126 外から来た蜘蛛
二階も虫だった。ただしカブトムシみたいな甲虫系なのでみんな全然平気だった。
どうしてカブトムシだと大丈夫なんだろう。
「こいつらやたらに硬いな」
僕の槍やシャリのメイスでもなかなかダメージが入らない。
「シャリ、下から跳ね上げるように攻撃して」
「うん、おにいちゃん!」
シャリが巨大なカブトムシの角をメイスで跳ね上げる。
「スイッチ!」
柔らかい腹の部分に槍を突き通すと、カブトムシは煙となって消えた。
「ナイス、シャリ!」
シャリと軽くハイタッチ。見た感じは元気になったみたいだ。
◇
「ボス部屋よ」
この流れだと巨大カブトムシだよな。
「おじゃましまーす」
僕とシャリで蹴り開けた。すると。
「みーんみんみんみーん」
「なんでセミなんだよ」
「うるさーい」
「あかりとりあえず魔法を」
「きこえなーい」
「みーんみんみんみーんみーんみんみんみーん」
あかりが攻撃魔法のマジックボムをぶっ放した。
シーン
『やったか?』
ボス部屋に入り込む。今の魔法で死んじゃったかな?
ぐらぐら。
「地震?」
床がひび割れた。ここの床は石じゃなくて土だ。そして床が割れると地面の下から巨大なハサミが。といっても蟹ではなく。
「クワガタ?」
ハサミだけで車ぐらいの大きさがある。このクワガタ10m以上あるぞ。ハサミを盾ではじき返す。すごい力だ。これに挟まれたら人間とか真っ二つになりそう。
「ガコーン、ガコーン」
シャリがメイスで殴る音が響く。なかなかダメージが通らない。恐ろしく固いのだ。
「シャリ、さっきみたいにスイッチ行くよ」
槍を伸ばして構える。シャリが加速してクワガタを連打する音が響く。
ガコーン、ガコーン、ガコ、ガコ、ガコ。クワが跳ね上がる。いまだ!
「スイッチ!」
『スイッチで縮地で突撃!』もちろん攻撃力付加もしてある。
シャリが跳ね上げた胸部の隙間に僕の槍が深々と突き刺さった。大穴がむき出しになる。
「あかり、あの穴に攻撃」
「マジックボルト!」
あかりの攻撃魔法がクワガタの体内を焼く。
巨大クワガタは黒い煙になって消えた。
「シャリ、あかり、ナイス!」
宝箱には日本の鎧が入っていた。兜にクワガタのような二本の角。
「日本っぽいのが出てきたね」
「魔法の品だけど、防御力向上がついてる。どうする?」
「シャリの胸当てに合成しよう」
メイが合成をする。シャリの胸当てが黒く光るようになった。漆塗りのような光沢。
◇
三階はバッタ。ジャンプで突然飛び掛かってくるのがびっくりするけど、冷静に対処できればどうということはない。
ボスは……
「なんでカマキリ?」
体高5mはありそうな巨大カマキリ。なぜか鎌が金属光沢をしている。
「こいつはヤバそうだな」
盾で慎重にカマキリの攻撃をかわしながら槍で突く。これ腕とか切れちゃうんじゃない?うっかりすると首とか。
・・
最終的にボスを倒したのはメイのチャクラムだった。首切り対決はメイの勝利。宝箱の罠を外して解錠する。
「鎌?違うか」
刃先だけみて鎌かと思ったけど、なぎなただ。ぞっとするような刃の光。
「魔法の品だからお兄ちゃんの槍に混ぜてみたら?」
「まじ?」
ちょっとドキドキするけど合成してもらった。鑑定結果としては槍の伸縮機能はそのままだけど鋭さが上がったとのこと。いいかも。もっと混ぜたくなってきたぞ。
◇
四階。蜘蛛のフロア。正念場の予感。
ダンジョンの壁そこら中が蜘蛛の糸だらけだ。壁にうっかり手を触れるとくっついてしまう。
「これって燃えるのかな?」
ちょっと火をつけてみたが、燃え広がることはないようだ。
『なんだろう?』
気配察知が何かを感知。前からも後ろからも、上からも。
「囲まれた!」
「どこ?みえない!」
壁と天井の蜘蛛の巣を破って、大蜘蛛の群れが出現した。一匹でも1mぐらいある。それが10匹以上。いや、もっといるかも。
ひさびさにやばい予感がする。
・・
槍を振るって近寄って来た蜘蛛を仕留める。それぞれの蜘蛛はそれほど強くはない。問題は数が多いこと。戦いの基本は数なのだ。
「メイ、式神を出して!」
「わかった!」
メイが紙を掴んで投げると一匹のサルになった。メイの後ろで蜘蛛と取っ組み合いを始める。
「覚醒!」
槍を掴んで近寄って来た蜘蛛に突き刺す。そして次。
あかりがマジックミサイルを放つ度に蜘蛛が吹き飛ぶ。シャリがメイスを振り回す。走り、跳んで、蜘蛛を倒しまくっていると、通路の向こうから3mもある大きな蜘蛛がやってきた。
「マジックボルト!」
あかりが通路に向けて攻撃魔法をぶっ放した。何匹かの蜘蛛と共にやってきた大蜘蛛が吹き飛ぶ。
「あ!」
背後でシャリの叫び声。振り向くとシャリが倒れていた。一匹の蜘蛛が足元に噛みついているところを槍で突き刺す。
「シャリ!」
シャリは意識がない。顔色が青くなっている。毒か。
『毒消し!』
恩恵を使うと顔色が戻ってきたが倒れたまま。
「シャリは大丈夫?」
メイが駆け寄ってきた。
「毒は消した。ヒーリングポーションを飲ませて!」
状態異常耐性を持つシャリが倒れるのだからかなり強力な毒なのだろう。とにかく今は蜘蛛を何とかしなければ。
・・
蜘蛛を倒しまくって、最終的には20匹以上倒したかもしれない。気が付くと蜘蛛はいなくなっていた。死体も残っていない。
「大丈夫か!シャリ!」
「……おにいちゃん」
毒消しが間に合ったみたいだ。シャリの意識は戻っている。
「よかった……」
「お兄ちゃん」
あかりの声がした。通路の先を指さしている。そこにはあかりが吹き飛ばした大蜘蛛の残骸が残っていた。
「もう5分も前にからそこにあるんだけど」
ということは。
「これはダンジョンの外から来た生き物?」
――
挿絵はあかりちゃんvs蜘蛛
https://kakuyomu.jp/users/yamamoriyamori/news/16817330653798881515
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