137 ヨルムンガルド

 ガツン


 力場障壁バリアーの中にいるのに音がした。

「なんだ?」


 ガツン。ガリガリガリガリ


 もう一度、力場障壁バリアーを叩き、ひっかくような音。

 力場障壁バリアーの外は爆発の煙が徐々に落ち着いている。視界が徐々に通り……


 僕らが目にしたのは、力場障壁バリアーの外から僕らを見つめる巨大な眼だった。


 そしてまたヨルムンガルドが力場障壁バリアーに嚙みつく。力場障壁バリアーの中に響く音。


「壊れないよねこれ?」


 ピシッ


力場障壁バリアーにヒビが!」

「まじで!?」

「どうしましょう」

動揺する僕ら。


「大丈夫。おにいちゃんはシャリが守るから」

「あいつはどうする?」

「シャリが倒す!」

「わかった」

シャリの頭をなでる。


「一緒に倒そう!」

「うん。おにいちゃん」


・・


 あかりとメイが転移魔法で力場障壁バリアー内から逃げる。僕とシャリは二人でヨルムンガルドに向かい合う。


「攻撃力付加!」

「覚醒!」

「行くよー!」

シャリが力場障壁バリアーを解除し、同時にミョルニルを巨大蛇の眼に向かって投擲した。トールのハンマーは雷となってヨルムンガルドを撃つ。


 ドグァーン


 巨大な雷鳴のような音がとどろく。巨大蛇は怒ったようにこっちに向いて口を開き……


『縮地!』


 僕らのいたところに毒の嵐が吹き荒れる。その時にはすでにヨルムンガルドの頭の上に移動済だ。


 あたりには爆発の惨状が広がっていた。灌木がなぎ倒され、クレーターが3つできている。ヨルムンガルドも千切れてこそいないものの大きなダメージを受けて体液が流れ出していて、その体液が触れた地面からは黒い瘴気が地を這うように広がっているのが見える。


「もう一回!」

手に戻ってきたミョルニルをシャリが足元の巨大蛇に叩きつけると雷鳴がとどろく。

「スイッチ!」

タイミングを合わせてグングニールをおもいっきり足元に突き刺した。


 ヨルムンガルドはその巨体をくねらせる。頭の上に載っていた僕たちは放り出される。


「もう一回!」

シャリが空中でトールハンマーを投擲。そして。

「スイッチ!」

僕も思いっきりグングニールを投擲した。


 空中でシャリを抱きしめるとマントを開いて羽ばたかせる。二人の重さでは飛ぶことはできないが降下速度を緩めての着陸ぐらいは問題ない。


 僕とシャリがヨルムンガルドの背中に降り立つと二人の武器が手に戻ってきた。さすがはレジェンダリーウェポン。


「行くか!」

「うん。おにいちゃん!」


「巨大化!」


 巨人サイズになったシャリが加速して巨大蛇の背を走り、その頭に殴りかかった。速度を生かした連撃。そしてシャリの最後の一振りに合わせて。


「スイッチで縮地で突撃!」


 巨大化した僕がヨルムンガルドの頭をグングニールで貫いた。


 クリティカルヒット!


 ヨルムンガルドは動かなくなり、そして黒い煙となって消える。体の奥から湧き上がる感触。レベルアップだ!しかも大きいぞ。さすがヨルムンガルド、っていうか、しまった恩恵考えてなかった。ちょっと待ってー!


・・


「宝箱よ!」

「あるんだ」


 宝箱には文字が書いてある。ルーン文字だが言語理解の恩恵があるから読める。


「汝の欲するものは何か?」


 えっとなんだろう。


 神に会いたいっていうのはあるんだけど、握手券じゃあるまいしどうしよう。シャリを連れて日本に帰る方法とか?こんな時は『予知』の恩恵を働かせて、えい!


 宝箱を開けると、そこにはスコップが入っていた。宝箱にトラップはなかった。


・・


「いつの間にか日が暮れちゃいましたね」

「北欧神話だとラグナロック最終戦争の後にあたらしい世界が生まれるのよね」


「それじゃ帰ろうか。あかりの転送ゲートってまだ使える?」

「おにいちゃん、揺れてる」

「地震?」

地の底から地響きのような音が聞こえる。


「悠長にやってる場合じゃなさそう」

「エレベーター!」


・・


 竜の谷の巨大縦穴から出てきた。


 上空をワイバーンがギャーギャー言いながら狂ったように飛びかっている。様子がおかしい。


「まだ地面も揺れてますね」

地鳴りは止まらない。むしろ大きくなってきた。


「逃げよう。シャリ、ワイバーンになって!」

三人は縮小化されてシャリにぶら下がる。


「とにかく谷から退避!」


 全速で逃げるワイバーンから振り返ると、さっきまでいた縦穴から火山のように煙が噴き上がっている。そして煙の中から巨大な角が突き出しているのが見えた。


「なんか飛んできた!」

火山弾のようなものが煙の尾を引いて飛んできている。


「シャリ、右!」

飛んできた何かが通過する。とがっていて刺のように見える。

「次、左!」

次々と飛んでくる。


 谷を出ると攻撃は届かなくなった。とりあえず王女の別荘に向かう。


――


フィン:レベル7(2up)(人間:転生者)

・恩恵:レベル判定、レベル移譲、気配察知、槍使い、投擲、格闘、縮地、精神耐性、スタミナ向上、ロケート、手斧使い、スコップ、庇う、耐久力向上、罠スキル、炎、クリーン、テイム(妖精)、言語理解、耐熱、隠ぺい、盾術、力持ち、覚醒、突撃、予知、解錠、反射、恩恵奪取、メッセージ、ライト、騎乗、スイッチ、疾走、跳躍、水、氷、毒無効、毒消し、巨大化、縮小化、風、土、クリティカルヒット、環境耐性(new)、タイムストップ(new)


シャリ:レベル9(人間)

・恩恵:癒し(フィンに効果2倍)、プロテクション(フィンに効果時間2倍)、攻撃力付与、メイス使い、リワインド、状態異常耐性、催眠術、盾術、完全回復、変身、力場障壁、ビジョン


あかり:レベル9(エルフ:転生者)

・恩恵:鑑定、初級攻撃魔法、中級攻撃魔法、隠密、耐寒、マッピング、詠唱破棄、空間転移、アカシック・アクセス、エレベーター、転送ゲート


メイ:レベル9(人間:転生者)

・恩恵:衣装製作、アイテム化、投げナイフ/ダーツ使い、エンチャント、形状加工、紙の神、上級錬金術、アイテム合成、物体複写


シャルロット:レベル7(人間)

・恩恵:レベルブースト、[?]、[?]、[?]、レベル預かり、[?]、[?]


――

次回より新章


挿絵はおにいちゃんを守るシャリちゃん

https://kakuyomu.jp/users/yamamoriyamori/news/16817330654266080216

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