第4話 響かない
彼女の言葉を集めるのが好き。
声の違いで私が元々、思かないっていた言葉の印象をこんなにも変えてくれる不思議な言葉使いの彼女。
「心がね、ドクドクって」
「許さないって、そんな言葉?」
「これからはそうなるかも」
「好きは?」
「ドクドクドクかな?」
「喜ばないで、考えて言っていないから。言いたかったら言うし、言いたくないときも言うかもしれないから」
「ありがとう」
言い足りないけど、このあたりが言葉の止め時だと感じてアーモンドチョコくらいの距離を埋めた。
まばたきが一回あったけれど、それ以外の変化は見られず唇を離した。
このタイミングだった? そんな目で見てる彼女は、嫌じゃないけど唇を動かす方でしてくれたらよかったのにと受け取れるぱっ、んっ、というしぐさを魅せた。
声にしない彼女に合わせて、失敗しちゃったなというかたちの唇をつくって、目を閉じると少し眼鏡が動いた。
長い時間このままでいたら───いや、こんな姿をしていること自体が気持ち悪いだろう。期待してる中性的な顔立ちの勘違い男を彼女はどんな顔で見てるのか?
……見てすらいないかもしれない。
あー、目を閉じた自分が恥ずかしい。もう、その前の甘えるような表情もなんでしちゃうかな。
邪魔なく考える時間があるばかりに、目をあけるタイミングが見つからず悲しくなってきた。
カコ、カコっと金塊の音でも聞こえれば、ちょっとは気を楽に切り替えられると思うのだが……彼女は甘くない。
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