第43話【ラファエル視点】崩壊寸前に追い込まれてしまった

 くそう……。


 リリア奪還ができなかった上に、国交断絶とも宣言されてしまった。

 カサラス王国のような砂漠のゴミ国などと関わってもメリットはないと思っていたが、今は違う。

 確かに水で溢れる都と化していた。

 間違いなくリリアが活躍したのだろう。


 今になってリリアが聖女だと思っても仕方がない。

 やはりリリアは聖女ではなかったと国民にも大臣たちにも偽の情報を流さなければならないのだ.

 そうしなければ、私がリリアを婚約破棄し、国外追放した責任が重すぎる。

 それに、リリアを悪女に仕向けたのも私だ。

 リリアのような女は嫌いだし、皆に嫌われる女にさせたことに関しては後悔はない。

 だが、今となってはリリアの力がどうしても必要になってしまっている。

 代用品として魔導士を集めるにしても、一体何百人集まればリリアの代わりがつとまるだろうか。


 カサラス王国から手に入れた財宝も、魔導士を雇うために使うことになりそうだ……。

 そうでもしないと、今のエウレス皇国を存続させることができそうにない。


「汲んだ水もこれでおしまいか……」


 水筒に入っていた水も全て飲み干してしまった。

 樽に入れておいた水も、我慢ならず水浴び用として使ってしまった。

 だが、下手に水を持って帰るよりはマシである。

 あくまで、カサラス王国は砂漠の国だったということにしておかなければならないからだ。

 幸い、距離も離れているし、民間人が安易に行けるような場所ではない。


 馬車はようやくエウレス皇国の王都へたどり着いた。


「む? 先客がいるようだな……」


 私が乗っている馬車の先には何台も馬車が止まっていた。

 どれも随分と立派な馬車だし、この国のものではなさそうだ。


 やれやれ、帰ってこれたと思ったら、また他国の相手をしなきゃいけないのか。

 私は多忙だな。


「皇王陛下、おかえりなさいませ。デインゲル王国の陛下がお見えです」


 デインゲルの王は私と二度と関わらないようなことを言ったばかりだ。

 ははん、つまり私が必要だと再認識して謝罪にきたというわけか。

 ならばすぐに会ってやらねばな。

 私は優しいのだし、それに、今はデインゲル王国の水も必要になってきそうだから仲良くしておいた方が無難だろう。


「そうか、すぐに準備をして──」

「いえ、今回は陛下ではなく、大臣たちに会いに来たそうです……」

「なんだと? 私を差し置いてとでも言うのか」

「そうとも言えるかもしれませんね」

「ぐぬぬ……」


 さっきから部下の態度も今までと何かが違うように見えてしまう。

 まるで、私の現状を見て笑われているようにも見えるのだ。


「そうだ、マーヤはどうしている?」

「王妃はすでに監獄の中に閉じ込められていますが」

「なんだって!? マーヤが何をしたというのだ!」


 私の判断もなしにマーヤが監獄などありえない。

 魔法が使えないことがバレるほどのことでない限りは……。

 だが、マーヤには絶対に魔法が使えなくなってしまったことは伏せておくように命じていたはず。


 最悪の場合を想定して魔力を引き出す魔道具すら渡していたのだ。

 マーヤの魔力が完全にゼロでない限りは魔法が使えるのだぞ。


 バレるはずがない。


「私も詳しくは存じておりません。宰相か大臣なら知っているかと」

「ち……」


 私は重い足取りで宰相たちがいると言われた部屋へ向かった。


「な、なぜデインゲルのカイ……カイロス王が私を差し置いて宰相たちと話しているのだ!?」

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