第13話 仲間
⒔
「木下って、相談をしてきたことが一度もないよな。決まって事後報告だもんな。あ、今は大沢、だっけ」
今私は、中山にすごい勢いで叱られている。
「いや、いやー、うん、そうだね。ごめんなさい」
言い訳をしようか迷ったが、言い訳をしようがないことは明らかで、私は謝った。
「一応、こーんなチビの頃からの付き合いだってのによ。冷たいねぇ」
親指と人差し指で僅かに隙間を作って、彼は言った。
「中山だって、私に相談したこと、ないじゃん」
その言い方にイラッとして、言い返した。
「俺は相談するようなこと、起こってないから」
隙間を広げて、人差し指で頬をかいた。
「えー、好きな子とか、いないの? 他校の私なら話しやすいんじゃない? ほれほれ」
「なんで相談と言ったら真っ先に恋愛話なんだよ。話さねぇよ」
いつか、話すけど。ボソッと言ったその言葉を、私は聞き取れなかった。
「そう。つまんないの」
それ以上聞くのはやめた。何事も引き際が肝心だとよく言う。
「中山にしずか、早かったね」
待ち合わせ場所に来たミヤが言った。
「まあな」
「早めの電車に乗れたから」
その三分後に、よっしーと佐田が現れた。
「よっ久しぶり」
「うっす」
二人は私に挨拶をした。そうか、私以外はこの四人、ほぼ毎日会っていたんだ。
「佐田は予想通りだけど、よっしー身長伸びたね」
ほぼ同じ目線だったはずのよっしーの顔が、少し上に移動した。
「さすが! 木下だけだぜ気づいてくれるの。みーんな俺の事いまだにチビ扱いすんの。俺よりちっちゃいやついるのにさ、なんでだろう」
その理由はなんとなく分かったけれど、本人には内緒にしておこう。五人でファストフード店に入ると、参考書や課題を広げた。今日はみんなで定期テストの勉強をする。
私の学校と彼らの学校はテスト期間がほとんど同じなのだ。
このメンバーは割と勉強が得意な子が集まっている。普段騒ぎ散らかしているよっしーも平均点は超えていることが多い。
ミヤは言わずもがな、学年順位一桁常連。
贅沢な友人達を持ったものだ。それは、テストの出来のことではなく。
彼らは、こうして変わらず私を輪の中にいれてくれている。
心配をかけているのに、自分の話をするのが下手で、説明不足な私を許してくれている。
そんな友人の前で、自分の価値を感じない程もう、鈍感じゃない。
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