第9話 適当

 拍手されると、一礼して小皿にすりごまや、酢に砂糖等を私の感覚でまぜてゆく。切り終えた野菜は2つのお皿に同じように盛られており、美しさを感じることはないがサラダらしくしている。

「私の……ゴマ好きのためのサラダね」

「ゴマドレッシングの味見をお願いしても?」

 彼女は頷き、スプーンを口にして味わうと、

「おいしい」

 ゴマの風味が、引き立ち酸味と甘味のバランスも、好みに合ったようで安心する。

「ゴマだけを食べるのでは感じられないゴマらしさね」

「ありがとうございます。クロワッサンも温めますから、もう少しお待ちください」

 彼女は、テーブルの花瓶を気にしていたが何も言わず椅子から離れようとはしない。

「お花、色を足しますか?」

 この問いかけを待っていたかのように立ち上がると、裏庭の花壇へ彼女は少女のように向かった─── 金塊を見つめる時の姿は、そこにはない。

 軽い足音を聞いた後は、静かにクロワッサンの温まる香りを吸い込み裏庭に向いた窓を半分ほど開けてみた。

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