011 辺境生活でラック覚醒準備に入る
温泉の施設に泊まって三日が過ぎた。
朝から温泉に入り、お湯を飲む。
最高の一日だ。
お湯からで脱衣所もでると、玄関の扉がガラガラと開いた。
入れ替わりにミリアさんが杖を付いてやってきたのだ。
「おはようございます」
「ああ、おはよう。昨夜にクアッツルから食材を貰って来た。調理して食べるがいい」
ありがとうございます。と、礼を言って食材を受け取る。
エルフだから肉などは食べないのかと思ったけど、あまり食べないだけで食材の中には野生動物の肉なども入っていた。
「さて、のぞくなよ」
「のぞきません!」
「前科があるからな……のぞくぐらいなら堂々と入ってこい」
「あの、僕を何だと」
「ん。意思表示が下手で、それが原因で振られた駆け出し冒険者って所だ」
言うだけ言うと脱衣所の扉を閉めて中へと消えていった。
これだけ貶されてるのに、ミリアさんの口調からからかってきてるんだろう。というのがわかる。
仮宿場の裏へ行き、貰った食材を調理しはじめる。
でも、肉なので焼くぐらいしかない。
野菜を手でちぎり湧き水で洗う。
後は少し硬くなったパンと昨夜に残ったスープを温めで完成だ。
外にあるテーブルの前に並べると、温泉から上がったミリアさんがひょこひょこと杖を付いて歩いてくる。
「美味しそうな匂いだな」
「自信はないですけどね」
「ラック。君はもう少し自信をつけたほうが良い。では食べる前に頼む。そのほうがいいのだろ?」
「よくわかりませんが、僕の師匠がそう言っていたので、満腹よりは空腹時の少しだけほうがいいとかなんとか」
「名前は? もしかしたら知っている人かもしれないな」
師匠の名前を言おうとして、開いた口を閉じた。
もう一度口を開く。
「すみません。名前は出すな。と師匠との約束で……なんでも僕が師匠の名前を出す事で自分の実力と認められないとかなんとか言ってまして」
「ほう、確かにラックにはそのほうがいいかもしれないな」
でも、絶対面倒だからに違いない。
ことある事に『君を一人前にしたら私は自由だ!』って叫んでいたし。
『いいか? この先知らない人間に私の名前を出して弟子だった。って事は秘密だぞ? 突然に問題が降ってくるのは非常に面倒だ。あっ、そうだ。
私の名前を出すよりは、君の名前を出したほうが良い、そのほうが自信にも繋がるし、失敗も君だけの失敗ですむ。
所で君の名前はなんだったかな……?』
と、師匠の顔を思い出す。
色々と問題ありそうな師匠であるが、元気にしていればいいかな。
せっかく教えてもらったのに、いまだ僕はD級ランクで師匠は怒っているかもしれない。
「さて、足を延ばせばいいか?」
「あっはい! お願いします」
っと、今は集中して補助魔法をかけなければ。
ミリアさんは椅子の上に座ると、痛みのある右足を伸ばし近くの岩へと乗せる。
僕はその右足の太ももから爪の部分までを触り肌の感触を手のひらで感じ取る。
「くすぐったい…………それに手つきが、いやら……それは言わないでおこう。
そのなんだ、思いっきり。がっ!
と、つかんでくれた方が助かるな。
それに温泉でも遠くから魔法をかけれたんだろ?」
色々と注文が多い。
「まぁそうなんですけど……」
「ラック。もしかして私の足を触りたいだけの足フェチという奴か!?」
「違います」
それは即答なんだな……と、ミリアさんの声が聞こえて来た。
僕が丁寧に触っているのは魔力の流れを感じ取りたいからだ。
昨日も感じたけどやっぱり足の太もも足の裏側などが魔力が感じられない、そこだけ石みたいな無機質だ。
「魔力の流れをみてまして、そこに僕の魔力を打ちこむんです」
「ほう……」
「そうすると……なんでしたっけ……」
「私に聞くな」
「ですよね。呼び水? 呼び魔力だったかな。僕の魔力を使って本来眠っているはずの魔力を爆発的に一時的に増やすんです」
「眼鏡もあって頭がよく見えるな」
「全部師匠の受け売りです。はい」
最後の師匠に丸投げする所の説明まで大体は定型文みたいなものだ。
詳しい原理もしらないし、師匠の言う通りにしたら僕にも出来ただけで、才能のあるなしの人間もわからない。
「
魔法を唱えミリアさんの足に僕の魔力を流し込む。
「んっ…………あっ…………ふぅ……」
「はい、おしまいです」
「助かる。…………ラックの人生だから私が言うのもおかしい話であるが、補助魔法屋をすれば繁盛するのではないか?」
「どうでしょうね……回復魔法では無いですし、効果も人によって時間はまちまちです」
それに近い事を冒険してない暇な時に宿屋でしていたんだけど、銀貨一枚で二人分とかだったからなぁ。
食べてはいけない。
遠くから走ってくる音が聞こえると、クアッツルが元気よく走って来た。
叫びながらだ。
「ママあああああ! と…………居候のラックさんですわね。ペッ!」
「約束通りだな」
居候ではないよ。
次の馬車来たら帰るつもりだし。
「もちろん、ママとの約束を忘れるわけないですわ。さて畑の修復へと行きましょう。あっこれママと人間が食べれる食材ですわ。こちらがママの分。こっちがラックさんの分でございます」
背負っていたリュックには大きな箱と小さな箱が入っていて、大きな箱はミリアさん。
その4分の1ぐらいの小さい箱が僕の分。
扱いがひどいような。でも、貰えるだけ嬉しい。
土は食べたくない。
「何か文句でもおありで?」
「ありがとう」
「ふ、ふん! 箱は小さいですけど、ちゃんと栄養は同じぐらいに入ってますわ!」
「ありがとう。本当に助かるよ」
二回目のお礼を言うとクアッツルは耳を上下に動かして顔を背けてしまった。
怒ってるのかな。
3人で畑のあった場所まで進んだ。
はぐれスライムの体液は地面に溶けてすでになく、畑全体に雑草が生えていた。
「三日でこんなに生えますかね?」
「あら? 知らないんですの? スライムの体液は魔力が豊富ですわ。
その魔力にあてられ草花が生えたのでしょう。本当は抜きたくは無いんですが……これもママが生きるため、遠慮なく抜いて畑を耕しますわよ!」
「へえ……」
「それに、高密度の魔力を持ったスライムはその特徴から天然の化粧水にもなるのですわ。
エルフの女の子はよく使ってますわ」
へぇ……あの液体が化粧水か。
あっだったら。
「ミリアさんにはもう必要かもしれませんね」
それまで雑草を刈っていたミリアさんの動きが止まる。
感情が読めない無表情で僕の顔を見て来た。
「どういう意味だ?」
「え。別に意味はないですけど、女性ですし、使ったほうが良いのかな。と。
あっでもミリアさんは綺麗だから要らないか……あっすみません」
ミリアさんの顔が突然笑顔になった。
な、なんだろ。
「そ、そうか。いや、まぁ余り気にしてないが、そういわれると嬉しいものだな」
「ママもラックさんも手が止まっていますわです事よ」
クアッツルに怒られて、僕も急いで雑草を鎌を使って刈る。
いくら僕でもそれぐらいは出来て、昼過ぎには畑は綺麗になった。
後は夕方までクワで耕して終わり。
クアッツルが畑に色んな種をまきまくる。
小さい穴を指であけては種をいれ、次の場所に同じ事を繰り返した。
僕とミリアさんはその様子を見ていて、種をまき終わったクアッツルが駆け足で戻ってくる。
「さぁ! ラックさん。あなたの出番ですわよ! 魔力を流し込み作物を育てるのです」
「え? いや……どうやって!?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます