後日談7 ゴブリンの洞窟

「なんかいるわね」


 神社の裏から森の奥に入り、例の洞穴に行ってみたところ。周囲になにやら動く姿がある。身長1mぐらいの人型。緑の肌。洞窟を出入りしている。


「ゴブリンじゃん」

「そう見えますね」

「どうするかな……」


 大学生が周囲をきょろきょろと見回して、木の枝を集めてきた。


「メイ、これを武器にしてくれない?」

「何を作ればいいの?」

「えっと、こん棒かな」

「メイスも!」


 女子高生が横から入ってきた。


「おっけーですよ。形状加工!」

エルフが木の枝を持って精神を集中すると、木の枝の形が変わる。


「はい、こっちがこん棒でこっちがメイス」

メイスのほうが先が膨らんでいる。あまり変わらないけど。


「ありがとうメイちゃん」

「サンキューメイ!それじゃ覚醒!あ、シャリ待って」


 女子高生が木製のメイスを持ってゴブリンに突撃していくのを、大学生の兄が慌てて追いかけている。


「すごいひさしぶり!」


 女子高生の振り回すメイスが端からゴブリンを粉砕する。残った死体はこの世界でも黒い煙となって消えた。


「ゴブリン退治なつかしいね。おにいちゃん」

二人とも見た目は違うけれど、ちょっと昔を思い出す。確かになつかしいかもしれない。


 兄妹があらかたのゴブリンを叩きのめした時、洞穴から少し大きな人型の姿が現れてきた。


「おにいちゃん、あれ見て!」

「なんとホブゴブリン!」

「懐かしい!いくよー」


 女子高生がメイスを振りかざして突撃して行った。


「シャリ、まだレベル1なんだから無理するなって!」


 またもや兄が慌てて追いかけるが、先に行く妹には追い付けない。


「どうしよう、えい、テイム!止まれ!」


 兄のテイムでホブゴブリンの動きが止まったところに女子高生が殴り掛かった。そのままメイスでボコボコに殴り倒す。


 ホブゴブリンは黒い煙になって消えた。


「レベルが上がったよおにいちゃん!」


 メイスを持った女子高生が兄に向って大きな声で叫んだ。


「やったじゃん」

「そうだ、変身!」


 女子高生はブロンドで金色の目をした小柄な少女に変身する。そのまま兄に抱きついた。


「おにいちゃん!」

「この姿のシャリ、ひさしぶりだな」


 兄妹が盛り上がっているところに、辺りの様子を見て回っていたあかり(29)が戻ってきた。


「他に魔物はいなそうだけど、どころでこの洞穴はどうするの?」

「そんな事聞かれてもだけど、放っておくわけにもいかなそうだよな」


 洞窟を眺めながら兄が答える。まさか本当にダンジョンがあるとは。といっても、武器も持たずに入っていくわけにもいかない。


「っていうか、なんでワイバーンやゴブリンが出てきたのかしら」

「偶然にしてはタイミングよすぎですよね。たぶん私たちと関係あるんだと思います」


 メイ(エルフ)が話しに入ってきた。


「私たちって誰の事?」

「私と王女ですね。こっちに来るために世界の構造に負荷をかけて脆弱性を作り出してたときに、トンネル効果でいろいろ繋がっちゃったみたいですね。私たちが戻れば塞がるんじゃないかと思いますけど」


 そういうものなのか。よくわからないけど。でもゴブリンは今もダンジョンから出てこようとちらほら動いている。


「それまでどうしよう」

「どうにかして穴をふさげないですかね」

「はーい、はいはいはい」


 あかり(29)が手を上げて割り込んできた。


「お兄ちゃん、私のレベルも上げてよ!」


・・


 考えがあるということで、あかりのレベルを上げる事になった。


「お兄ちゃんなのに10歳若いとか不思議よね」

あかり(29)が感慨深げだ。


「そういえばエルフの時って何歳だったの」

「それは聞いちゃだめよ」


 前に立つあかりの頭の後ろに右手を回して押さえる。


「お兄ちゃん、キスするときいつもそうやるよね」

「そうだったかな」


 年上の妹の唇に、自分の唇を合わせて、せーの。


レベル接続コンタクト!』


 あかりとの間にレベル回路が形成される。


レベル譲渡トランスファー!』


・・


「やった、レベル上がった!」

「で、どうするの?」

「こうするのよ!」


 あかりはニヤッと笑うと呪文の詠唱を始めた。長い長い呪文……


「なんかヤバい予感」

「逃げた方がいいような」

「サモン・メテオ!」


「やっぱりやばいやつだった」

「早く離れましょう」

「おにいちゃん、流れ星!」


 みんなで神社の裏から走って逃げる途中、空から流星が一つ落ちてきた。


 ドガーーーーーン


 衝撃波であたりの木々が揺れた後、隕石の落ちた衝撃音が富士山麓に響く。


「なんでそういう目立つことするわけ?」

「でも洞穴も埋まったわよ」

「おにいちゃん、人が来るよ」

「車に戻ろう!」


 爆風で飛んできた土ぼこりをかぶった車に乗り込んで走り出す。上空にやってきた自衛隊のヘリを見上げながらあかりが言う。


「ちょっと目立っちゃったかしら」

「お願いだからさっさと逃げて」


・・


フィン:レベル1(down)

・恩恵:レベル判定、レベル移譲、気配察知、槍使い、投擲、格闘、縮地、精神耐性、スタミナ向上、ロケート、手斧使い、スコップ、庇う、耐久力向上、罠スキル、炎、クリーン、テイム(妖精)、言語理解、耐熱、隠ぺい、盾術、力持ち、覚醒、突撃、予知、解錠、反射、恩恵奪取、メッセージ、ライト、騎乗、スイッチ、疾走、跳躍、水、氷、毒無効、毒消し、巨大化、縮小化、風、土、クリティカルヒット、環境耐性、タイムストップ、召喚、レベル預かり、恩恵譲渡、料理、こん棒


シャリ:レベル1(up)

・恩恵:癒し(フィンに効果2倍)、プロテクション(フィンに効果時間2倍)、攻撃力付与、メイス使い、リワインド、状態異常耐性、催眠術、盾術、完全回復、変身、力場障壁、ビジョン、加速(new)


あかり:レベル1(up)

・恩恵:鑑定、初級攻撃魔法、中級攻撃魔法、隠密、耐寒、マッピング、詠唱破棄、空間転移、アカシック・アクセス、エレベーター、転送ゲート、上級攻撃魔法、アンチエイジング(new)



次回は最終回です。更新は12/16(土) 14:00頃


~~~

カクヨムコン9には作者新作の妹ラブコメを公開中です。こちらもぜひどうぞ!


双子の義妹のどちらかがベッドにもぐりこんでくる

https://kakuyomu.jp/works/16817330667406755788

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る