013.5 (第三者視点)辺境貴族は憤怒する
無駄に大きい屋敷を早足で歩く。
貴族たるもの走る事は見苦しい、と言われているからだ。
「ザック様!」
執事から声がかかって振り返る。
祖父の代から使えてくれている一番優秀な執事だ。
「爺。あの馬鹿はどこだ!」
「ぐ、グィン様であれば宝物庫のほうに」
「あのような馬鹿に様をつけるな! 賊と思え! 父が外交に出ている今、この屋敷は俺が仕切る。武器を持って賊を取り押さえろ」
「こ……殺すのでしょうか」
「…………取り押さえろ」
日課である訓練をしていると、突然に弟が帰って来た。と連絡を受けた。
着替えもそうそうに俺は馬を飛ばして屋敷に戻って来たが既に遅く。
あの馬鹿は、金をせびりに来たのだろう。
「グィン!」
「おお、兄貴じゃねえか。元気そうだな」
のほほんと俺の顔を見ては笑顔で手を降って来た。
その後ろには翼をもった男。魔族崩れと呼ばれる亜人が一人。
もう一人は女か。
軽装からして魔術師の類か。
「元気も何も何をしている!」
「何って……俺の嫁っいてててて、恋人を紹介しようと思っての里帰りだ。
どうせ兄貴には子供いねえんだろ? 片腕の父親で子供は両腕が無かったら大変だもんな」
我慢しろ。
静かに心を静めろ。
「人の心配をする必要はない。言ったはずだ二度と家に戻ってくるな。と」
「兄貴は堅いな。金さえもらえれば出ていく」
俺は杖を捨てて剣を抜く。
愚弟へと距離を詰めその右肩を狙った。
「がっ!」
俺の体に無数の火の矢が撃ち込まれて愚弟へ行く前に体が止まった。
足にも無数にささり無様に倒れた。
首だけを動かして愚弟を見る。
「ふーん、兄貴はこの左腕ないもんな」
「ま、魔法か……剣を極め……」
「まっ所詮は片腕。兄貴ってこんな弱かったのか……」
「ぐっ!」
「ちょっと……グィンやりすぎないでよ? 私の
「かもなのか、捨てられない様に努力するさ、もってろ」
女の方をみると、愚弟から手渡されたカバンを大事そうに持っているのが見えた。
あのカバンにはこの地を収めるために使う宝石が入っているはずだ。
後ろの亜人は俺の祖父が使っていたキセルをうまそうに吸っては煙を吐いている。
「わかってるよサーリア。でも、顔ぐらい焼いてもいいだろ? どうせサーリアの魔法で治るんだし」
「そこまで万能じゃないわよ?」
何所までも腐ったやつらだ。
これだから冒険者は好き馴れない。
「殺せ」
「殺す前に聞きたい。なぁ兄貴。エルフの里への魔法陣はどこにある?」
「…………そんなものはない」
どうして知っている。
「グィンなになに! 面白そう」
「エルフの里でござるか、サーリア殿知らないでござるか、辺境のエルフの騎士の絵本」
「しってるわよ。エルフと共に戦った人間とエルフとの恋物語。エルフが生きている限り、その子孫はエルフを守りエルフは人間を守るって……」
「その騎士達の一族でござるな。拙者もこの紋章を見るまでわかなかったでござるよ」
魔族崩れの亜人風情が余計な事を、その絵本で語られてる戦争で人間やエルフではなく魔族側についた裏切りものめが。
「かっしいなぁ……その里ならレア宝石ため込んでるはずなんだし、この家にすぐ来れると思ったんだけどな。攻め込むならその魔法陣と思っていたが馬車で来てるのか?」
「さっさと殺せ。家督が欲しいのだろ?」
愚弟を正しく導けなかったのは俺の責任もある。
こいつは兄殺しの汚名を受けるだろうが、仕方がないだろう。
命乞いをすればするほど、こいつを喜ばせるだけだ。
「弱い奴がほえるなよ。
まぁいい、どうせ下らない会合をまだしてるだろ? コレが無くなったらまた来るわ。じゃぁな兄さん
「うぐうううううう」
顔面が焼ける。
熱く痛みが凄く失神しそうだ。
「やだ……今日の晩お肉食べれないじゃない」
女の声が聞こえた、ほざけっ……。
「ヒール!」
女の声が終わると、俺はやっと息をする。
「はぁはぁはぁ……ひ、ヒーラーか……」
「はい、そうなんですよ。ちょっとグィン。お兄さんの顔完全に治らないんだけど……」
「口が開き目が見えていればいいだろ? 薬剤師もいるんだ年数はかかるがなおるだろ」
「ごめんなさいね。じゃっそういう事で」
「おっとっフレアアロー!」
立ち上がろうとする所で足を打たれた。
女はちらっと俺を見るとグィンのほうへと小走りに入っていく。
悪いと思っているならそのカバンを置いていくんだな……。
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