026.5 (第三者視点)追放側の元仲間たち

 地底竜。


 長はおよそ高さ十メートル、横は尻尾をいれると二十メートルぐらいだろう。


 外観は土色の大きなトカゲ。

 その体に剣を突き立てるも皮膚が岩のように固く剣が滑っていく。



 くそが!



 地底竜の首が動き俺を……ちっ。後ろのサーリアを狙ってやがる。



「サーリア! 狙われているぞ! ツヴァイ! 爆弾を投げろ!」



 俺が後ろ下がると、地底竜の口元に煙草サイズの爆弾が投げられた。

 ツヴァイの得意とする動きだ。



 爆音が響き、土ぼこりが一気に舞う。

 その間にサーリアがいる岩陰へと体をしまい込んだ。

 

 ふーはーふーはー……。


 口から洩れる息が荒いのに気付く。

 体中が痛く、傷も凄い。



「あっはっはっはっはっはっはっはっは!」

「静かに、ハイ・ヒール! ヒール! ヒール! ヒイイイルウウウ!! もう! 治りなさいよ!」




 思わず笑い声が出た。

 サーリアの回復魔法の声が耳に届くも、俺の腕の痛みは一向に収まらない。



 回復魔法の効果が薄れているのだ。



「きれたか」

「キレてないわよ!」



 そっちのキレではないし、それは逆キレだ。



「魔力のほうだ。俺かサーリアの魔力。どちらかが切れたんだろう」



 回復魔法は確か、術者とかける相手の両方の魔力を使うと聞いている。片方が切れると回復効果も極端に下がるはずだ。



「はぁはぁ、じゃぁ魔力切れはグィンのほうね」

「ふっはっは、違いない」



 立ち上がり、剣を握っては杖代わりにする。岩陰から見える地底竜をにらみ付ける。



 実家にあった宝物室にあった文献からお宝がここにあるのは判ったが。


 地底竜があそこまで強いとは聞いていない。大人しい、と書いていたはずなんだけどな。



 出口は反対側で、俺達が宝を取って帰る時にそいつは俺達を見つけたのだ。


 卵に似たお宝で、地底竜の排泄物。

 中には地底竜の胃の中で出来上がった宝石類が詰まった岩だ。

 自身の卵と間違えたてるのかわからんが、俺達に突然襲って来た。


 


 皮膚は堅く、俺の魔法剣では傷はつけれるが致命傷には程遠いい。


 口から吐くブレスは砂塵のようで、あちこちに傷がつく。

 その攻撃ではツヴァイも飛べなく、離れた岩陰で俺の合図を待っている状態だ。



「退路の確保は無理か」

「……………………そうね」



 何か言いたそうな顔だな。


 こういう時はアイツは便利だったんだがな、退路の確保はアレに任せておけばいいし、最悪最後には餌にして俺達は何度も逃げおおせた。


 でも、アイツ絶対死なないで帰ってくるから、途中からツヴァイとの賭けも成立しなくなっていたな。




「仕方がない……」

「私こんな所で死にたく無いわよ! このアイテムもって売って豪遊するんだから!」



 アイテムというのは地底竜のフンだな。

 サーリアの背中のリュックにしまってある。



「サーリア」

「何よ」

「俺と金どっちが大切だ」

「お金」



 ふっはっはっは。



「何よ、突然笑い出して……いいから、生き残る事を考えるわよ」

「お前のそういう現金な所は大好きだ」




 俺から見える所にいるツヴァイは煙草ケースから4本の煙草を取り出したのを見せつけて来た。



 なるほど、四つか。

 俺はジェスチャーでツヴァイに合図すると、小さく羽を動かしてサインを貰う。



「何する気?」

「口の中に爆薬を投げ込む。俺のフレアアローで起爆せるつもりだ」

「上手くいくの?」

「上手くいくさ。金が好きな女神がついてるからな」



 俺はサーリアにキスをすると、サーリアも抱きついて来た。

 直ぐに離れるとツヴァイに手をあげ、俺達は一気に……。



「行かないの? 早く動きなさいよ」



 ツヴァイも天井に異変を感じて俺に合図をしてきた。



「…………いや、まてアレは?」



 天井の上から一本のロープらしきものが見えると、叫び声ともに一人の人間がぶら下がっていた。

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