122 秘密基地

 レベルアップパーティーだ。


 メイの地下施設がパーティーっぽく飾り付けられている。具体的には「あかりちゃんレベル9おめでとう」と書かれた垂れ幕とか。


「おにいちゃん、あかりおねえちゃん、レベルアップおめでとう!」

「みんないらっしゃい!」

「無礼講よ!」

「ところでここはどこ?」

きょろきょろする王女。


 っていうか、僕たちどうやって来たの?


「今度の恩恵は転送ゲートなのよ」

どや顔で説明するあかり。


「あらかじめゲートの魔法陣を書いておけば、ゲートとゲートの間を移動できるの」

「距離に制約はある?」

「この世界の中ならないわね」

すごくない!それ。

「とりあえずメイの実験室とここにゲートを設置したわ」

ゲートの数は現状八個までらしい。レベル数だな。大きさや一日の回数もレベル依存っぽい。


「お城にも部屋を一個用意するから作って!」

シャルロットはセキュリティホール好きだな。


・・


「ところでおにいちゃんの今回の恩恵は?」

「大きくなったり、小さくなったり」

「やってみせて!」

僕は小さくなってみせた。1/10ぐらいだからちょうどブラウニーのサイズ。するとシャリも変身して子猫になった。騎乗の恩恵を使ってシャリに乗って走り回ってみる。

「にゃー」

「なんか面白い!」

あかりとメイとシャルロットがうらやましそうに見ている。


「みんなもやる?」

「「「できるの?」」」

レベル人数までだから、いまだと四人だな。


 騎乗スキルがないと猫ライドはかなり難しいみたい。バランス感覚あるあかりは何とかなってるけど他の二人は落ちまくってる。


 この後、シャリがくたびれて死にそうになった。

「ふにゃー」



 この”本拠地”は地下だけど明るい。なぜかというと電球が灯っているのだ。ここだけ時代が中世ではない。

「本拠地というより、秘密基地だな」

「その呼び方のほうがしっくりきますね」


 メイの恩恵を使えば発電機も電球も作れる。真空にするところは僕も手伝わされた。クリーンで空気を除去するのだ。それと発電機もテイムした妖精たちがくるくると回している。

「これは試作だけれど、本番はもっと大きな発電機を作るんです」

「それって妖精が回すの?」

「お湯を沸かして蒸気で回すんですよ」

そうなんだ。火力発電かな。


「ここの地下に炉を設置する工事してるんですけど……」

「けど?」

「ちょっと足りない材料があるんですね。それを取りに行きたいんです」

「えっとどこに?」

「このあいだ言ってた、西の方の国境の山の近くです」

「ああ、蜘蛛?のダンジョンの話の時に言ってたところね」

「でも、あかりちゃんの転送ゲートがあれば、ここで実験しながらでもいろんなダンジョンに行けますね」

「あれはすごいね」

「もっと褒めてくれてもいいのよ」

「どこから来た?」


・・


「それで、どうやって行こうか?」


 西の国境の山まで、歩くと二週間かかる。

「走ればもっと早いでしょ」

「僕ならともかくみんな走れなくない?」

いや、あかりはエルフだから走れるか。


「お兄ちゃんが一人で走っていけばいいのよ」

えーと、歩いて二週間だとだいたい500kmだな。僕が疾走の恩恵を使えば起きている間は時速30kmで走れるから、17時間?


「僕だけならできなくもないかも。あかりもそんなに走れるの?」

あかりはびっくりしたように僕を見た。

「お兄ちゃんに乗っけてもらうに決まってるでしょ」



「それじゃ、出発!」

「また後でね!」

みんなに向かって手を振るあかりを縮小で1/10にするとバックパックに入れる。中にはあらかじめクッションを敷いてある。


「あかり、大丈夫?」

「我慢する」

「それじゃ、スタート」


 日の出とともにスタートした。できれば今日のうちに300kmぐらい進みたいところ。


・・


 道を間違えそうになったこと三回と、盗賊だか検問だかわからないけどぶっちぎったこと二回。夕方前にはちょうど真ん中あたりにある町についた。


「乗ってるだけで疲れた」

元のサイズに戻ったあかりが一言。


 ちょっと広めの宿を取って、とりあえず一休みしてから部屋の机や椅子を端に寄せる。あかりが床に魔法陣を書いて……


 魔法陣が光り、あかりの姿が消えてからしばらくするとまた魔法陣が光った。今度はシャリもいる。メイは夜は家なので来ない。


「お帰り!」


・・


「おにいちゃん、思ったんだけど」

夜、隣でくっついて寝ているシャリが話しかけてきた。


「なんだシャリ」

「シャリがグリフォンに変身して飛んでいけばよくない?」


 なるほど。


・・


 翌朝、町を出てグリフォンに変身したシャリの背中に乗る。バックパックには昨日と同じく縮小したあかりを入れておいて。


「うわー」


 グリフォンはすごいスピードで飛んでいる。走るより速いスピードだ。しかも直線だしね。変な奴らも出ない。

 西に向かってまっすぐ飛んで、午後には山並みが迫ってきた。騒ぎにならないように町から見えないところに着陸。気配察知をして誰もいないことを確認。


「到着!お疲れ様」

シャリとあかりが元の姿に戻る。


「おつかれー」

「着いたー」


 さあ、町に入るか。


――

次回より新章


――

挿絵は猫に乗るメイちゃん

https://kakuyomu.jp/users/yamamoriyamori/news/16817330653621591848

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