第24話 猫?

「た…」

「にゃー?」

 瞬間、重なった声に富士山の隙間を前足が入って来ている。小さなふわっとした前足は黒色できらりと光る瞳も確認できる。

 二人は、黙って見守っていたが猫は裏庭をちらっと見たら、くぐり抜けては来ずに戻ってしまった。

 しばらくは、見守り続けたのだが私は諦めの言葉を口にした。

 彼女もその流れだろうと同調し、今日の張り込みは一定の成果を得られたとして白ワインのグラスを小さく鳴らした。

「猫草を、植えてみようか」

「明日、一緒に買いに行きましょう」

 私も日々、必要な食料品以外は宅配サービスで購入しているし外出は好んですることでは、無いのだが彼女の出不精は……特に日中の外出は珍しい行為なのだ。

「朝?」

「そうよ、植えるのに不都合でしょ。それ以外は」

 彼女も、私もいつ死んでもいいように動物を飼わないし私たちに依存するものを極力、つくらない生活を心がけている。

 猫草はそのあたりをクリアしているようで、彼女にとって日中であろうが外出してでも欲しい魅力的なものであったようだ。

 ───2本目のワインは用意されていたのだが、彼女と目が合いお互いに微笑んだ。

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