133 ガーディアン

 ダンジョンと言っても、通路もなければ扉もない。あるのはただデカい穴。そこを降りていく。

「こういうアニメありましたよね」

「やめてもらえる?」


 やがて地面が見えてきた。なぜか空から光が来ている。やっぱりダンジョンだからかな。


 地面には木が生い茂っている。

「どこに降りようか」

「あそこに何かあるわ」

あかりが指したところに石が見えていた。遺跡っぽい感じ。

「シャリ、あの遺跡に降りて!」


・・


 降りたはいいけどどうしようね。

「この遺跡はローヌのものね」

あかりが言う。

「どこかに竜の手がかりが残ってないかな」

「おにいちゃん、ここに通路がある」

シャリが見つけたのはほとんど土に埋もれた通路。遺跡の中に通じていそう。


「これは土の恩恵の出番だね」

タイミング良すぎだけど多分予知の恩恵が働いたんだろう。


 しばらく土を掘ると空間に出た。真っ暗なのでライトの恩恵を使って僕らのちょっと前に光源をぶら下げておく。


「何も出ないね」

「遺跡が古すぎるんじゃないかしら」

「ダンジョンなのにリポップしないんですかね」

「この通路は明かりが点いてないからダンジョン扱いじゃないのかも」

「そういうもの?」

「おにいちゃんなんかあるよ」


 通路が終わり、広間に通じていた。大きな体育館ほどもある広間。その真ん中に鎮座する大きな塊。


「あれは……」

鑑定を掛けたあかりが面倒臭そうにつぶやいた。

「ゴーレムかぁ」


 部屋の真ん中にある5メートルほどの高さのこんもりした塊。よく見ると下に車輪が付いている。一言で言うと山車だ。あるいは戦車。ゴーレムって事はあれが動くのか……

 そういえば地元のダンジョンにあったアイアンゴーレムはあかりが倒したんだよね。あかりもあちこち焦げてたけど。


「ゴーレムって電池切れないの?」

「半永久的なのよ」

「ふーん、ところでゴーレムの奥になんかあるね」

部屋の奥、ガラスケースのようなものの中にいろいろ並んでいる。見た感じ槍とか剣とか。

「どうやらここは武器庫みたいですね」

「じゃあ警備ロボットかな?」

「どうするおにいちゃん?」

「もちろん」

僕は答える。

「倒して武器をいただく」


「そっか、ジャガーノートだ」

「なにそれ?」

「ゴーレムの名前よ。思い出したの」

「ちなみに弱点は?」

「ゴーレムの一種だからコアが弱点だけど……」

見た感じわからない。


「ま、やってみよう!」


 バフてんこ盛りで部屋に突入した。こちらを感知したのか、鎮座していた山車に目のようなものが光る。目と言っても全周に8個あるけど。


「マジックボルト!」

あかりが先制攻撃をかけるが、表面の装甲に弾かれている感じがする。そこに指輪で加速したシャリが突っ込む。


「カーン、カーン、カーン、カーン」

シャリのメイスが弾かれる。ダメージを与えている様子がない。


 プシュー


 ジャガーノートの下側面から蒸気が噴き出した。戦車並みの巨大な質量のそれはゆっくりと動き出す。とりあえずやってみるか。槍を伸ばして。


『突撃!』

カキーン


うわー。全然だめ。


 そうしているとジャガーノートが突撃してきた。轢かれたらひとたまりもない。跳躍の恩恵でかわす。


 ズゴゴゴゴゴ


 そのまま壁に突っ込むかと思っていたジャガーノートだが、ドリフトして戻ってきた。思ったより小回りが効くなこいつ。


 前にいると危ないので側面に回り込んでみる


 ギュィーン


 側面からドリルが三本生えてきて高速回転を始めた。床ギリギリでドリルをかわしてシャリに合流する。


「おにいちゃん、大丈夫?」

「なんなのこれ?やばくない?」


 通り過ぎたジャガーノートが反転すると前面の装甲が開いた。何と顔がある。そしてそいつは口を開くとその奥から白い光が……


『縮地!』

シャリを掴んでジャガーノートの上に縮地で移動した。今まで僕らがいたところにジャガーノートの口から強烈なエネルギーが発射された。あかりの魔法を強くしたような白い光の束が辺りを薙ぎ倒す。


「シャリ、しがみついて!」

シャリと二人でジャガーノートの天井を攻撃する。前面装甲よりは弱そうだ。少しずつダメージが入っている感じがある。


 突然、僕らが乗ったジャガーノートは猛スピードでグルグル回り出した。僕らを振り落とそうとしているんだろう。必死にしがみつきながら攻撃。するとジャガーノートが、跳んだ!


「えー!」

天井との間で潰されそうになり慌てて離れる。ジャガーノートは天井にぶつかると轟音を立てて床に落下した。さすがの重量に床面が破壊され波打つ。


「見えた!」

あかりが叫んだ。


「何が?」

「コアよ。下の面にある」


「じゃあもう一回!」


 押し潰すように迫るジャガーノートの上に飛び乗った。槍でザクザクと攻撃する。ジャガーノートはやはり振り落とそうと回転するので回転軸に体を動かして耐える。するとまた天井に擦り付けようとジャンプしてきた。


「そこ!」

 

 メイがジャガーノートの予想着地地点にダーツを投げた。アイテム化が切れて爆弾の樽が実体化する。


「フィン、こっちに!」

『縮地!』

みんなのところに移動。そして。

力場障壁バリアー!」

シャリが力場障壁バリアーを展開。直後にジャガーノートが着地した。衝撃で爆弾が爆発。炎が辺りを包む。力場障壁バリアーで音は聞こえないが地面が揺れる。


 やがて爆発が収まって炎と煙が晴れてきた。


「ていうか、まだ動いてる!」

ジャガーノートはひっくり返ったまま脚をカチャカチャ動かしていた。飛び乗って、ヒビの入ったコア目がけて槍を突き刺す。動いていた脚が止まる。


 プシュー


 蒸気の漏れる音。ジャガーノートの目の光が消え、活動を停止した。体の奥から力が湧き上がる感覚。レベルアップだ!


――


フィン:レベル5(up)(人間:転生者)

・恩恵:レベル判定、レベル移譲、気配察知、槍使い、投擲、格闘、縮地、精神耐性、スタミナ向上、ロケート、手斧使い、スコップ、庇う、耐久力向上、罠スキル、炎、クリーン、テイム(妖精)、言語理解、耐熱、隠ぺい、盾術、力持ち、覚醒、突撃、予知、解錠、反射、恩恵奪取、メッセージ、ライト、騎乗、スイッチ、疾走、跳躍、水、氷、毒無効、毒消し、巨大化、縮小化、風、土、クリティカルヒット(new)


シャリ:レベル9(人間)

・恩恵:癒し(フィンに効果2倍)、プロテクション(フィンに効果時間2倍)、攻撃力付与、メイス使い、リワインド、状態異常耐性、催眠術、盾術、完全回復、変身、力場障壁、ビジョン


あかり:レベル9(エルフ:転生者)

・恩恵:鑑定、初級攻撃魔法、中級攻撃魔法、隠密、耐寒、マッピング、詠唱破棄、空間転移、アカシック・アクセス、エレベーター、転送ゲート


メイ:レベル9(人間:転生者)

・恩恵:衣装製作、アイテム化、投げナイフ/ダーツ使い、エンチャント、形状加工、紙の神、上級錬金術、アイテム合成、物体複写


シャルロット:レベル7(人間)

・恩恵:レベルブースト、[?]、[?]、[?]、レベル預かり、[?]、[?]


――

次回より新章


――

挿絵はシャリちゃんです

https://kakuyomu.jp/users/yamamoriyamori/news/16817330654096908310

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