第10話 探索者ランク、そして昇格……?
ダンジョン市場でお金を得てから、さらに一週間。
朝早くから、今度は最寄りの『探索者協会』に来ていた。
前に家に残しておいた分も合わせ、成果である魔石を
「よし、いくぞ」
俺たち探索者にとって、ダンジョン発掘物には二つの活用の仕方がある。
一つはもちろん『換金』。
この前のダンジョン市場のように、商人だったり、
これが日々の稼ぎとなる。
そして、もう一つが『協会への納品』だ。
こちらは“魔石限定”だが、協会に納品することで『ランクポイント』をもらえる。
ランクポイントを溜めることで、探索者ランクが上がる。
そうして探索者ランクが上がっていけば、さらに上のランクのダンジョンに参加することを協会に認めてもらえるわけだ。
ダンジョンを管理するのは、協会の仕事だからな。
探索者がダンジョンに参加するには、事前に協会へ申請をする必要があるのだ。
それは、強さの見合わない無茶な探索を事前に防ぐ目的も含まれている。
と同時に協会の利益を守る為でもあるが、互いにwin-winの関係には変わりない。
探索者協会のおかげで、探索者カードさえあれば、世界中どこでもスムーズに探索が出来るからな。
俺みたいな落ちこぼれが報酬を得られるのも、協会が管理をしているから。
探索者は、等しく協会に感謝をするべきだろう。
「明星様~」
「はーい」
声が掛かり、席を離れて協会の受付嬢の元へと歩いていく。
現在は朝の九時、朝も早い(ユヅネ基準)のでユヅネは家でおねんね中。
「今回はどのような用件で?」
「こちらの納品です」
自分でも自覚するほどのドヤ顔に、お姉さんは不思議な顔を見せつつも、俺の出した大きな袋に目を落とす。
「えーと……って、えええ!」
普段は、たまに来たと思えばなけなしの魔石ばかり納品している俺だ。
今回も期待していなかったのだろう。
そんなお姉さんの予想を大きく裏切るように出したのは、数えきれない程のF~Dランクの魔石。
ダンジョンはF~Sランクに区分けされているが、そのランク帯以上の発掘物も出る事がある。
ダンジョンランクが上がるほど、高ランク発掘物の
レアドロップってやつだな。
「で、では、納品される魔石を精算いたします……」
「お願いします」
探索者ランクが上がれば協会からはもちろん、色んな企業や政府などからの待遇も良くなり、様々な恩恵が得られる。
現在、俺はFランク。
F~Dランクの魔石を大量に納品したらどうなるか。
「明星様。今回の納品により……Dランク
Eランクを抜かして一気にDランク!?
「やったー! 念願のDランクだ!」
Dランクに上がれば、ギルド加入が認められる。
ギルドとは探索者の集団であり、組織のことだ。
現代のこのダンジョン社会において、ギルドは大きな力を持っている。
有名ギルドに入れば、企業によるスポンサーや国からの支援など、とにかく得られるものが多い。
どのギルドに入るかは探索者人生を大きく左右することであり、俺はようやくそのスタートラインに立てたのだ。
「それでDランク昇格……ってあれ、仮昇格って言いました?」
「そうなのです。ポイントは規定に満たされたのですが、Dランクからはそれに見合う実力を持っているか、判定を行うシステムとなっているのです」
「なるほど」
「そこで認められれば、明星様は晴れて正式にDランク昇格となります」
仮昇格というシステム、全く知らなかったな。
昇格なんて夢物語だと思っていたのだから、それもそうか。
「それで、俺は一体何をすれば良いんでしょう?」
「それはですね──」
説明を聞き、俺は早速Dランクに本昇格するべく家に帰って準備を進めた。
★
協会へ納品をし、Dランク仮昇格を果たした次の日。
「まじで来やがったぜ。あの荷物持ち君」
「ほんとだ。まぐれで仮昇格なんてしちゃってよ」
「ぷぷー、かわいそう」
「……」
なんでこんな事に。
俺を見つけ次第に
あいつらも、今日同じ昇格試験を受けるらしい。
「おい、あまり仲間をからかうんじゃないぞ」
「!」
そんなチンピラ達に強く言い放ったのは、今回のパーティーリーダー『佐藤さん』。
佐藤さんはチンピラ達を軽く制した後、こちらに歩いて来る。
「君が明星君だね。今日はよろしく」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
おれは深々と頭を下げ、求められた握手を返す。
そして……まあ、気になることだろう。
「それで……君の後ろのお嬢ちゃんは?」
「わたしはユヅネです! よろしくお願いいたします!」
ユヅネは自分の事を聞かれたかと思うと、俺の後ろからぴょん、と飛び出して元気に挨拶をした。
「いや、そうではなくてね……」
明らかに困っている。
そりゃそうだ。
「僕の連れです。探索付随者を含む、という話が通ってませんでしたか?」
「あ、あー。なるほど、お嬢ちゃんがそうなのか。これは悪かった。てっきり……いや、なんでもない。お嬢ちゃんも今日はよろしく」
二十歳と申告してあるが、ユヅネは小さい上に童顔だからな。
子どもに見えたのだろう。
……だから背伸びでアピールしても無駄だぞ、ユヅネ。
「ふう」
他の探索者とも軽い挨拶をした後、俺はベンチに腰かけながらちらっとメンバーを再確認した。
俺(とユヅネ)、チンピラ達三人に、佐藤さん、あとは二人の先輩探索者か。
「また厄介な」
昨日、Dランクに
本昇格するためには、実際にそのランクのダンジョンにパーティーの一員として潜り、リーダーに実力が見合うかどうかを判断してもらう必要があるそうだ。
つまり、今回リーダーを務める佐藤さんに無事認められ、佐藤さんが協会に合格を出すことで、俺は晴れて正式にDランク本昇格、というわけだ。
不安がないわけではないが、もう前までの俺とは違う。
「時間だな」
「はい!」
佐藤さんの掛け声に反応して、俺はベンチから立ち上がる。
そうして俺は、いつものように大きなリュックを持ち上げるのだ。
大きなリュック。
ついこの間までは、みんなの荷物持ち用として背負っていたものだが、今となっては多大な報酬を持ち帰るためのもの。
もちろん戦闘中は隅に置いておくけどね。
前までとはまるで持つ意味が違う。
そう考えると感慨深いな。
「分かっていると思うが、今回は昇格試験を兼ねた探索者が四名参加している。いつも以上に慎重にダンジョン探索をしていく。私の指示がない行動は慎んで欲しい」
「「「はい!」」」
「「「……」」」
佐藤さんの話に、俺や先輩探索者は返事をする中、チンピラ達は返事すらしない。
いつもは自分たちが主役であるがゆえ、指示されるのは面白くないのだろう。
「では、入るぞ」
先頭をきってリフトに突入していった佐藤さんの後に続き、他のメンバーもダンジョンに足を踏み入れていく。
続いて俺も入ろうとするが、前に立つチンピラ共が進んでくれない。
「あ、あの……?」
「ふっ」
一瞬ニヤついた顔を見せて、チンピラ共はリフトに入っていく。
あいつらの視線が、ユヅネの方を向いていたのは気のせいだろうか……。
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