第31話 接点
手を洗うし、うがいをする。順番に帰宅ルーティンを済ませて裏庭へ向かう。
彼女は、干してあるシャツやタオルを確認してちょっと位置を変えると家に戻った。キッチンでレモンの炭酸水を作っているようで、窓からそうであろうと想像できる音が聞こえる。
猫草を植えている私の隣にしゃがみ込んだ。
「はい」
三分の一くらいもらって彼女に返すと軍手をつけ直し、猫草の根の部分が埋まる以上に移植ゴテを使い穴を掘る。その作業を彼女はレモンの炭酸水を飲みつつ、黙って見ている。
穴が満足ゆく深さになると花壇で使っている土を袋から直接、穴に入れて馴染ませた。
猫草を植えたらまわりを平らな石で、猫の前足を置いて貰うようなイメージで囲ってみる。
「私は、いいと思う」
あくまでも猫にとっての猫草植えなので、富士山の隙間をくぐり抜け裏庭に入った猫がこの猫草をかじってくれるかが、問題なのだ。
「かじってくれるといいね」
彼女が平らな石を撫でながら頷く。
そして、空っぽのグラスを手に裏庭の水栓金具から水をなみなみと満たすと儀式のように猫草を濡らした。
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