118 エレベーター

 あかりの新しい恩恵はエレベーターだって。


「なにそれ?」

ファンタジーっぽくなくない?

「エレベーターっていうのはウィザードリーにも出てくるぐらい由緒正しいファンタジーなギミックなのよ」

「へー。ところでどこで使うのそれ?」

「エレベーターを使えばダンジョンの行ったことあるフロアを移動できるのよ」

「すごく便利な気がするような気も」

「そうでしょ」


・・


 次はシャリのレベルを上げるべく、翌朝またダンジョンに走る。一階に入ってすぐのところで、あかりがエレベーターの恩恵を使って三階へ移動。三階の階段を降りたところに出てきた。


「まじか。すごすぎじゃない?」

「もっと褒めてもいいのよ」

「あかりは偉いな」

「えへへ」

たまにはいっぱい褒めてやることにした。妹だしね。


 せっかく三階に来たけど、まず階段を上って二階ボス部屋前に出る。ここまでダンジョン入ってから五分。


「いくわよ!」

「いつものやらないの?」

「……早いから忘れてた……」

いいけど。


 今回はメイに頼んで秘密兵器を用意してもらったのだ。宝箱アイテムボックスから長い筒が出てくる。台座を組み立てて床に設置する。


「本当に爆発しない?」

「アダマンタイトで補強してあるから大丈夫ですよ」

まあそういうなら大丈夫かな。


 あかりが両開きの扉を前に立つ。

「ボス部屋よ!」


 シャリとメイが扉を蹴り開けた。ボス部屋の中はオークがいっぱいと、オーガも二体いるな。割とフルメンバーがそろっている。


「発射!」

火の恩恵を使って筒の中に仕込まれた火薬に点火。発射された砲弾がオーガに当たると爆発した。炎の海。阿鼻叫喚。これは迫撃砲だな。


「二発目発射!」

迫撃砲に急いで二発目の弾を込めると連続発射。部屋の中は炎と爆発の渦。


『三発目どうしよう……』

爆発がすごくてどこを狙っていいかわからない。気配察知を使ってボスの気配がある辺りに砲弾を撃ち込んだ。さらなる爆発音。


 突然、体の奥から力が沸き上がってきた。レベルアップだ!


『いろいろやばくない?』


・・


 爆発が収まるとそこは焼野原になっていた。


「私たちはなんということをしてしまったのかしら」

「でも冷静に考えると、いつもとやってることそんなに変わらないですよね」

「それもそうね」


 とりあえず宝箱は開けて帰る。ちょっといい皮鎧がでてきた。魔法の品ではあるが僕らにはいらないかな。これも保留。帰りも出口までエレベーターで一瞬。

「やっぱり空間魔法ってすごいな」

「えへへ」


・・


 というわけで今日は二人目。メイはシャリに順番を譲るそうだ。お姉ちゃんだから。


 僕はデポジットが切れてレベル4になっている。ここでシャリのレベルをシャルロットにデポジットする。そして僕にレベルブースト。

 これで見た目上僕はレベル5、シャリは6。準備はできた。


 シャリと目を合わせる。

「そういえば、さっきのおにいちゃんの恩恵はどうしたの?」

「えっと、水にしといた」

「お母さんと一緒だね」

シャリはニコッと微笑むと僕に抱きついてきた。


「なんかおにいちゃん久しぶり」

「そうだっけ?」

それほどでもないようなあるような。シャリの頭を撫でる。シャリが目を細める。


「……おにいちゃん」


 まだ始まってないのにすっかり出来上がってるんですけど。


・・


 飴を舐めながら長い時間シャリとキスを交わす。キスというより舌で舐め合ってる感じだけど。シャリはすっかりグニャグニャになっている。

 僕もメッセージを使えるようになったので、シャリとキスしながら会話できるようになった。と言っても便利というほどでもないけど。


「( 行くよ、シャリ )」

(・・ うん、おにいちゃん ・・)


レベル接続コンタクト!』


 シャリとの間にレベル回路が形成される。


レベル譲渡トランスファー


・・


「今度の恩恵はどうしたの?」

「基本に戻っておにいちゃんを守ることにしたの」

「シャリは優しいなあ」

僕に髪を撫でられながらシャリは答える。細い金髪を漉く手を止めると、まだ物足りないような表情で僕を見つめてきた。猫の時も可愛いけど人のほうがもっとかわいい。思わずぎゅっと抱きしめる。


「( シャリはかわいいなあ )」

(・・ おにいちゃん! ・・)

「盛り上がってるところ悪いんですけど」

「はいなんでしょう」


 メイがジト目で僕のことを見ている。


「明日の準備をしないとですね」


・・


「それじゃデポジットお願いします」

シャルロットの頬にキスをする。レベルが吸い出されてレベル2になる。明日の午後まで。


「それじゃ帰ろうか」

「おにいちゃん、さっきの続きは?」

「シャリはかわいいなあ」

なでなで。


――


フィン:レベル3(人間:転生者)

・恩恵:レベル判定、レベル移譲、気配察知、槍使い、投擲、格闘、縮地、精神耐性、スタミナ向上、ロケート、手斧使い、スコップ、庇う、耐久力向上、罠スキル、炎、クリーン、テイム(妖精)、言語理解、耐熱、隠ぺい、盾術、力持ち、覚醒、突撃、予知、解錠、反射、恩恵奪取、メッセージ、ライト、騎乗、スイッチ、疾走、跳躍、水(new)


シャリ:レベル8(up)(人間)

・恩恵:癒し(フィンに効果2倍)、プロテクション(フィンに効果時間2倍)、攻撃力付与、メイス使い、リワインド、状態異常耐性、催眠術、盾術、完全回復、変身、力場障壁(new)


あかり:レベル8(エルフ:転生者)

・恩恵:鑑定、初級攻撃魔法、中級攻撃魔法、隠密、耐寒、マッピング、詠唱破棄、空間転移、アカシック・アクセス、エレベーター


メイ:レベル7(人間:転生者)

・恩恵:衣装製作、アイテム化、投げナイフ/ダーツ使い、エンチャント、形状加工、紙の神、上級錬金術


シャルロット:レベル5(人間)

・恩恵:レベルブースト、[?]、[?]、[?]、レベル預かり


――

挿絵はシャリちゃんレベルアップです

https://kakuyomu.jp/users/yamamoriyamori/news/16817330653453694189

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