007.5 (第三者視点)元仲間達は特別依頼を頼まれる

 個室ありの高級酒場で俺とツヴァイ、サーリアを含めたパーティー。そして、アスカルラ騎士団第七部隊副隊長のユーリーと顔を見合わせ座っている。



 ユーリーの年齢の見た目は20代前半、髪は青く三つ編みでまとめていた。

 あの若さで副隊長か、実力のほどは知らないが女だてらによく出世したもんだ。


 シャドウウルフの頭を一撃で粉砕した隊長セシリア隊長ってのはまだ10代前半の子供にしか見えなかったしな。


 長い沈黙の後、俺は渡された報告書をよみおえ、そのまま投げ返す。


 少し横暴な態度であるが、こちらも騎士団ごときに舐められたくはない。



「この報告書は信用に足りるのか?」



 ユーリーは書類をしまうと笑顔のままだ。



「別に信用しなくてもいいわよ」

「こちらでも調べさせてもらう、騎士団ごとき・・・の調査じゃ信用出来ないからな」

「お好きに。シャドウウルフの森に変な呪いは確認されてないし、体力や魔法の威力が落ちた。と言われてもその報告はあなた達級冒険者パーティーだけですから」



 古い情報を聞いて来たのか、挑発してるのか、どっちにしろ不愉快だ。



「悪いが級パーティーに登録してある」

「あら、級冒険者のパーティーような立ち位置でしたので」



 顔は綺麗なくせに、嫌な女だな。



「グィンもういいわよ。調子が悪かっただけよきっと。でユーリーさん、その回復してもらいたい人ってどこにいるの? 見た所あなた一人っぽいけど」

「現在は行方不明。怪我が元で除隊していて……見つかった時の予約みたいな感じの契約をしたい。それでいい?」



 良いも悪いもない。

 成功報酬は金貨にして700枚だそうだ。

 たとえ失敗してもヒールするだけで金貨100枚。そういう書面を先ほど交換した。



「随分とまぁ呑気なクエストだな。いいだろう、冒険者ギルドに冒険者指定クエストで発行しておいてくれ、こっちも国の上層部と縁が出来るのはやぶさかじゃないからな」

「お願いするわね。冒険者ごっごが好きな辺境貴族の次男坊さん」

「別にこの依頼断ってもいいんだぞ」



 挑発には挑発で返す。

 俺の足が突然踏まれた。


 あまりの痛みにテーブルの下を見ると、サーリアが足を延ばして俺の足を踏みつけた。

 次に足のすねを必要以上に蹴りだした。

 受けろ。という事だろう。



「わかりました、隊長には破談になったと。伝えておきます」



 サーリアの蹴りが連打になる。



「ちょっとまってよ、グィンは受けない! とは言ってません、それにパーティーの依頼でダメなら私個人の依頼でも大丈夫です。その人って怪我人なんですよね。

 何人ものヒーラーでもダメと聞きましたし。私のヒーラーとしての力が周りに音とも思ってませんし……。

 駄目でも依頼は成功なんですよね!」

「ふふふ、慈愛・・に満ちた子だね。でも、一応はパーティーで依頼しておくよ。その方が君達もいいだろ?」



 ユーリーが依頼を出す。と決定したとたんに、サーリアは俺の足を蹴るの止めて来た。


 まったく……現金な女だな。

 そこがまた可愛い。




「さて、この話もまとまった所で帰りますね。歓迎されてないみたいだし。そういえば……」



 ユーリーは俺と煙草を吸っているツヴァイ、さらに笑顔が眩しいサーリアを指で数えて、次にぐるぐるぐると指先を回して誰かを探している。



「もう一人は?」

「俺達は三人パーティーだが?」

「え、でも資料には補助魔法士が一名書かれているけど、参ったなぁこの資料も古いわけ? 亡くなったとか?」

「その補助魔法士なら逃げた・・・でござる」



 ツヴァイが煙と共にアイツの事を報告した。



「そういう事だ、どこで何をしてるかは俺達のパーティーには関係ない」

「そうなの? もったいない・・・・・・

「もったいない? 補助魔法士が?」

「ちょっと、ユーリーさんそれはどういう事ですか? もしかして金額アップとかっ!?」



 ユーリーは俺達三人を見て、ほほ笑みを返してきた。

 普通の冒険者ならこの笑顔に騙されるだろう。



「さぁ? 私の口からは冒険者ごとき・・・に話す内容じゃありませんので。では指定クエストを依頼しておきますので失礼しますね」



 言うだけ言うとユーリーはさっさっと個室から出ていく。



「あの女っ!」

「おちつけサーリア」

「妙な事をいう女であったでござるな、サーリア殿。ラック殿は実は何か持ってるとかあったでござるか?」

「無いわ、ちょっと補助魔法が使えるだけの、うじうじした勘違いの男よ」

「こっちを煽るための文句だろう、俺から見てもラックが何か秘めてるなどは無い。さてツヴァイ飯の後の訓練に付き合え」

「もちろんでござる。どうも体がなまって来てござる、またお互いが痛みで気絶するぐらいに訓練するでござる」



 懐かしいな昔はよく痛みが数日続き何も出来なかったな。

 その代わりその後は体が軽く強くなったと確信できたのを思い出す。

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