カラマルフル~君と僕は4日間で一生分の恋をする~

どらにーと

第1話 無気力な僕と明るい君

 人生に一体何の意味があるのだろう。

 ふとした瞬間に頭の片隅に浮かんだ言葉が日に日に大きくなっていく。


 何となく義務教育を終えて、何となく高校に入り、部活も勉強にも力を入れずに日々惰性を貪るだけの生活を続けていると世界がモノクロに、周りの話し声がノイズにしか聞こえなくなっていく。


「死ぬか」

 自分でも信じられないほど感情が乗らない声でそう呟く。


 学校へは行かずに、あまり人の立ち入らない廃墟へと足を踏み入れる。


 屋上への扉は壊されていた。老朽化なのか不良が壊したのかは分からないが運が良いのだろう。

 飛び降りて死ぬには十分な高さの屋上へ向かう。

 思えばつまらない人生だった。親不孝にも程がある。飛び降りたら痛みを感じてしまうのだろうか。

 屋上へと続く階段の途中で色んなことを考えてしまう。どうせ死んでしまえば何も残らないのに。


 飛び降りる覚悟をし、靴を脱ぎ、柵を乗り越えた所で声が聞こえた。


「ねぇ、死んじゃうの?」

「は?」


 声をかけられ思わず振り向いた。

 おそらく自分よりも年上だろう、あまり化粧っ気の無い女性がこちらを見ている。


「どうせ死んじゃうならその前に少し話をしませんか?」


 こちらが何も言わないでいると彼女はそう切り出してきた。


「なんで死のうと思ったの?」

「何もない自分の人生に意味が無いように思えて」


 驚いた。初対面の相手に死ぬ理由を語るなんて。

 どうせ死ぬからと自暴自棄になっているのだろうかとも思ったが、何となく、そう何となく彼女と会話をする事で人生の最後を締めくくろうと無意識に思ったのかも知れない。


「それだけ?」

「それだけです、特にそれっぽい理由も無いですよ 、 つまらないでしょ?」


「うーん、死ぬ理由なんて人それぞれだと思うけど、私はちょっと勿体ないと思っちゃうな」


「勿体ない?」


「うん、勿体ない。理由は教えてあげない!」


 こちらをからかうように彼女は笑った。

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