135 狼
「ボスは何だろうね」
「北欧神話ベースみたいだから巨人か狼かな」
あかりが気を取り直して答える。
メイがアイテムボックスから迫撃砲をいくつも取り出していそいそと扉の前にセットする。
「準備いいですよ!」
「行こう、おにいちゃん!」
「それじゃ行こうか!」
「ボス部屋よ!」
攻撃力付加やら覚醒やらバフを盛り付けて、シャリとメイが扉を蹴り開ける。
冷たい風がボス部屋から吹き出してきた。屋外と言ってもいいぐらいの大きさの部屋。なぜか雪が降っている。そして狼の遠吠えが聞こえる。
「狼だった」
雪降る奥の方から巨大な影が近づいて来る。動物だが高さはさっきの狼のさらに倍はありそう。そしてそのまわりに子分であろう小さい狼の姿が幾つも。スケール感が狂うが小さい方もさっきの狼と同じサイズだ。高さが人よりもある。
「となるとフェンリルかな」
「やっぱり!?」
メイと一緒に巨大狼に迫撃砲群の狙いをつける。
「攻撃開始!」
メイの迫撃砲弾を撃ち込んだところにシャリがミョルニルを放り込む。さらに。
「マジックストーム!」
あかりが詠唱破棄で攻撃魔法を唱えた。魔法の刃が幾つも爆発地点に煌めく。そこに砲弾が遅れて着弾。すべてが爆発に覆い隠されてよく見えなくなる。
「やったか?」
「ウォーン、ォーン、ォーン」
煙の中から狼の遠吠えが聞こえてくる。爆炎の中から大きな姿が現れた。
「来る!」
「
シャリが
「冷気ブレスかな」
「切れたら反撃するわよ」
冷気ブレスがやんだようだ。シャリがメイスで
ボス部屋の奥に巨大な狼の姿が一体。
「えぃ!」
メイがダーツを遠投した。そこにあかりがマジックボムを詠唱破棄でキャスト。白い爆発の光が広がり、遅れてダーツから実体化した爆薬の爆炎が巨大な狼を包む。衝撃波の後、爆風が部屋を渦巻く。
僕は槍を最大まで伸ばして構えた。色々な武器を合成した槍は頼もしい黒光りを放っている。そして今度は。
「巨大化!」
僕が巨人のサイズまで大きくなると、爆炎の中から巨大な狼の姿が見えてきた。シャリがトールハンマーを構える。
「行くよ、おにいちゃん!」
シャリがミョルニルを狼にぶん投げた。稲妻となったハンマーが巨大な狼にヒット。雷鳴がとどろく。そこにタイミングを合わせて、せーの。
「スイッチ!そして縮地で突撃!」
僕の巨大化した槍が狼の口から脳を貫通した。
「クリティカルヒット!」
巨大なオオカミが煙となってダンジョンに消える。
『さすがにレベルは上がらなかったか』
ちょっと狙ってたんだけど。
「宝箱よ!」
やっぱりあるものらしい。トラップを解除して解錠。今回の箱は細長い。
「槍だ!」
これはひょっとしてひょっとします?あかりの鑑定を待つ。
「アカシック・アクセス!」
どうだ!期待して待つ。
「レジェンダリーウェポンね。名称はグングニル」
ついに来た。これは全国の厨二病の夢!
・・
「ところでグングニールを合成素材にしていいもんかな?」
「草薙剣も溶かしちゃったんだしいいんじゃない?」
「いやあの時は剣を使う人がいなかったからなので」
「ていうか、そもそもの草薙剣は壇ノ浦で……」
「まあいいじゃんもう」
結局、グングニールは破壊不可能属性があるので素材にできないということがわかり、グングニールをベースにして今まで使っていた槍を合成することにした。うまく僕が使っていた槍の伸び縮み能力が移ってくれるといいんだけど。
「合成!」
結局、伸縮能力はうまく継承された。草薙剣っぽさもちょっと残ってるみたい。かなりヤバい感じの仕上がりになった。
・・
ところで、ここはダンジョンなので当然次の階に行く階段があった。
「フェンリルウルフってオーディンを飲み込んじゃうんだよね確か」
「それにしては弱かったわね」
「それはダンジョンだし」
「じゃあ、次はなんだ?」
わいわい言いながら階段を下りると、そこは平野だった。たそがれ時の夕日。
外に出て見上げると天空まで届くような巨大な木が一本そびえている。僕らはその巨大な木の洞から出てきたようだ。木の直径も数百メートルはありそう。
「世界樹イグドラシル?」
「なんか中二病っぽい響きね」
「それはさすがに北欧神話に悪いのでは」
で、僕たちはどっちに行けばいいんだ。
「僕たちは竜を探してるんだよね」
「北欧神話に竜ってありましたっけ。ヨルムンガルドは蛇ですよね」
「神話だから竜も蛇も一緒なんじゃない?」
まあそうかも。ていうか、メイも北欧神話は知ってるんだな。
「ところで、僕たちはどっちに行けばいいんだろう?」
「ヨルムンガルドだとしたら世界をぐるっと取り巻いているはずですよね」
「ここはこの階の真ん中みたいよ」
周りを見渡したあかりがいう。
「それだとどっちも同じ距離ですね」
そうなんだよね。
「とりあえず太陽のほうに行ってみようか」
――
挿絵は夕日に向かうあかりちゃん
https://kakuyomu.jp/users/yamamoriyamori/news/16817330654182076649
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます