第三部第八章 神々の黄昏

134 ハンマー

「しっかし武器がいっぱいあるなー」

武器庫なのか博物館みたいなものなのか。一応、鍵は掛かっていたが開錠で開けることができた。種類ごとに分類して置いてみる。


「えーと、剣が大体30本、槍が20本、メイスやフレイルが20本、短剣とかナイフが120以上。手裏剣みたいなのとかもあるぞ。これ全部魔法の品なの?」

「鑑定だとそうね」


 そして、一つだけ別に陳列されているモノがあった。

「ハンマー?」


 ハンマーといっても武器サイズだ。いわゆるウォーハンマー。頭の小さいツルハシというか、柄が長めなのでバランス的にはメイスに近い。透明なケースの中だけど解錠を掛けたら開いた。このケースも材質はガラスのようだけどさっきの戦いで割れてないんだから違うんだろうな。


「それで、このハンマーってなんか特別なの?」

あかりが鑑定したところ強力な魔法の品ということしかわからなかった。


「ケースの下に何か書いてあるわね」

僕が言語理解の恩恵を発動させて読む。

『非常の際はこれを使え』

なんだそれ。


「こうなったら無理やり、アカシック・アクセス!」

あかりがこのハンマーの由来を探り出した。


「レジェンダリーウェポンで名称ミョルニルだって」

「トールハンマーじゃん!なんでここに?」

「それをいったら草薙剣だって」

「まあそうだけど」


「これってメイスのスキルで使えるかな?」

シャリが振ってみる。

「近いけどちょっと違うかな。もうちょっと長いといいんだけど」

「メイスを合成すれば近い形にできますよ」

「なるほど」

僕の槍も伸ばしたときにちょっとなぎなた・・・・っぽくなるんだよな。


「それじゃいまシャリが使ってるメイスを混ぜてみよう」


 合成!


「ちょっとメイスっぽくなった?」

「そこのメイスをもっと混ぜてみよう」


 武器庫の武器を次々と持ってきてはメイが合成する。


 合成、合成、合成。


「いい感じになったんじゃない?」

シャリがぶんぶん振り回す。


「これならメイスの恩恵で使えそう」

「よし、じゃあ残りのメイスやフレイルも混ぜちゃえ」


 ということで、メイスっぽいミョルニルが完成。当然シャリが使う。


「こうなったら他の武器も混ぜてみるか」


・・


 僕の槍にはそこにあった槍全部と剣の半分を素材として合成した。結果、僕の槍はやたらに光るようになった。蛍光灯のような光じゃなくて吸い込まれるような黒光り。

「なんかヤバげじゃない?」


 あかりも使っている短剣に残りの剣とか短剣を素材に混ぜ込む。メイのチャクラムにもナイフや短剣や手裏剣を素材として合成してみた。


 あかりが一言。

「なんかソシャゲみたいね」

「やっぱり思った!?」



 通路を進むと行き止まりだった。


「ここ開くわよ」

マッピングしていたあかりが言う。

「解錠!」

壁がゆっくりと開くと、その先は岩壁だった。天井がぼんやり光っている。


「ダンジョンだ!」

「ていうことは、魔物が出る?」

「早速来たわよ」

シャリの質問にあかりが答える。


 ダンジョンの奥から大きな犬のような……


「狼かな」

「大きいわね。高さ2mぐらいありそう」


 巨大な狼が飛びかかって来る。シャリがミョルニルをぶん投げた。ミョルニルは雷となって狼にヒット。そしてシャリの手に帰ってくる。


「やっぱりトールハンマーだよ!」

狼は一撃で消し飛んでいる。ちょっと興奮。


「狼の来た方向に行ってみよう」

という事でダンジョンを歩く。通路の幅が20mぐらいとやたらに広いし天井も同じぐらいある。


「何か来たわよ」

気配察知に反応する前に、近づいて来る影が見えた。三体ほど。まだ遠いのに距離感が狂う。

「巨人?」

「流れ的にはそうね」

あかりが呪文の詠唱を始める。


ᚠᚱᚮᛘ ᛒᛂᛐᚥᛂᛂᚿ ᛐᚼᛂ ᛚᛁᚵᚼᛐ ᛆᚿᛑ ᛐᚼᛂ ᛑᛆᚱᚴᚿᛂᛋᛋ, ᚠᚱᚮᛘ ᛐᚼᛂ ᚡᚮᛁᛑ ᚮᚠ ᛐᚼᛂ ᚢᚿᛁᚡᛂᚱᛋᛂ, ᛒᛂᛐᚥᛂᛂᚿ ᛐᚼᛂ ᛐᛁᛘᛂ ᛆᚿᛑ ᛐᚼᛂ ᛋᛔᛆᛍᛂ, ᛐᚼᛂ ᚠᛁᚠᛐᚼ ᚵᚱᛂᛆᛐ ᛔᚮᚥᛂᚱ ᛋᛔᚱᛁᚿᚵ ᚢᛔ ᛐᚮ ᛐᚼᛂ ᛔᛚᛆᛍᛂ ᚥᚼᛂᚱᛂ ᛁ ᛍᚮᛘᛘᛆᚿᛑ.・・



 最初の攻撃はシャリ。ミョルニルをぶん投げると雷となって飛んでいく。遅れてメイがチャクラムを投げる。


 巨人がはっきりと視界に入ってきたところにミョルニルが着弾。雷鳴がとどろいて巨人は右往左往。すると巨人が連れていた狼が手を離れてこっちに走って来る。さっきと同じくでかい。


 あかりのマジックボムが発動した。純粋なエネルギーが白い光となって広がり、右往左往する巨人を飲み込む。


 一方、狼が迫ってきた。槍を伸ばして待つ。狼が跳ぶところに合わせ、口の中を狙って構える。


「そこだ!」


 槍は狼の口の中から刺さると脳に達した。クリティカルヒット!

 僕はちょっと父さんを思い出した。


・・


  レベル9となったあかりの魔法とシャリのハンマー攻撃を受けて巨人のうち二体は既に倒れた。もう一体は戦意を喪失して逃げようとしている。そこにメイのチャクラムがヒットした。巨人の首が落ちる。


「みんなナイス!」


 ドロップアイテムはなかった。

 そして通路の向こうに巨大な両開きの扉。あかりが扉の前に急いで向かう。


「ボス部屋だよおにいちゃん」


 ポーズを取ろうとしたあかりが地面につまづいて不満げにシャリを見る。


――

挿絵は新しい武器を手にしたシャリちゃん

https://kakuyomu.jp/users/yamamoriyamori/news/16817330654138826417

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