逃げる

アンリエッタはギルドの人から手紙を受け取って真っ青になる。


「ロキ様大変です。元婚約者のイザーク様が私を連れ戻したいと」

ロキとアンリエッタは住所を持たない宿暮らしのため、ギルドを経由して届けに来たみたいだ。


「まさか督促か?もう少し待つように言えないのか?」

ロキは慰謝料の支払いの為にアンリエッタを連れ戻しに来たのだと思っている。


アンリエッタは復縁の話とは言い出せず、ロキの話に乗った。


「……ダメみたいです。このままでは私、残りのお金を渡すためにのどこかに売られるかもしれません」

ロキはギリッと歯を食いしばる。


「そうはさせない。俺様が責任を持つと決めたのだから」

命を助けてくれた恩人だ。


借金の額に逃げようと思ったこともあるが、これでは後味が悪い。


何としても捕まる前に借金を返さねば。


「ダンジョンに暫く戻る。ギルドに言伝を頼んでおこう」

慰謝料は必ず払うからアンリエッタは渡せない、ひと月待てというものだ。


「君を元婚約者には渡せんからな。すまないが、付き合ってもらうぞ」


「はい」

捉えようによってはプロポーズの言葉のようにも思える。


アンリエッタは頬を染め、ロキについていった。

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