第6話・仲間が出来ました

 ──騎士様達の好意に甘え、シャワーと着替えを終えた私は、ダニエルさん達が待っている先程の場所に急いで向かった。


「有難う御座いました。本当に助かりました」

 私は彼らの親切に、心から感謝し二人に何度も頭を下げた。


「カレンちゃん。困った時はお互い様さ。何かあったらいつでも言ってくれ? な? 俺達仲間だろ?」


「そうですよ? 協力しますよ?」


 笑顔でそう言うダニエルさんと、サミーさんに私はとても有り難く、そしてこんな私を「仲間」と言ってくれたことが嬉しかった。


「あ、カレンちゃん? 昼飯はもう食べたのかい?」


 大失態をしてしまったことで、お腹が空いてきたこともダニエルさんに言われるまで気付かなかったわ。


「いけない! もうそんな時間なの?」


「ハハハハハッ。この時間だともう本館の食堂は閉まっているかもなぁ?」

「本館の食堂?」


「え? 食堂のこと説明されてないの? カレンちゃん? そう言えば洗濯場の仕事にしても、侍女だから知らないだけ? と思っていたけど……いや。何でもない。ごめん」

ダニエルさんが私の顔を見た後、何故か? バツが悪そうに目を逸らした。


「え? ダニエルさんそれって?」

サミーさんの言葉にダニエルさんが黙ったまま頷いている??


「カレンちゃん。そのシーツ洗い直すんだろ? 俺達が手伝ってやるから、そのあと俺達と一緒にランチしないかい? 本館の食堂程、良い物はないけど、寮の前にある休憩所には売店があるからねぇ。そこで一緒にどうだい?」


 ダニエルさんからの折角の申し出だったけれど、ここから一旦お城の部屋まで戻り、洗濯をしてとなると……。お二人にも迷惑を掛けてしまうわ。そう思い私はダニエルさんに言う。

「売店ですか……でも今私、お金持ってなくて、部屋まで取りに行けば多少なら……」


「ハハハハハッ、心配しないで。そのぐらい大丈夫だから。さぁ、それより早くそのシーツ洗っちまわないと! 日が暮れてしまうよ? 侍女長殿に大目玉だぞ?」


 ダニエルさんが泥の付いたシーツが入ったバケツを手に取り、笑顔で言う。

「さぁ、急ごう!」

 サミーさんにも促され、私は二人の好意を有り難くお受けすることにした。


 本当に皆さんなんて親切なんでしょう!


 こんな夢のような所で働くことが出来るだけでも、恵まれているのに。

 会って直ぐの、何も出来ない私のことを「仲間」と言ってくれ、こうして親切にして下さる。

 早く私も一人前になって、この御恩をお返ししなければ!



 その後、私はダニエルさんとサミーさんと一緒に洗濯場に向かう。


 そこで驚いたことが!

 何と素晴らしいことでしょう!!

 ここはやはり、夢の国ですわね!


 何と、お洗濯が「洗濯機」などと言う、によって出来るなんて!!


「……カレンちゃん。洗濯機に向かって拝まなくても」

「カレンちゃんって面白いね?」


「え? 面白いですか?」


「ああ、かなりな」

「ですね……」


 ええええええええええ?

 私ってそんなに面白い人???


 だって村だと、洗濯は貯水場まで持って行ってそこで手で洗ってたのよ? 

 冬は手が冷たくて辛かったもの……。


 やっぱり、ここは夢の国ですね。フフフッ♪



 遅くなった昼食を頂きながら、ダニエルさんとサミーさんから、王城内の施設や場所等を色々教わった。

 騎士団寮へは許可の無い女性は入ることは出来ないが、私達が今食事をしている、この「休憩所」は売店等も完備していて誰でも自由に利用して良い場所だと教わった。生活するのに必要な大抵の物はこの売店に売っていて、騎士様への伝言なども取り次いで頂けるらしい。


 流石は夢の場所ね。全てにおいて素晴らしいわ。


 その後、私は二人に礼を言い午後からの仕事に戻った。


 嬉しいことに、昼食をご馳走になったばかりか「困った時はいつでも自分達を頼ってくれれば良い『仲間』なんだから」とダニエルさんだけでなく、サミーさんまでも言ってくれた。


 そして、驚いたことにサミーさんのご実家は、騎士団の中では珍しく辺境の地だと。私が田舎者だと言うと「俺も同じだからその気持ちはよく分かるよ」と言ってくれた。

 サミーさんも王都に出てきた時に、この大きなお城を見て「何だこれ?」と驚いたそうだ。


 私達、田舎に住む者にとって「王都」は憧れの街。サミーさんも幼い頃からずっと「王都で剣士になる」のが夢だったそうだ。私が「何故、王子様をお護りする剣士で、王子様になりたいと思わなかったの?」って聞いたら「王族じゃないのに王子様にはなれないでしょ?」って言われた。

 それはそうだけど「幼い頃からしっかりした子供だったのね? サミーさんって」と私が言うとダニエルさんとサミーさんの二人に「普通でしょ!」と言われてしまった。


「でも、女性のカレンちゃんなら、お姫様になれるチャンスはあるかもよ?」


 と、二人に言われ、私が驚いていると王子様はまだご結婚をされていないと。

 村で読んだ「王家の歴史」の本には、王子様のお話は載っていなかったので、てっきり私は王子様はご結婚されているのとばかり、勝手に想像していた。


 でも、王子様には既に婚約者様が決まっておられ「お妃教育」の為、週の4日は城においでになるとのこと。


 きっと物語に出てくるような「お姫様」に違いないわ~~。

 お会いしてみたいけれど、私のような田舎者には雲の上の御方。

 私は、いつか遠くからでも、その御姿を目にすることが出来ることを祈った。












  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る