027 A級冒険者ラック、懐かしのA級冒険者パーティーに拾われる
「うああああ!」
僕の悲鳴が洞窟内に広がると、ミリアさんが剣を斜めにふった。
僕の目の前にいた洞窟蝙蝠が二つに斬られて地面に落ちる。
「あ、ありがとうございます」
「ん。その……いやなんでもない」
ミリアさんが少し困った顔で言うと、何も言わなくなった。
んな事いっても、怖いのはしょうがない。
「47回目ですわね」
「…………一応聞くけど何の回数かな?」
「とあるA級冒険者の悲鳴ですわ」
やっぱり。
「はいはいはーい! クアッツル様! リバーは何回でしょうかっ!」
「18回ですわね」
「ラック様に負けました……しょぼーん」
勝ちも負けも無いからね。
あと多かったか勝ちでもないからね。
「うああ!」
「ふぎゃー」
「48回目と19回目……」
ミリアさんが今度は洞窟ジャンボ芋虫を倒してくれる。さすがに気持ち悪い。
斬った断面がもう見たくもないし、体内の魔石が斬られると、半分に割れた肉は凄い勢いで腐っていき腐臭を放つ。
「もう魔物は大丈夫と思いますわ。
この穴からロープを垂らせば地底竜の巣穴ですし…………今の時期なら冬眠してるとおもうのですが、どうしましょう。順番を決めてませんでしたわ」
クアッツルが近くの天然の柱にロープをつけると困り顔になる。
別に普通は困らない。
「軽い順にいけばいいんじゃ……あっ」
自分で言って気が付いた。
軽い順という事は、反対にいえば重い順がわかるのだ。
僕の目視では、リバー、僕かクアッツル、最後にミリアさん。
今の話は別にミリアさんが重くて困るの話ではなくて、いや実際困っている話は話で。
「リバーやクアッツル、ラックを先に行かせても危ないな……」
「そうですわよね。かといってママは足は怪我してますし、軽い人から降りないと危ないですわよね」
「うん。たしか一番力がある人が上に待機しないと緊急時に引っ張る役目なんだよね」
とりあえず、クアッツルがここですわ。と、言った竪穴を覗き込んだ。
底が深く、真っ暗で見えない。
「そうなんですわ」
「ラック」
ミリアさんが僕の名前を呼ぶ。
「なんでしょう?」
「普段はどうしていたんだ?」
「グィン……ああええっと前のパーティーは飛んでる仲間がいたので、飛んで終わりです」
「参考にならないな」
「はい!」
ミリアさんとクアッツルが、細目になって僕を見て来た。
せめて元気を。とおもって元気よく返事したのが間違いだったかもしれない。
仕方がない……僕がいくしないよねこれ。
リバーは絶対に無理だし、ミリアさんは上で引っ張ってもらいたいし、クアッツルも戦力は期待できないだろうし。
「ええっと、僕がいきます?」
「…………いいのか?」
「はい。ですから、ロープを3回引いたら絶対に引っ張って下さい!」
「わかった」
自分の体にもロープを巻き付けてミリアさんを見る。
「あの、ロープを3回引いたら絶対に引いてくださいね」
「…………わかった。すこし……いや、任せて欲しい」
穴をもう一度覗き込む。
下から強くまとわりつくような風が顔に当たる。
ミリアさんへと振り返った。
「変わった事あったかっ!?」
「いえ。3回引いたら絶対に……」
「……ラック、靴紐がほどけてるぞ」
「えっ!?」
足元を見た瞬間、僕は背中から突き飛ばさた。
「うああああああああああああああああああああああああ!!」
穴に落ちながら上を見るとミリアさん達の顔が見えた。
鬼だ。
悪魔だ!
腰にもロープを張ってあるので、落下は途中で止まった。
中吊りの状態で高い場所にいるの確認できる。
「あとで文句をいわなければ……ほんっと酷い。ええっと……」
周りを確認する。
真下には大きなトカゲがいて……いやこれって地底竜……?
大きい。
トカゲを大きくしたような形で黒い瞳を開いて首を振っている。
そして突然に吼えた。
口から出る息は砂嵐のようで壁に当たったのが空中にいる僕にも跳ね返ってくる。
「痛い、痛い、痛い」
だめだこれ。
帰りたい。卵を取ればいいんだから全員で来る必要もないよね。
「ラック!」
突然名前を呼ばれて辺りを見回す。
グィンの声だ。
とうとう幻聴が聞こえだした。
「ラック、こっちよ!」
次はサーリアの声だ。
人は死ぬときに過去を思い出す。というけれど、僕の場合は声らしい。
今では懐かしい二人の声が聞こえて来たんだから。
「まってろ、ツヴァイ!! ラックのロープを切れ! あれでは食われる」
「仕方がないでござる」
「あれ……ツヴァイの声も、あれ。本当にいた……なんで?」
「馬鹿野郎! 下を見ろ!」
「へ?」
地底竜が僕を見つけると、大きな口を開けて立ち上がろうとしていた。
急いでロープを引っ張るけど間に合わない。
うああああああああああああああああ。
食べられる瞬間、グィンがナイフを投げて来たのが目に入った。
ロープが切られて僕は地底竜の背中を転がって落ちる。
立ち上がる間もなく、両腕を引っ張られると岩陰へと連れていかれる。
「3人とも久しぶり……」
僕を引っ張ってくれたグィンとツヴァイ。
そして、岩影で待っていたサーリアの顔を見て、何となく安心した気がする。
本当か?
「はっ! いまミリアさんの声が!?」
「…………誰その女っぽい名前」
サーリアが僕を見下ろしていて、その目が怒っている目をしている。
な、なんでだろう……久々の再会なのに。
「サーリアよせ。その…………久しぶりだな」
「うん。元気そうで……元気じゃないね」
「そうだな……」
装備はあちこちさけ、皮膚も血が出ていたらしい場所がいくつもみえる。
「ラック、お前とうとうイケニエにされたのか。昔から不運とおもっていたが、可哀そうな奴だな……」
「え。ああっいや別に……ああああああああああああああああああ」
「な、なんだ」
僕はサーリアの担いでるリュックを見て驚いた。
「サーリアそれ卵!」
「あげないわよ! 卵じゃないしお宝よ!」
「じゃぁやっぱり……地底竜のうん……いっ!」
バン! という音とともにサーリアに突然ビンタされた。
なんで?
「汚い言葉でやめてよね、地底竜の……ちょっとお尻からでたけど宝石の集合体よ!」
「ご、ごめん」
「それに、ほしかったらあっちにあるわよ」
サーリアが言う通り地底竜の足元に何個も転がっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます