020.5 (第三者視点)ミリアから見たラックの姿
ラックの手を私の胸に触らせた。
こうでもしないと、むっつりなラックはやる気も出ないだろう。
私の胸を触らせたのは完全に流れであったけど、ラックの本気を見てみたいからだ。
これでも、部下の士気をあげるのは上手いですね。とユーリーに言われたものだ。
何、私が恥ずかしいのを我慢すればいいんだ。
あれだけの補助魔法を使いながらパーティーを実力不足と追放される。
本人は酔って覚えてないらしいが、クアッツルの精霊魔法を重ね掛けた補助魔法で跳ねのけたのも見ている。
ラックが酔って寝た後に唸っていたのはおそらくは体の痛みだろうな。
一言でいうと、もったいない。
才能があるのに、不遇な立場に追いやられていればあんな、うじうじしたむっつりな性格にもなろう。
でもだ。初対面の私の足を治そうと努力もしてくれる、せめてラックは幸せになるべきだ。
いずれは別れる。
その時までにラックには自信をつけさせたいと、思った。
「罪悪感はあるか?」
「え、は、はい」
良かった、無いと触られ損だ。
その場合はもっと揉みたければ……に変えるつもりではあるが、そうしなくて良さそうだ。
「じゃぁ試合に勝て」
「はいっ?」
「ラックは私の胸を無理やり揉んだのだ許して欲しければザック様に勝て」
「ええっと……負けたなら?」
「そうだな腕を斬る!」
本当に斬るつもりは無い。せいぜい骨を折る程度だ。
クアッツルがラックの生活を心配してきた。
腕を斬られては生活出来ないというのだ。たしかに現実的ではないし嘘とすぐばれてしまうな。
では。
「仕方がない、薬指と小指。この4本で許してやろう。これだったら無くても不便にはなるが生活は出来る」
「そうですわね」
「まってまって!」
「待たない。勝てばいい、ほらザック様が待っている。貴族をあまり待たせるな」
これも本当に斬るつもりは無い。
せいぜい第一関節と第二関節を逆に折るぐらいだ。
すぐにポーションでも飲ませれば数日で治るはずだ。
これ以上うじうじと腐ったような意見も聞きたくないし、相手を待たせるのも悪い。
ラックは練習用の剣をもってしぶしぶ前に出ていった。
私と執事の人が手を振り下ろす。
試合開始とともに剣と剣がぶつかり合う音を聞くと私も前に行きたくてうずうずする。
ラックの動きはまぁまぁいいがザック様いや隻腕のザックには到底動きが付いていけてない。
注意しないと、ああ。そうだ、そこだ。
ラックが集中しきれてないのがわかる。
胸は勝ったら揉ませてやる。のほうが入よかっただろうか?
先に事実を作る事でやる気が増えるとは思ったんだけどな……。
もしかして、私のような年齢の胸を触った所でやる気なんて下がっただけだったのだろうか? それだったら、その、少し悲しいな。
結婚は諦めてるとはいえ、私の体に価値が無いのも悲しい。
これでも少しは『たいちょーきれいです』と部下や仲間に褒められてたいたんだけどな。
『ああああああもおおおおおおおお!』
突然にラックが叫んだ。
両腕を押さえ、次に足を触ったのが見える。
いよいよか。
さぁ見せてくれ!
早い! 想像以上に速い動きだ。
斬り上げからの風圧でザックの包帯がなびいた。流石は隻腕のザック、ラックの剣を上から抑え……斬ったのか……なまくらの剣を。
練習用の剣は刃を潰してある。
普通の剣よりも折れにくく丈夫だ。
それも二回も!斬った。
さすがの相手もあれでは動けない。
試合でなければ……実践であれば、一撃目は防げたとしても、二段目の振り下ろしで頭から心臓ぐらいは裂けていただろう。
…………問題は持久戦って所だな。
剣を振り下ろしたまま動かない。
おそらくは動けない。と言った所か。
いい試合を見せてもらった。
私も怪我さえなければ戦いたい者だ、あれだけ強ければ騎士団に入れても良いかもしれない。
動けないであろうラックの隣にいく。
ラックの口からは、う。だの、あ。などしか発せられてない。
ふっふーん。
私はわざとに肩に手を叩きつける。
おそらく痛みでラックの呻き声が増えた。
「ラック頑張ったな。ザック様、ラックはこの練習試合で持てる力以上を出したようだ。暫くは全身に風が当たっただけでも痛いのが一晩は続くだろう」
もう数回、肩を連続で叩く。
私の時は良くもやってくれたな。と意味も込めてだ。
近くに来たクアッツルも背中をたたき出した。
面白い。クアッツルが秘薬を飲ませるまでもう少し叩いておこう。
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