トマトの悪魔

ゆーえんみー大統領

1

 トマトが嫌いな彼女が欲しい。だって僕もトマトが嫌いだから。


 三年前ぐらい前に付き合っていた彼女はトマトが好きだった。彼女が作ってくれる料理の内、五食に一食ぐらいはトマト料理が出てくるし、外食に行ってもいつもトマト料理ばかり頼む、それで自分がお腹いっぱいになったら僕によこしてくるんだから困りものだ。彼女の実家に行って、トマト料理がでてきたときは、もう無理かと思ったから。


 そんな彼女と過ごす内、僕はトマトを食べれるようになった。好きだった、彼女トマト

 休日には彼女に教えてもらったレシピでトマト料理を振る舞った。おいしいとおいしくなさそうな顔で笑ってくれた。

 僕は彼女との生活でトマトが好きになったんだから、トマトは僕にとって彼女との繋がりみたいなものだった。同棲してますよっていう証明書みたいな。

 二人でスーパーに出かけて、トマトのよしあしを語らって、帰りはトマトでぱんぱんに詰まったレジ袋を二人で提げた。


 そして僕の家からトマトが半分になった。それは彼女と付き合ってちょうど二年ぐらい経った時だった。浮気だった、彼女は自分からそう言ってきた。僕は彼女を許そうとしたけれど、彼女はそれを拒んで言った。

「もう無理なの。新しい人と暮らすから。」


 それから一ヶ月ぐらいして僕の家からトマトはなくなった。丸々。

 

 トマト嫌いだ。だからトマトが嫌いな彼女が欲しい。

 トマトを見るたび、彼女を思い出すから。

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