第11話 ティータイム

 必要なものはトレイにすべて乗っており、私は裏庭へのドアを開けて彼女の道を作る。

 そう広いわけでもないし、アフタヌーンティーを楽しむスペースが確保されてもいない裏庭にふたりは神聖な儀式のように列になり歩いた。

 一メートル半のベンチの真ん中にランチョンマットを広げ、ティーセットを彼女から受け取る。彼女はトレイをベンチの背に立て掛け、あまり離れず座れるようにした。

「あの垣根のところ、もう少し隙間があってもいいと思う」

 生垣なので、大まかな作りにして自然な木の動きにまかせていたが、猫が通るにはかなり狭そうだ。

「そうだね。下の隙間は目隠しの意味もないし、この庭を通り抜けのルートに追加してくれるが増えるかもしれないね」

「でも、大きな穴にし過ぎないで。くぐりたくなるような魅力的な隙間にしてね」

「観察の時間が必要だね」

「ゆっくり飲みながらね」

 ティーコジーを取り、カップに注がれる香りをふたりで楽しむ。茶葉は程よく蒸らされており、彼女のタイミングは砂時計を必要としない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る