025 君が本当にしたい事を聞きたい(某元騎士団長の内心
ミリアさんもクアッツルも静かにお茶を飲んでいて、それ以上何も言って来ない。
リバーは先ほどから僕の横で「なにしましょう。あっリバーは戦いでは役に立ちませんので、リラックスしかないですね。ヌキますか」と、言ってくる。
「うん、いまはいいかな」
「…………」
「…………」
「じゃぁ後でヌキますね!」
元気いっぱいにリバーが答えてくれて現実に戻される。
「まった、いや、いいから! じ、自分を大事に。二人ともそんな犯罪者を見るような目で……」
「別に、ラックも女は若いほうがいいだろう。気にするな」
「そうですわ、むっつりなんですもの」
ちが。
違うからね。若すぎるのも困るから。
いや、そういう意味じゃなくて。
「と、とにかく。僕はザックさんを助けたい! …………です」
「では、お一人で助ければよろしいんじゃないですの?」
う。
クアッツルが静かにカップを置くと興味無さそうに耳を触りながら返事をしてくれた。
もしかして、何か怒ってる?
「ミ、ミリアさんは!?」
「あまり助けたくはない」
「えっ!? え、でも市民を助けたいって……」
「ラック様、もしかしてミリア様はリバーに嫉妬っっ」
「してない!」
テーブルにミリアさんの拳が打ち付けられる。
「ひいっ!」
「す、すまない。そういう理由じゃないんだ。
ラックが別に誰と寝ようが、わ、私には関係ないからな」
「あれ、でもミリアさんって騎士団に入ったのは……」
困っている人を助けるために騎士団に入ったって聞いたのにザックさんは助けたくない? ってアレ。
「私もクアッツルも、個人を助けるには有名になりすぎてな」
「どういう意味なんでしょう……?」
まったくわからない。
「知っての通り、私は元アスカル騎士団の元隊長だ。
その元隊長が一般市民を助けたぐらいならまだいい、一部の貴族などを助けた場合、騎士団とその貴族は繋がっている。など噂あってな……」
あーーー!
「もしかして、だからザックさんには、堅い返事だったんですか」
ミリアさんは、頷くと腕をくむ。
「それに、わたしは今は片足だからな。以前通りには戦えない、救いたくても救えない……」
ミリアさんの表情が本当に悲しそうだ。
「あっ。それでしたら僕が補助魔法をミリアさんにかけ――」
ミリアさんがテーブルにカップを力強く置いて僕の言葉が止まった。
「す、すみません」
「ラック、なんで私にかける予定で話すんだ! 翌日本当につらいんだからな! 私がどれだけ恥ずかしい思いをし…………」
「まさかあなた! 動けないママを襲ったのです!?」
「お、襲ってないよ! あの時はそれ所じゃなくて」
いやまって、そんな考えもあったのか。
た、確かにミリアさんはあの時動けなくて、触り放題……。
でも、無理だよ。
後が怖いし。
あれがサーリアだったら……うん、やっぱ後は怖いし触れないよね。
「と、とにかく何とかして助けたいです」
ふりだしに戻ってしまった。
ミリアさんが真面目な顔に戻る。
「一人でも?」
「…………はい」
そうなんだよね。
ミリアさんもクアッツルも僕が仲間と思っていても、一緒にいるだけの人に過ぎない。
そんな二人に命令も出来ないし。
そう考えるとグィンは凄かったなぁ、僕らに自由に命令してたし。ある意味あのパーティーはグィンの物という感じがあったきがする。
僕らがクエストを探しても結局はグィンが決めていたし。
「で、せめて、あの知恵をお願いしたいです。も、もしかしたらウロコとか落ちてるかもしれないし、絶対戦うわけじゃないんですよね」
僕一人でいくとすると、もうそれしかない。急いで逃げれば、なんとか……なるかなぁ。
「そうですわね。地底竜がいる場所まではわたくしがご案内できますわ」
「では、私が荷物を運ぼう。低級な魔物程度なら私が払える」
「リバーちゃんも運びます!」
「えっ!?」
先ほどまで渋っていた二人が協力してくれる。
「あの、なんで……?」
「ん? ラックが私達を道具のように使う人間であれば断った……まっそういう所だ。どちらにせよザック様には宿泊を受けた借りもあるからな」
凄くうれしい。
クアッツルのほうに顔を向ける。
「あら、わたくしはここを治める人間がかわっても構いませんし、武力できたら対抗するだけですわ。もっとも人間と戦ってエルフが勝てる保証はないですけれども、無駄な争いを避けるためですし、ママが協力するのであれば。って所ですわ」
もっと嬉しい。
「そうだな私はザック様を助けるのではなく、ザック様を助けるラックを助ける。これなら私の名前も表には出にくいだろう」
二人とも席を立ち体を動かし始める。
「あ、ありがとう……」
「むむむむ! ラック様泣いてます?」
「泣いてないから」
泣きそうにはなったけど。
本当に涙一つ出していない。
「出発するなら早い方がいいだろう」
「そうですわね。それであれば準備をしませんと、ぼさっと立ってないで動きまわすわよ!」
「ご、ごめん」
クアッツルに言われてすぐに動く。
まずは外にいるフォンさんに事情を説明して、握手をする。
フユラとマユラに無表情で抱きつかれ、なぜかリバーにも抱きつかれた。
ミリアさんの咳払いが聞こえた所で解放されて、ギルド内で必要な物を買う事に。
クアッツルとミリアさんを中心に今は道具をそろえている所だ。
「フォン、ギルドマスターでしたっけ」
「はい、何でしょう? ポーションの追加ですか?」
「いえ、おもうのですけれども。なぜお金を取るのです?」
うん。ちょっと思った。
「クエストではなく、今回は自分のお願いですらか。ギルドの商品を使うのであればお金がかかるのです」
「あまり納得はいきませんわね……」
「だから困っていたのですよ! 赤字覚悟で命を張ってくれる人なんて中々いません。頼みましたよラック氏」
力強く言われると、小さく頷くしかない。
今思うとやっぱ断っても……いや、もう無理だよね。
「安心しろ。私がいるんだ死なせないさ」
「ミリアさん……でも……」
「でも?」
「……お願いします」
「ああっ! まかせろ」
あぶない。
でも、足が不自由なんですし、僕は当然ながら、ミリアさんもそこまでは役に立ちませんよね? って言う所だった。
本当に危なかった。
「あなた。ぼーっとしてないでお金」
「はい?」
「だからお金ですわ。ポーションやローブ、大きな布に……ああ、そうでしたわね。貸しにしときますわ」
クアッツルは僕にお金を催促した後、自身の財布をだし、フォンさんに支払っている。
「ラック様って貧乏なんですかっ!」
「う、うん……」
あっそうだ。
「リバー」
「はい!」
「もしよかったらギルドで再就職先を探そうか?」
「えっ…………そうですか…………はい。ラック様がそう望むなら…………」
あれ。リバーが凄い落ち込み始めた。
突然腕を引っ張られた。
後ろを見るとミリアさんだ。
「ラック、リバーはザック様がラックに贈った、贈り物だ。
それを売り払うという事は、お前は用無し。と言っていると同じになる。
確かにずっと一緒というのは今のラックには経済的に無理だろうが、リバーを大切に思うならちゃんとした先を考えたほうがいいな……」
そ、そうなのか。
「ごめん! リバーその良かったら一緒にいてくれるかな」
「は、はいっ!」
クアッツルの声で『なんだがプロポーズみたいですわね』と聞こえた気がする。
違うからね。
「ラック様。メ、メイドと結婚する変態なんですかー!?」
「まさかの聞こえてた!? いや、違うよ。違うから、リバーおちついて! あと変態って!?」
「安心しろ、メイドと結婚して噂されるのは貴族クラスだ」
何も安心できない説明を僕はもらった。
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