020 勝つために。絶対に無理だから補助魔法を使った
ラック様好き。
ラック君私もだぞ。
らーちゃん大きい。
下着姿で可愛い子から年上の女性達が僕を求めて名前を呼んでくる。
後ろ姿であるけれど誰かわかる人物がベッドの上で背中を見せていた。
ああ、あの姿は……最後に振りかえった女性、そうサーリアだ!
ラック……抱いて。
サーリアが僕に抱きつくと、肩をトントンと叩かれた。
振り返ると、全裸で真面目な顔のミリアさんがいて『さかるのはいいが、私も混ぜて欲しいな』
と言って来た。
「だ、ダメですよ! なんで!!」
「…………どうした? 提案は不服なのか?」
「突然目を閉じてどうなされました? この期におよんで寝てごまかそうって作戦ですわ? これだから人間は」
目を開けたら服を着たミリアさんと、軽蔑してるクアッツルの顔が近い。
物凄い提案に一瞬僕の心は違う次元に行っていたようだ。
確認すると僕は椅子に座っていて、横には練習用の剣がおいていある。
「幸せ……いや悪い夢を一瞬みてまして」
そうだよね。サーリアの裸なんて見たこと無いんだし、鮮明に覚えてるのはミリアさんの裸であって……。
「条件が悪かったか? …………なぜ私から目をそらす」
「いえ、気にしないでください。と、とにかく。女性欲しさに試合はしません!」
「でも君、失礼ラック。ラックは金も受け取らないだろ? それに君はむっつりだ。
そうか、むっつりだから、嬉しい提案も受け取れないのか……困ったな」
困らないで欲しい。
と、いうか僕は別にむっつりじゃない。
「ママ大変失礼ですわ」
「そうだよね!」
「本当の事を言われると人は傷つきますわ」
「まって! ミリアさんもクアッツルも僕を何だと」
「「むっつり」」
二人の声が被った。
酷い……。
「そうだラック。両腕を前に出せ」
「はい?」
ミリアさんから何かくれるのか、言われるままに両腕を前に出した。
ミリアさんがその両腕を掴むと、服の境目。
へその下から僕の両腕を思いっきり突っ込んだ。
っ?!!!?!?!!!?!!
やわらかく暖かい感触が僕の手の平に届く。
「ミッ!」「マッ!」
「二人とも騒ぐな、これでも一応は恥ずかしいだぞ? 後ろのザック様からは見えていない。ラック、どうだ」
「え、は、はい柔らかいです……」
ミリアさんの早い鼓動が伝わって来て、指の間にも感触が増える。
「堪能したようだな」
ミリアさんは僕の手を服の中からだして手を離した。
ほかほかの匂いが手のひらから匂ってくるような気がする。
さすがにここで手のひらの匂いを嗅いだら変態だろうし、むっつり認定されてしまう。
「罪悪感はあるか?」
「え、は、はい」
「じゃぁ試合に勝て」
「はいっ?」
「ラックは私の胸を無理やり揉んだのだ許して欲しければザック様に勝て」
「ええっと……負けたなら?」
「そうだな腕を斬る!」
無茶苦茶な。
「ママ、それはあまりにも、両腕がないと食事が大変ですわ」
「片腕じゃなくて両腕!?」
「仕方がない、薬指と小指。この4本で許してやろう。これだったら無くても不便にはなるが生活は出来る」
「そうですわね」
「まってまって!」
「待たない。勝てばいい、ほらザック様が待っている。貴族をあまり待たせるな」
ミリアさんに無理やり立たされて背中を押された。
クアッツルが練習用の剣を僕に手渡してくれてそのまま歩く形になる。
「作戦会議は終わったか?」
「えっ……ああ、はい。お待たせして申し訳けございません」
「かまわん。先ほどの願いはザック・グリファンとして約束しよう」
「願い……? ああっ! い、嫌。大丈夫です」
「もしかして、男が好きなのか?」
「違います!」
「なるほど、女性の前で恰好をつけたい感じか、安心しろ。こっそり行ける紹介状を出す。さて始めるぞ」
え、あの……。
駄目だ、これ以上言っても多分通じないし。
その、はい……こっそり行ける紹介状はちょっと興味があります。
お互いに剣を合わせて数歩さがる。
執事さんが手を降り落とし、試合開始の合図が終わった。
僕とザックさんの練習用の剣と剣がぶつかり合う。
ザックさんの攻撃を剣で受け流し、逆にぶつけるとそれをはじかれる。
ザックさんの連撃が僕の鼻先をかすめた。
「試合中に雑念とは……俺もお前もまだまだ甘いな!」
ザックさんは自分自信に言い聞かせるように言うと間合いを離れた。僕からの攻撃を防ぐためだろう。
「負ける……」
一回だけかけた補助魔法じゃ僕は負けるのは目に見えている。
ちらっとミリアさんを見ると指二本を曲げては切り落とす動作を僕に見せては笑顔になった。
「ああああああもおおおおおおおお!」
僕は叫んだ。
決して恐怖じゃなくて、もう恐怖でもいい。
ザックさんの動きが止まった。
腕を触り補助魔法を唱えた。もう、どうにでもなれ!
「
最初のと合わせて3回の重ねだ。
師匠から重ねて使わないほうがいいだろうねぇ。と言われていたけど。
もうミリアさんにも使ったことあるし、たぶん大丈夫だろう。
大丈夫と信じたい!
直ぐに体が、全身が熱くなってきた。
世界がひどくゆっくりと見えて、空気の中に無数の揺らめぎがみえる。
魔力。
その揺らめぎが、僕の頭の中に自然と答えを教えてくれた。
ザックさんの体からもその色は見えた。
振り向きクアッツルを見ると、眩しいぐらいに光っていて、ミリアさんのを見ると右足以外が、いや体全体が蜘蛛の糸のような細く黒い魔力が絡まっている。
再び前を向く。
ミリアさんに掛けた時と同じように、恐らく時間との勝負だ。
「行きます! し、死なないで下さい!」
「何っ!?」
ザックさんの返事を待たずに僕は動いた。
斜め下に剣を握っての斬り上げ。それしか出来ないのか? といわれると、それしか出来ないんだからしょうがない。
間合いに入ると一気に振りあげる。
ザックさんが剣を横にして、僕の振りあげた剣を止めるつもりだ。
止まらなくても、その威力を抑えに来た……けど!
「なん……だ……と」
僕はその剣を下か斬り、無理やり上段で剣を止めた。
体が反動でそりかえる、後ろに倒れそうなのをこらえて、一気に振り下ろした。
地面に剣が刺さると、すぐ近くにいたザックさんは切り落とされた剣を見て、中庭にすてた。
「さすがはエルフの……いや、違うんだったな。正直俺自身、君には勝てるだろうぐらいには考えていた。驚いたよ」
ザックさんは手を差し出してくれているけど…………。
「どうした?」
「う、あ、いた。一歩もうごけ……ない」
体全体が痛い。
筋肉痛なのに山の上まで走らされたぐらいに痛い。
僕の肩に突然激痛が走った。
痛い首をゆっくりと動かすと……。
「ラック頑張ったな。ザック様、ラックはこの練習試合で持てる力以上を出したようだ。暫くは全身に風が当たっただけでも痛いのが一晩は続くだろう」
「なにっ! すぐにヒーラーを」
今度は背中に激痛が走る。
「だいじょうぶですわ。エルフ特性の秘薬を飲ませますので」
今度はクアッツルの声だ。
「それよりも、派手な包帯とったらどうですか?」
「ばればれか……」
ザックさんは包帯をむしり取ると火傷の残った顔を見せて来た。
でも、今の僕にはそんな事はどうでもいい!
「クアック。薬を……はや……」
「どうしましょうかしら」
「はや……」
いいから早く!
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