012 世界と魔力と成長率
「奇跡も魔法もあるのですわ!」
クアッツルはどこかで聞いた事あるような内容なセリフを叫んでは僕に、はいどうぞ。と、地面を指さす。
正直、何をどうしたらいいのかはわからない。
「はやく、魔力を流すのですわ!」
魔力を流す? ああ、その一言で僕は理解した。
この世界は魔力が大事だ。
魔法を唱えるのはもちろん、作物にも魔力は流れているし、大小はあれ魔力の無い生物はいないとされている。
師匠曰く、いるよ。っていうけど、世間的にはそうなっている。
「出来ないよ」
「は? 出来ないとはどういう事ですわ!」
魔力を流しただけで作物が育つなら、今頃は農夫なんていない。
「クアッツル。ラックの言う通りだ、花などにヒールをかけるのは聞いた事あるが、地面には無い。それにここの土は、はぐれスライムの体液がたっぷり染み込んでいるんだ。
雑草の伸び具合からみて、魔力はたっぷりある、ラックに期待しなくてもいいだろう。可哀そうだ」
ナチュラルに役立たず。と言われたような気がする。
「さて……暗くなる前に帰るとしよう。ラック、今日はそっちに泊まるぞ」
「えっなんで?」
「汗がひどくてな」
ミリアさんは自分の体の匂いを嗅ぎ始めた。
確かに僕も汗臭くなったかもしれない。
こういう時は温泉だ。
「………………わたくしも! わたくしも! 泊まりますわ!」
「え、なんで……汗はかいて無いようだけど」
「行きますわよっ!」
クアッツルはミリアさんの手を取ってさっさと歩くので、僕もその後に続くしかない。
途中でクアッツルが立ち止まった。
耳が高速で上下に動いてる事から、異常事態な気がする。
「ど、どうしたの?」
「思い出しましたわ…………」
その顔つきは真剣だ。
ミリアさんも無言で腰の剣の確認をし始めた。
「お酒ですわよ!」
「お酒?」
「そう。おか…………ええっと、わたくしの血縁の方が先日街に行きまして。お土産を貰ったのですわ! 取ってきますので先に温泉まで行ってくださいまし!」
そういうと、クアッツルは近くの木に登って、ジャンプして移動して……なっ!
姿消えた。
「結界だろう」
「結界ですか?」
「エルフの里は結界が張られていると聞く、自由に出入り出来るものはその里事に違うらしいからな」
「聞いた事があるようなきがします」
「ラック……君は冒険者なんだからそれぐらい知っていないとまずいだろう」
14才で冒険者になって、すでにヒーラーとして開花していたサーリアと僕は冒険者ギルドの扉をたたいた。
そんな子供に悪い大人が群がるのは必然で……それを守ってくれたのが師匠達だ。
一人はサーリアを鍛えてくれて、僕はその家で居候をしていたんだけど。
『君達が来てから私は暇になった。どうしてく……まてよ? 君を弟子にして登録させれば私はここから出ても大丈夫。
うん、そうに違いない。
君。今日から私の事は師匠と呼びなさい』
懐かしい。
補助魔法の事を教えてくれたけど、冒険者の基本は何も教わってない。
その後師匠達と二年ほど一緒に暮らして、冒険者ギルドでグィン達とパーティーを組む事になったのだ。
「ラック……? 話を聞いているかな」
「は、はい。聞いています」
「そういう嘘はよくないな……さてついたわけだが、ラックが先に入るといい。私はクアッツルを待っているよ」
ミリアさんの提案を受ける事にした。
さきにミリアさんが入って、僕が入って、クアッツルが一人で入るにはちょっと寂しいだろうから。
脱衣所で服を脱いで首を動かす。
今日は酷く疲れた。
手もクワの持ちすぎて痛い。
「補助魔法、補助魔法かぁ……もっとこう凄い魔法の才能があったらなぁ。
疲労回復やちょっと元気になるぐらいだし」
もう一度自分自身にかけてみようか考えたけど、先日のミリアさんのアレを見た後じゃ怖くてかけれない。
でも疲労は取れたしいつも以上の力を出せたのは事実だ。
「まっ緊急時でいいか……ここで僕の限界が超えたら溺れるだけだし」
体もあらって最後にもう一度温泉へと入ってゆっくりする。
少しのぼせたみたいで喉がからからだ。
「上がろう……」
服を着替えて脱衣所を出る。
ガラス製のコップが並んでいて、水が三つ並べてあった。
冷たいらしく、ガラス製のコップに水滴がついている。
「の、飲んでいいのかな……三つあるしいいよね」
ミリアさんの姿が見えないし、クアッツルもまだ来てないようだ。
一応、一応はきいておこう。
「ミリアさーん。お、お水貰っても?」
大声で叫ぶと、裏てのほうからミリアさんの返事が返ってくる。
「水ぐらい好きに飲め……」
確かに。
でも、こんな冷たそうな水は珍しい。
冷たいコップの水を一気に喉にっ!!
「げっほげほ!!」
腐った水、いや毒だ!
喉も胃も熱い、目の前がちかちかする。
自然に床に四つん這いになって僕はゲホゲホと咳が止まらない。
ミリアさんの声が聞こえて来た、小屋の中に戻って来たのだろうだろう。
「たっく、水ぐらい……ラック! どうした!」
「ど、毒です……」
「毒!? 直ぐにはき…………おい。アレを飲んだのか?」
「ミ、ミリアさん今までありがげっほげほ……」
なんとか、ミリアさんにはお礼を言って死にたい。
「ママ! 野草を摘んできましたわっ! あら、何してるんですの?」
「それがな、ラックが米酒を一気に飲んだらしく……」
「まぁ、ちびちび飲むお酒と聞いてますのに……」
「えっげっほげ……お酒?」
ミリアさんが肩を貸してくれて僕を椅子の上に座らせてくれる。
視界がゆがむと僕の体が突然に止まった。横を見るとクアッツルが支えてくれていた。
「クアッツル……君は可愛いね」
「はぁ!? ど、どうしたんですの一体!」
「どうしたもないよ、事実をいったんだ……それに引き換え僕は、役にも立たないし……」
「酔っているのか?」
酔っている?
誰が?
「よってましぇん!」
「酔ってるな」
「酔ってますわね」
酔ってないって言ってるのに、この二人は僕を酔っ払い扱いして困る。
そもそも僕はお酒は飲めないのだ。
「そもそも僕のほうが先にサーリアが好きで。好きだったのはサーリアだったんです! グィンは強いよ? 強いけど強さだけじゃないと思うんですよ…………いや、うん。僕にはお金もなかった……」
でも、稼げばいいんだよね!
「とうとう大声をだしはじめたわね、ママもうこの人を寝かした方が」
「いや、面白そうだからもう少し見てよう」
面白いってなんだ。
僕だってサーリアと結婚したかった!
いや、すると思っていたし、だからこそ、我慢もした!
「ミリアさん! ミリアさんの裸は綺麗でした!」
「ぶはああああ! ママ!? 裸って!」
「お、落ち着けクアッツル。温泉での事故だ事故」
「それなのに、僕のは汚いって酷いです!」
「ぶっはあああああ! ママ!?」
二人とも何を慌てているんだろう。
「見てください! 今もちゃんと洗って――」
僕は綺麗になったのを見せようと、ズボンに手をかけた。
クアッツルが僕に向かって手を突き出していた。
「ママとわたくしに汚い物をみせようと……風の精霊よかの者を切り裂け!」
「
僕はその見えない攻撃を腕ではじく。
「はっ!?」
「なっ!」
「魔力にはまちょくで対抗しろってちしょーがいっていたんです!」
あれ? 何の話をしていたっけ…………?
「そ、そうだ僕はどうすれば強く……うう、気持ち悪い。もっとのまないと……」
近くにあった酒を僕は一気に飲み干した。
暑い。
「お、おい! そんな一気の飲んでは」
「毒じゃないなら大丈夫れす!」
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