第6話 寄り道

「逃げ道ばかりつくらないで」

 彼女の真実を伝える言葉は、私の表情を止めたし戻してさえいる。

「その道はあまり好きじゃないみたい」

 私の我慢の仕方が彼女にとって好ましくないと知ってから、ざらざらとした内側になり冷たく感じられるを心で触れるとうつむき、目を閉じた。


「それも、好きじゃない」

 彼女の声は、特に変わりもなく私に向かってくる。

 好きな人と一緒に居られたら幸せ。

 でも、幸せだけなんてないから。

 幸せを感じる……幸せを知ったことで消えてしまうことへの恐怖は生まれている。

 その恐怖感は、幸せであればあるほどに、大きい。

 この迷路には、出口は無くて入口は消えている。

 帰り道を必要としてはいけないのは、必要としてしまった過去が教えてくれたこと。

 分かれ道の多さは生きるほどに増えてゆく…….そう感じている。

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