024 ただより高い物はない。お腹が減りました……。

 お腹が苦しい。

 どれもこれも美味しい料理で、鳥の丸揚げをした皮などは絶品だ。


 他にもギョーザというやつや、マーボーナスというのも美味しかった。



「ラック様もう食べれません……」



 リバーはあんな小さい体によく入ったな。というぐらいに食べており、少しお腹がぽっこりしている。



 まるでロリにん……いや、考えるのは辞めよう。



「いやはや、お待たせしました」



 声に振り向くと、よれよれの服を着た長身の男性が近寄ってくる。

 年齢は30すぎたあたりかな? 酷く疲れたような顔で、少し可哀そうになってくる。



「弱そうな人間ですわね」



 クアッツルの酷い感想をミリアさんがたしなめる。




「クアッツル」

「本当の事を申しましただけですわ」

「まぁまぁ二人とも、ええっとラックです。こちらがミリアさんで、こっちがエルフのクアッツル。で、知り合い……のリバーです。料理ご馳走様でした」

「これはこれは」



 よれよれの服を着た男性は頭を下げてくる。



「これは失礼。A級冒険者のラック氏に先に名前を。ギルドマスターのフォンといいまして、こちらの二人が紹介は終わりましたとおもいますが」

「フユラデス」

「マユラアル」



 うん。先ほど紹介してもらった名前をもう一度聞いた。



「私達にこんなに豪華な料理を無料でご馳走して目的は?」



 ミリアさんが口元を拭いて直接ききはじめた。



「目的など、A級冒険者ラック氏、それに元騎士団隊長のミリア氏、さらに辺境のクアッツル様達と親交を深めようと思いまして」

「しょぼん。リバーが入ってないです……」

「もちろん、可愛いらしいメイドさんもこれから仲良くしていきたい、と思ってますよ」



 なんだろう、とてもむずむずする。



「前職の関係上多少の人は見てはいいたが、凄く胡散臭いな」



 珍しくミリアさんがバッサリと言葉で斬った。



「これは手厳しい。ほんのちょっとのお願いがございまして。も、もちろん。断って頂いても大丈夫ですし、料金も一切いりません」



 うーん。

 料理食べちゃったしなぁ。



「あなた、話は聞かずに断った方がいいですわよ」

「私もそうおもう」

「ラック様、料理おいしかったです。また食べたいです!」



 うぐ。

 反対二人に、やや賛成よりが一人。

 その間にもフォンさんは一切頼み事を話してこない。



「あの」

「なんでしょう。聞いてくれますか?」

「その前に、何度も言うようですけど僕はDランクなんですけど……」



 フォンさんは顎に手をあてて首をかしげる。



「ああっ! それでしたら。この数日の間にザック・グリファン様が訪ねて来られて、ラック氏のランクを確認されましてね。『俺より強い奴がDなのか……』と申されまして。

 それではザック様のお顔が建ちません、Aにさせてもらいました」



 んな、馬鹿な。



「冒険者ランクは半年から一年。さらに一定数の経験や実力、昇段試験に昇段の試験料。

 後はええっとギルドマスターの推薦や貴族クラスの推薦でしかあがら……」

「ええ、ですから

「ラック様はすごかったんですよー! もうバキューンのズッキューンでザック様の剣をシュバババッババって10個に粉砕しました」




 リバーから謎の援護が入る。

 僕が斬ったのは2回で合計3個だ。さすがに10個はもってる。




「流石でございますね。では仮にラック氏のランクがD級のままにしましょう。隻腕のザックと呼ばれる方がD級に負けた。さてどうなるでしょうか……」



 ミリアさんが「ザック様の信頼が落ちるだろうな」と、いうと。「人間は複雑ですわね、言わせておけばいい者を」とクアッツルも説明してくれた。




 そこまで言われたら僕としても何も言えることが無い。



「でも……」

「ご安心を。初回と次回更新の3年分はわがギルドがすでに立て替えております」



 うわ、それは助かる。



 ってそういう話じゃないんだよなぁ。

 実力不足の僕がそんなランクになったのも悪いし、断ると、ザックさんの名誉や顔にも泥をぬるし。



「ふう」



 ファンさんが小さくため息をつく。



「わかりました。お話は聞いていただけない模様で、しかし安心してください。先ほど言った通り試験代、更新代、食事代は今回はサービスさせていただきます。

 もお約束は互いませんので」

「帰るデスか?」

「帰るアル!」



 ミリアさんとクアッツルが席を立つ。

 リバーは最後にまだ残っている食事を口にいれてほっぺがパンパンになった。


 いや、まってどういう事。



「あのー。一応、一応話だけ聞いて断る事って出来ますか?」

「もちろんですとも」

「ふ、こうなるだろうな。とは思っていたよ……話を聞くべきじゃないんだがな」

「ママ。わたくしも、そう思ってましたですわよ」



 二人は席に座りなおす。

 よくわかってないリバーに、ゆっくり食べて大丈夫だから。と声をかけると、ファンさんも席に座った。



 回転テーブルには僕達4人とファンさん、そして肌ぴったりのドレスを着た二人はその横に立っている。



「もうお腹いっぱいとおもいますが、食べながらでも。

 簡単なお願いなんですよ。地底竜の卵、ウロコ、尻尾、これ端食事中に申し訳ないのですが、排せつ物。なんでもいいので二つほど取ってきてもらいたい」



 地底竜? 初めて聞く名前だ。

 もちろん竜がドラゴンの別名とも、存在もしってるけど、そういう個体がいるのを初めて知った。



「ドラゴンスレイヤー。ラックがその素質があると思ってるのか?」

「それはわかりませんが、隻腕のザック様に勝てるほどの実力。別に首を持ってこい。や生きたまま持ってこい。とはいってません。先ほどの部分だけでいいのです。あっできれば大きいほうがいいですね」

「人間の社会はよくわかりませんけれども、こんな、見た目からして弱そうな人間に頼むのではなく自分達ではいけませんのですこと?」



 うん。そうだよね。

 僕の代わりに言って欲しい事をクアッツルが伝えてくれる。




「残念ながらわがギルドにはBの下ランクしか冒険者がおりませんで、この自分も元はCランクです。

 それと、これは任務ではないのです。自分のお願い事になるのですよ。

 その点! ラック氏はAランク。しかもA級以上といわれたミリア氏に辺境の番人クアッツル様がいる。ちょっと潜っていただければ……」

「あのー……失敗したり断ったりすると、僕達って罪になります?」

「もちろん、なりません! ただ……その本来はAランク級の依頼ですから、クエスト中にその命に係わる事もないとはいえません」



 断ったほうがいいのかなぁ。

 だって、ドラゴンだよ。

 ドラゴン退治ってそう簡単に出来るものじゃないし、古代竜を祭る宗教や国もあるぐらいだし。



 でも、ザックさんがどうにかなるような言い方だった。



「このままだったらザックさんはどうなるんです?」

「そうですね。この辺境の税を納めれなくなったグリファン家はなんらかの罰を受け、最悪ザック様はでしょう」



 は?



「えっ!?」

「大変申しにくいのですが……」



 いつの間にか酒場けん冒険者ギルドの中は人が誰もいない。

 僕達7人だけの貸し切りになっていた。



「先日、ザック様は賊にお負けになり献上するはずの税を、賊に取られてしまいまして」

「お間抜けですわね……」

「ザック様の御父上、アルト様も旅先で金策をしているのですが中々に、ですが。先ほどの品物を二つ以上あれば! 価値的に助かる可能性が高いのです!」



 ファンさんが立ち上がり。

 また座った。



「とまぁ、そういう話です。

 もちろんラック氏には関係ないと言えば関係ありませんし、エルフのクアッツル様も関係はありませんね。そうなると、ミリア氏にも関係ありませんし、可愛いメイドさんはもっと関係ありません。どうぞお帰りはあちらです」

「あちらデス」

「あっちアル」



 ど、どうしよう。

 この手の話は僕は参加した事が無い。

 した所で決定権はグィンが持っていたんだし相談された事もない。



 そ、相談? そうだ!



「あの、一度僕達で相談させてもらえると……嬉しいかな……」

「もちろんですとも、では暫く席を外しましょう。あ、おかえりになる場合は帰っても大丈夫ですので、裏口から帰ってもらって大丈夫ですよー」



 ファンさんは二人の女の子を連れて冒険者ギルドから出ていった。



「相談か……さて私に何を言うつもりだ?」

「ママに同じですわ」



 う、二人とも何か怒ってるような顔だ。



「ラック様ーリバーは何をすればいいですかー!?」

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