った方がよかったのかな……。
「ラック様?」
「ご、ごめん! ちょっと考え事してた」
「流石はラック様です。ダンジョンはこの別荘の地下からいけるんですけど……」
「けど?」
「ひじょーに、きけんです。おねーちゃんが一人ではいかない様に。っていうぐらいに危険です」
喉から言葉が出そうで止めた。
リバー。きみってメイドだよね? と。
「そ、そうなんだ」
「はい、そうなんです」
「魔物は?」
「わんさかでます」
どうしよう、何も無ければ行きたくはない。
「ミリアさんはこのまま放置したら、どうなるかな?」
「エリクサーで仮死状態になってますけど、半月後には死ぬと思います…………わかりました。リバー、ミリア様を諦めます。
ラック様も忘れてください」
「いやいやいや。あ、諦めないで!」
リバーが首を曲げて不思議そうな顔をしだす。
「でも、ラック様ダンジョンに行きたくなさそうな気がしまして……」
「そりゃ行きたくはないよ。魔物に襲われたくないし。襲いたくもない」
冒険者だからって全員が魔物を倒して喜ぶわけでもない、中には採取系のみで活動する人もいる。
腰の左右に二本の剣を装着して、僕の装備は整った。
「ふう……マナオールアップ」
全身の魔力を底上げして筋力などをあげる。
腰の剣が軽くなった。
「いこうか」
「はい♪」
一階へ下りて地下への階段をさがる。
扉にはかわいらしい猫の絵が書かれており、はいったらお仕置き。という文字が書かれている。
リバーはその扉を開け僕もその後に続く。
一歩踏み出したとたんに、あたまがくらくらして気づけば景色が変わっていた。
「え?」
「はい、元ま……もの城です♪ 転移式の魔法陣であっというまに、こんな場所に」
「そ、そうなんだ……」
壁は積み上げられた石で出来ていて叩いても堅い。
どこかの地下施設に見えて廊下も広い。
真っ赤なじゅうたんがひかれており、ひどく喉が渇く。
「ラック様、はいお水です」
「ありがとう……後ろがその魔法陣?」
「はい♪」
本当はリバーにはここで帰ってもらいたい。
だって、僕の腕じゃ守れるわけがないから。
でも、道案内は欲しい。
「色々突っ込みたい所は置いておいて、場所はわかる?」
振り向くとリバーがいなかった。
「え?」
「ラックさまあああああああご武運をおおおお」
「えええええええ!」
巨大な鼠の魔物にリバーは連れ去られていく所だ。
「レギンスマナアップ! レギンスマナアップ!」
急いで駆け足で追いつくと、その背中に飛び乗る。下でチューチュー鳴っていて、その赤い瞳で僕を見る。
「うう、ごめん!」
二本の剣で倒すと、リバーを助ける。
「ラック様ついよです」
「…………僕は弱いよ……ど、どうしよう。あっ……リバーに地図を書いてもらえばよかった。リバー……いない!?」
「ラックさまああああ、リバーは美味しく食べられますううう」
「ああああ! もう!!!」
天井から大きな蜘蛛が落ちて来てリバーをぐるぐる巻きにして持っていくところだ。
走ってその背中につくと、蜘蛛の魔物も倒す。
ベトベトする糸にからまったリバーを引き出す。もう胸とか足とか触っているけど、いちいち構ってられない。
「り、リバー……」
「はい?」
「頼むからさらわれないで……」
「リバーがんばります」
頑張ってどうにかなるのかな。
リバーからもらった回復薬の小瓶を開けて、のどの渇きを癒す。力が沸き上がるようだ。
「案内たのむよ……」
「はい、現在は地下4階になります。目的の者は……ええっとお姉ちゃんの日記によると地下12階です」
「地味に遠い」
地下99階とかだったらどうしようかと思ったけど、地下12階も中々に遠い。
長い廊下をリバーの案内の元あるく。
いくつかの路地や分かれ道、その部分をよく見ると壁に傷がある。
「人がいる?」
「過去に何人もの冒険者が来たらしいですよ♪」
「まぁそれはそうか……」
壁の傷は地上に行く道や、迷わない様に付けられた傷だ。
おかけで帰りは迷わなくて済むだろう。
廊下の先が広くなっているようだ。
「あれ。人がいますよラック様」
「え?」
ドーム型の天井。
人が何千人も入りそうな大きなフロアの真ん中に小さいテーブルが置いてある。
人間でいう耳の上に二本の角が生えており人間ではないのは一目瞭然だ。
僕らが見えているはずなのに一切無視して、ティーポットから、たぶんお茶を入れ始めた。
髪は赤毛で腰まで長い、女性のように見えるけど胸は控えめだ。
身長は高そうで……たぶん僕より拳二つ分ぐらいは高い。
「失礼、魔族の方でした♪」
「魔族……? ど、どうしよう……あっそうか」
「ラック様?」
僕はその魔族に向かって歩く。
「こ、こんにちは」
「………………」
「魔族の人ですよね?」
「………………」
「すみませんがカップ1パイほどの血を分けてくれませんか?」
「………………」
女性の魔族の人は僕を黙ってみて、いきなり自身の指を引きちぎった。
「うわっ」
「………………」
千切った指からは青い血が流れており、カップへと注いでくれた。
ちょうと一杯になった所で、引きちぎった指をもう一度つけ、青い血で一杯になたカップを僕に差し出す。
「ありがとうございます」
「………………ん」
それをもってリバーの場所へと戻った。
「ふう、リバーこれでいい?」
「………………ラック様ってたまに凄いですよね♪」
「いや、褒められると照れるな」
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