011.5 (第三者視点)本調子の出ない冒険者達

「グィンそっちにいったわ!」

「りょーかいだああああ」



 オークの首を落とし、その返り血を避ける。

 次の獲物を探す。



「グィン殿! 下だ!」

「ちっ!」



 まだ息があったのか、首が無いオークは俺へと最後の一撃をかましてくる。その体を蹴飛ばして距離をとると体全体に優しく暖かい熱が駆け上がる。



ランヒール回復

「サーリアとツヴァイは後ろへ。ツヴァイ退路の確保だ」

「了解でござる」



 禁止区域のダンジョンから地上にでると、俺達を追って来た魔物も出てこない。

 ダンジョンの外には多重の結界が張っており、魔族クラスの魔物でないと外に出れないようになっているからだ。




「助かったでござるか」

「みたいね……」

「ちっ」



 思わず舌打ちすると、ツヴァイが俺の前に立ちふさがる。

 血だらけの羽を大きく広げ、すぐに戻して威圧してきてるのだ。



「何だ?」

「その舌打ちは拙者に対してでござるか?」

「自覚あったのか、鳥頭だから忘れてるのかと思った。ツヴァイがもう少し早めに叩いてくれれば、俺達はピンチにならなくて済んだ」

「拙者は、罠とわかった後にぼーっと突っ立っている立ってるグィン殿の考えに困っていただけでござるよ。

 あのまま死にたいのかと思っていたでござる」



 ちっ。



「二人とも、助かったのになんなのよ」

「サーリア、回復が少し遅かった、次は気を付けてくれ」

「そうでござる、サーリア殿。羽が赤くなったでござるよ」

「ふーん…………じゃぁ解散する?」



 あん?



 俺はサーリアの顔を見るとサーリアは冗談を言っているように見えない。



「どういう意味だ?」

「どうって、そのままよ。自分達の攻撃が遅いからってヒーラーの私に言われても。これでも私はあっちこっちのパーティーから誘われるしー前衛二人は大変よね。

 一人はワンマンリーダーで、一人は亜人。

 誘ってくれる所あるといいね。じゃっ帰るから」



 俺とツヴァイは顔を見合わせる。


 冗談じゃない。


 性格は悪いが体とヒーラーは一級品だ。

 ヒーラーがいるだけで冒険の幅も広がり金も稼げる。

 俺と同じ思いだったのかツヴァイも、俺に何とかしてくれ。と訴えて来た。




「まてまて、軽いおふざけだ。本気で喧嘩してるわけないだろ?」

「そうでござるよ。ちょっとからかっただけでござる。サーリア殿も我々がいないとダメなクエストもあるでござるかもよ、無いにしろ、我々にはヒーラーではなく、サーリア殿が必要でござる」



 街まで帰ろうとしていたサーリアが振り返って来た。



「そこまで言うなら、確かに……あの100金貨の依頼はパーティー依頼だったわね。うん。わかったわ、私も言い過ぎたと思っていたし仲直りしましょ」

「ふっ現金な奴だな」

「ある意味正直で好きでござるよ」




 俺達3人は手を握手する。



「最近は完勝といかないまでも、そこそこに金はある。ここらで休暇としないか?」

「いいでござるな」

「どこか当てあるの?」

「俺の実家に温泉がある。周りには内緒なんだが魔力が豊富に入っているらしく怪我は勿論基礎能力をあげる事が出来る、それに、サーリアを親父に紹介したいしな」



 あんな片腕のアニキじゃ嫁なんて来ないだろう。

 やっぱり俺が跡取りになるしかない、俺だって強くなったんだし、あんなアニキより貴族に相応しい。

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