第7話・魔法使いさん
──その頃、第一騎士団所属近衛隊の宿舎のラウンジでは、カレンを心配するダニエルとサミーが居た。
「副団長、さっきの話ですが……カレンちゃんのこと……」
「ああ、分かっている。イジメだな。ただ、それを侍女長殿に言うと、余計に酷くなるのが心配だしなぁ……。曲がったことが大嫌いな侍女長殿の性格だ。きっと、主犯者をこっ酷く叱責されるだろう。そうすると……」
「俺の時と同じですね……俺には副団長殿がいたんで耐えれましたが……副団長には本当に感謝しています! あの時、副団長がいなかったら……」
「サミー、俺と二人の時は、ダニエルさんでいいぞ? 副団長ってのにはまだ慣れないな。ハハハハハッ。それにお前のことは、俺は関係ないよ? お前の日々の努力のお陰で、団員に認められたんだからな? その点では、カレンちゃんもガッツはありそうだけどなぁ」
「ダニエルさん、それは俺が男だからですよ。そりゃぁ男同士でもイジメのようなことは勿論ありますけど、お互い剣を合わせると。それにあの時、ダニエルさんが言ってくれたあの言葉『お前達は、そんな下らない感情で自分の命を危険に晒すのか? 命と、幼稚な優越感どっちが大事かも分からん馬鹿はとっとと出て行け!』アレ格好良かった!! 俺今でも覚えてますもん!」
「俺そんなこと言ったか? うはっ恥ずかし。思いっきりヒーロー気取りのイタイ奴じゃないか! 懐かしいなぁ。お前が入隊して早2年かぁ……」
「当時は、田舎から出てきて何も分からなかったですからねぇ。だからカレンちゃんの今の姿を見ると、あの頃の自分と重なってしまって……。最も俺なんかより、カレンちゃんの方が凄いですけどね。イジメられてても前向きだし、腐ってないし」
「あの子、自分がイジメられているって自覚あるのかなぁ?」
「「…………。」」
「まぁ。もう少し様子見ようか? あまりにも酷くなれば侍女長殿には俺から相談するよ。それまでは俺達が出来るだけ気に掛けてサポート出来る時はしてやろう」
「そうですね? 俺、他のみんなにも協力頼んでみますよ?」
「おお、そうだな、俺からも面倒見の良い奴らに声掛けてみるよ」
──昼食後、私はシーツ交換をし、干してあったシーツを取り込み片付けたところで、今日の仕事が終わった。
「侍女長様の所にご挨拶に行くべきよねえ? 明日のことも聞いておかないといけないし……また遅刻する訳には行かないしね?」
そう思い私は、侍女長様の部屋を訪ねた。
「在室中」の札が掛けられていたのを確認し、私はドアをノックした。
「侍女長様、カレンです。本日の仕事を終え報告に参りました」
「…………」
あれ? いらっしゃらないのかしら?
もう一度ノックしてみた。
「侍女長様、カレンです。報告に参りました」
「…………」
いらっしゃらないのかしらねぇ? 仕方ないわ。と思い、出直そうと思ってドアを離れた瞬間。
──ガチャリッ
中から侍女長様が出て来られた。だがそのお顔は…………。
「あーなーーたーーーねぇ。 何てことですか!!!」
何故か? 激怒されてしまいました………。
そのお顔は、美しい侍女長のお顔に眉が引き攣り、眉間には太く鮮やかな青筋が立っていて……。
鬼の……いやお美しい侍女長様に相手に鬼のようだ何て失礼だわ……。
ひぃーーーー! 怒らせてしまったわ! 何度もノックしてしまったせいかしら?
「すいま。じゃない、申し訳ございませんでした!!!」
私はとにかく、深く腰を折り頭を下げた。
「ドアを閉めなさい」
先程まで、鬼の形相、元い……御立腹御された、いや、少々
その素晴らしい
「はい! ありがとうございます!」
侍女長様の指示で入室した私はドアを閉める。
──バンッ
ハッ! またやってしまった!
つい村での癖が出てしまうわ……。早く慣れないと。
実は村の家は何処の家も手作りで、古くなって来たらその都度、修繕を繰り返していた。その為、どの家もドアの建付けが悪くなっているのは暗黙の了解で、ドアを開閉する際は力を入れないと、まともに開閉出来なかったのだ。
恐る恐る、侍女長様のお顔を見る。
──先程の青筋が出現していた!
「申し訳ございません!!」
「カレンと言ったわね? 貴女には先ず行儀見習いが必要のようね……。ですが、私達は習い事をする為に此方に来て居る訳ではありません。私達は王家に御仕えする為に此方に上がっているのです。そしてその仕事には責任があります。私達の給金は国民の税金で賄われているのですよ? そのことを貴女は今一度良く考えることです」
侍女長様の仰っしゃる通りだ。私は自分の軽率な行動と、夢に見た憧れの城で働けることで浮かれ過ぎていた。城で働く者の給金は、国の予算、つまりは国民が納めた税金で賄われていることは、村でも勉強していたはずなのに。なんて浅はかだったんでしょう。
「申し訳ございませんでした。今後はこのようなことが無いよう精進します!!」
再び私は侍女長様に謝った。
「カレン
? 私は侍女長の質問の意味が分からなく、直ぐに答えることが出来なく黙ってしまった。
「カレン。貴女に大事なことを教えて差し上げます。先程も言いましたが、私達は国民の税金を頂戴して王族に御仕えしているのです。その仕事にはそれだけの重荷があります。分からないから適当にでは済まされません。分からないこと、疑問に思うことがあるのなら、そのままにせず聞かねばなりません。対価に見合う仕事をするのです。いい加減なことはしてはいけないのです」
ハッ! その通りだわ。有耶無耶になんかしたらいけない!
「申し訳ございません。では質問させて下さい。先程の侍女長様のお言葉ですが、何故と言われましたが、その意味が私には理解出来ませんでした。本日仰せつかった洗濯の仕事を終え、此方に報告に上がろうと思って参りました。それに何か問題があったのでしょうか?」
私の言葉に、侍女長様は不快な表情を浮かべた。
「カレン。貴女今日の一日の仕事を私に話しなさい。そうね、そこに座りなさい」
「はい」
私は侍女長様に促され、近くにあったソファに腰掛けた。そして今日一日の仕事を最初から話していくことになった。
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