第3話・初仕事

 あれから、やっとのことで庭で剪定をしていた庭師さんを見つけ、その方がご丁寧にも騎士様を呼んで下さり、私の部屋へと辿り着くことが出来た私は、急いで渡された制服に着替えた。


 にしても、庭師さんに会うまでにも何人かの侍女さん? と思われる方々にお会いしたから、ご挨拶をして私のお部屋を聞いたのに? 何故か皆さん逃げるように去ってしまわれ……。

 はて? 仕事中は私語は禁止なのかしらねぇ? でも良かったわ。親切なお方にお会い出来て。


「それにしても何て素敵な制服なんでしょう!!」

 私は生まれて初めて着た制服と言う物に感動して、部屋の中でクルクルと回ってみる。

 紺色に可愛らしい白いエプロン。回るとスカートの裾がヒラヒラと広がり、まるでお姫様になったかのような気分だわ。


 は! いけない。こんなことをしている場合じゃないわ。早く行かないと。


「お洗濯~~ お洗濯~~♪ 今日は楽しいお洗濯~~♪」

 先程居た庭師さんに、洗濯場の場所を聞き、私は初めての城でのお仕事にワクワクしながら向かった。



「こんにちは~? 誰か居ませんかぁ? 今日からお世話になるカレンです? 誰か居ませんか?」


 中に入ってみるが、誰もそこにはおらず、仕方なく一旦洗濯場を出て、その付近に誰か居ないか探す。


「こんにちは~誰か居ませんか? すいません。誰かいらっしゃいませんかぁ?」

 大きな声で言いながら私は辺りを歩き回る。



「ん? 何だ? 侍女? 何やってんだ? 君は?」


 先程私を案内してくれた騎士さんとは少し違ったデザインの騎士の制服を着た男性が私を見て、とても驚いた表情をしている。


「すいません。洗濯をするように仰せつかったんですが、実は今日初めて此方に来まして、何を洗濯して良いのか分からず、何方か教えて頂ける方はいらっしゃいませんか?」


「ん? 君って侍女だよねえ? その制服って? 侍女が洗濯?」


「あ、実はちょっと連絡に行き違いと言うか、私の確認不足が悪いんですけど、顔合わせの時間に遅刻してしまって。それで、洗濯をするようにと仰せつかって」


「ハハハハハッ。何だ? ドジったなぁ? 侍女長殿に早速イジメられたってことか君は。まぁいい。ちょっとそこで待ってな? 女中さんを呼んで来てやるよ」


 そう言って優しく笑顔で言った男性は、私がお礼を言う前に走り去って行った。



 本当に、皆さん親切な方ばかりねぇ? 良かったわ。

 騎士様に言われた通り私が待っていると騎士様と、とても仲良くで話をしながら、一人の可愛らしい顔をした、雰囲気の女性が騎士様に連れられやって来た。


「じゃぁ俺はこれで」

 そう言って騎士様が手を振り去って行こうとした為、私は慌ててお礼を言った。


「ありがとうございました。騎士様」

 騎士様は、そんな私に軽く手を上げ、笑顔で走り去った。



「すいませんお忙しいところわざわざ来て頂いて。今日から此方でお世話になるカレンと申します。宜しくお願いします」

 私は、来てくれた可愛らしい女性に、丁寧に頭を下げてお礼と挨拶をする。


「チッ。ったくこっちだって忙しいんだよ。の娘か何だか知らないけどさーー、アンタ今日の朝礼に間に合わなかったんだって? さっき侍女の方から聞いたけどさぁいい度胸してるよねぇ? 舐めてんのかい? この仕事を?」


 先程の可愛らしく優しい雰囲気とは全く違う女性の態度に、私は少し驚いたが、理由は何であれ遅刻した私が悪い為、私は素直に謝った。


「すいません。仕事を舐めるなどはそんなつもりは全くないですが、遅れてしまったことは本当に申し訳なく思ってます。一生懸命働きますから本当にすいませんでした」

 そう言って私は彼女に深く頭を下げて謝った。

 忙しいのにわざわざ来てくれたんですものね。感謝しなくては。


「あ、ああ。こっちだ。ついて来な」

 そう言って彼女はズンズンと歩いて行き、洗濯場の直ぐ横にある小部屋に案内してくれた。


「ここのシーツを全部洗濯するんだよ! 月、水、金の三日はシーツを洗濯。それ以外にも、ここに溜ってる汚れ物は洗濯係が全部やるんだよ! じゃぁさっさと始めな!」


「ありがとうございます。ところで、洗濯し終わった物は何処に干せばいいんでしょうか?」


「ったく。世話の焼けるお嬢さんだなぁ。だから嫌いなんだよ。侍女っつのがよ。ほら、あそこ、あそこが干場だ。じゃあな!」


「はい! 本当にありがとうございました。助かりました」

 私は、親切に教えてくれた彼女が見えなくなるまで頭を下げて、お礼を言った。



「よっし頑張らないと! 私の初仕事だわ」







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