124 虫のダンジョン

「探していた鉱石を見つけたの!」

メイがうれしそう。どうやら昔の金鉱山の廃坑で、金を取った残りの石の山がそれなんだって。あかりと持って帰る相談をしている。金鉱山ってあったんだなこの世界、ダンジョンでしか金が出ないと思ってたけどそんなわけないか。


「何の鉱石なの?」

「賢者の石ですかね」

それ、そんなにゴロゴロしてるもんなの?


 それはそうと、ダンジョンの話。


「虫だったら、やっぱり殺虫剤じゃないですか」

「メイって割と容赦ないよね」

「そうですか?」

うん。


 メイが殺虫剤を合成してくれた。それから背負い式の水鉄砲。錬金術って金よりこういうもの作ってた方が実用的だよね。


・・


 翌日はメイとあかりが忙しいみたいなので、シャリと軽くダンジョンに行くことにした。


「シャリが大人だと違和感あるんだけど」

「おにいちゃんより背が高いのって新鮮」

シャリが後ろから抱きついてくる。


「当たってるんだけど」

「当ててるもん」


 ガサガサガサガサ


「なんか来た!」

ダンジョンの暗がりに目を凝らす。向こうから黒い絨毯が床を近づいてくる。いや、あれは絨毯ではなくて大量の……


「GGGGGGG!!!!!」

Gが来た。でかい。それぞれ50cmぐらいあるのでは。茶色く黒光りしたヤツだ。


「シャリはおにいちゃんが守る!」

アイテム化してあった水鉄砲を実体化して構える。噴射!


 ガサガサガサガサ!!!!


「ぜんぜん効かない!?」

っていうか、殺虫剤かけてもすぐは死なないかも。Gは。


 アイテム化して持ってきていたオイルの樽を投擲して恩恵で着火。


 ダンジョンの床が爆発的に炎上した。燃え盛るオイルの中を火だるまになったGが走り回る。そして飛ぶ!


「うわーー」


 なんでGって人の顔に飛んでくるんだろうね。炎については僕は耐熱あるしシャリも盾に耐熱付いてるから大丈夫だろうけど、火のついたGが飛び交って地獄のような光景だった。


「シャリは大丈夫だった?」

「大きな虫だったね」

わりとあっさりしてる。よく考えたらこの国、普段はGが出ないからあれに特別な印象ないのかも。いやでもあかりとか絶対だめそう。


・・


「あのダンジョンは一度バルサンした方がいい!」


 宿に帰って、あかりとメイに説明する。

「リアルな説明はいいから!」

やっぱり苦手みたい。


「メイさあ、とにかく超強力なバルサン作ってよ。ダンジョン中に効くやつ」

「息できなくなっちゃいますよ」

「えーっと」

どうだろう。


「僕、毒無効あるから」


・・


 翌日。今度は一人でダンジョンに行く。入る前に。

「今日って他に入った人います?」

安全確認を忘れずに。


 ガサガサガサガサ


『来た!』

殺虫発煙筒バルサンに火をつけると次々に投げる。今日はアイテムボックスに入れて大量に持ってきたのだ。ダンジョンが煙で前が見えなくなる。しばらく耐えると煙はダンジョンに吸い込まれて消える。


『いなくなったかな』


前進する。ダンジョンの分岐ごとに殺虫発煙筒に火をつけて放り込む。

「汚物は消毒だぁーーー!」


 死体が消えてなくなるのがダンジョンのいいところだね。

 あちこち殺虫して回っていると、両開きの大扉を見つけた。ここでもボスは扉あるんだな。


「ボス部屋だよ!」

ひとりだとなんかむなしい。


 せっかくなので開けていくことにした。メイの迫撃砲セットをアイテムボックスから引っ張り出して設置する。


「おじゃましまーす!」

扉を蹴り開けると、中を見ないで迫撃砲を撃ち込む。さらに殺虫発煙筒の塊を束ねて放り込み、アイテム化してあったオイル樽も投げ込む。そして迫撃砲の二発目。炎の中でガサガサという音がする。三発目をぶち込んで扉を閉める。


 ガリガリガリガリ


 扉を向こうから引っ掻く音が響く。僕のレベルが少しずつ上がる。さすがにレベル5までは無理そうかな。最後にレベルがちょっと多めに入ると音が静かになった。


『勝ったかな』

扉を開けるとなにもいない。宝箱を探す。

「あった!」

罠もなかったので宝箱を開けて中身を持って帰る。


・・


「科学の勝利だね!」

帰ってメイにお礼を言う。


「ボスはなんだったんですか?」

「見てない」

多分虫なんだろうけど

「あ、でも宝箱は結構入ってたよ!」

あのダンジョン、しばらく入る人いなかったみたいで溜まっていたみたい。


「つるつるテカテカした黒茶の皮鎧」

「ダンゴムシっぽい盾」

なんか微妙にリアルだな。


「合成用の素材にしましょう」

女性陣が嫌がったので、僕の小手と脛当てが強化された。


・・


 このダンジョン、何気においしいので攻略のし甲斐はあるんだよな。ボスを倒したときの感触で言うと、このダンジョンは王都や地元のダンジョンよりレベルが高い。一人でボス部屋を殲滅すればそれなりにレベルが上がりそうな感じがする。


「ちょっとシャルロットに会って来たいんだけど」

あかりにお願いして、シャルロットのお城に飛ぶ。


「どうしたのおにいさん?」

「レベルを預かって欲しいんだけど」

「いいわよ」


 王女の頬に、ちゅっ。


・・



 今ならデポジットでレベル3になってるしレベリングのチャンスだ。


 殺虫発煙筒を焚きながら進むけど、今日は虫が少ない感じがするな。やっぱり昨日は溜まっていたんだろうか。そして、ボス部屋まで来た。


 前と同じく、迫撃砲をセットする。そして殺虫発煙筒や油樽も積み上げておく。


「せーの!」

扉を蹴り開けるや否や迫撃砲を撃ち込んで殺虫剤とオイルも投げ込んで・・・


 ガリガリガリガリ


 例によって締め切った扉の向こうから引っ掻く音。ダンジョンボスってボス部屋から出られないとかあるのかな。あ、音が止んだ。


 レベルゲージを見る。ギュギュっとゲージが上昇して上限に達する。体の奥から湧き上がる感触。インチキっぽいけどレベルアップだ。


・・


「ただいま!」

「おにいちゃん、お帰り!」

「お兄ちゃん、レベル上がってるじゃない!」


――


フィン:レベル5(up)(人間:転生者)

・恩恵:レベル判定、レベル移譲、気配察知、槍使い、投擲、格闘、縮地、精神耐性、スタミナ向上、ロケート、手斧使い、スコップ、庇う、耐久力向上、罠スキル、炎、クリーン、テイム(妖精)、言語理解、耐熱、隠ぺい、盾術、力持ち、覚醒、突撃、予知、解錠、反射、恩恵奪取、メッセージ、ライト、騎乗、スイッチ、疾走、跳躍、水、氷、毒無効、毒消し、巨大化、縮小化、風(new)


シャリ:レベル8(人間)

・恩恵:癒し(フィンに効果2倍)、プロテクション(フィンに効果時間2倍)、攻撃力付与、メイス使い、リワインド、状態異常耐性、催眠術、盾術、完全回復、変身、力場障壁


あかり:レベル9(エルフ:転生者)

・恩恵:鑑定、初級攻撃魔法、中級攻撃魔法、隠密、耐寒、マッピング、詠唱破棄、空間転移、アカシック・アクセス、エレベーター、転送ゲート


メイ:レベル8(人間:転生者)

・恩恵:衣装製作、アイテム化、投げナイフ/ダーツ使い、エンチャント、形状加工、紙の神、上級錬金術、アイテム合成


シャルロット:レベル7(人間)

・恩恵:レベルブースト、[?]、[?]、[?]、レベル預かり、[?]、[?]


――

挿絵は大きいシャリちゃん

https://kakuyomu.jp/users/yamamoriyamori/news/16817330653708812575

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