第48話 鳴き声

「にゃーって!」

 彼女も側にいるので聞こえたであろうが、声に出してしまった。

 裏庭への扉を開けたくもあったが、彼女と顔を見合わせ窓からそっと見守ることを選んだ。

 白猫と黒猫が富士山の隙間をくぐり抜けたすぐのところで向かい合って、にゃーにゃーと戯れているようなのだ。

「けんかじゃないよね?」

 猫に詳しくない私は、彼女に小声で尋ねる。

「白猫さんが凄く昂ってるみたい……黒猫さんがいたずらっ子なんだと思う」

 彼女も小声であるが、私の耳にしっかりと届いてくるし、そう思って見てみると黒猫のちょっとやり過ぎた行動を注意している白猫という図に思えてくる。

「白猫さんと黒猫さんは、初対面って感じがしないね……仲はわるくないけど─── 」

「ふふっ、想像し過ぎちゃだめよ。追い越さずに見守るの」

 私の過ぎた想像力を優しくたしなめられ、黒猫と白猫を見守る感覚に切り替わる。

 頷き合いながらの猫ウォッチングはとても微笑ましい時間になっている。

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