114 大司教の部屋
「ところでお兄ちゃん今度の恩恵は?」
あかりが聞いてきた。
「えっと、騎乗と、スイッチ?」
「スイッチとは?」
「多分だけど、味方の攻撃モーション終了時の硬直時間中に入れ替わって攻撃を続けるっていうスキルなんじゃないかな」
「ゲームっぽいわね」
「いまさら?」
◇
そして大司教のお部屋訪問の日がやってきた。公式にはパウル司教の部屋に行くだけなんだけど。そこから四人であかりの空間転移で大司教の部屋へ。パウル司教は何も見ていないふりをしている。というか見たくないのかも。
「ここも久しぶりね」
「まあね」
あの時は大変だったよなーと、ちょっとしみじみしちゃう。
「一応、目標は日本に行くダンジョンの情報なんだけど」
「どうやって探す?あかりちゃん」
メイが聞いてくる。
「まずはこの部屋に置いてあるものを一通りかな」
あかりは本棚に向かった。本は開かないで、ただ背表紙を手で触れて回る。
「それでいいの?」
「そういう恩恵なのよ」
あかりの新しい恩恵、実はすごいのでは。
一応、部屋に置かれている本は一通りチェックしたらしい。机の引き出しは僕とシャリで調べた。トラップとかあるかもと思ったが今のところない。もっとも、某マンガみたいに自分の机にトラップを仕掛ける人とかあまりいないよね。
「それじゃ、本命の隠し部屋探しね」
「そんなのあるの?」
「こういうのはあるって決まってるのよ」
「どうやって探すの?マッピング?」
「部屋に聞いてみるのよ」
あかりは床に両手をついた。
「アカシック・アクセス!」
必殺技っぽくてかっこいい、けど。
「それって、言う必要あるの?」
「雰囲気」
・・
本棚の一部と、床に収納庫がある事が分かった。ていうか隠しているもの全部わかっちゃうとか結構ひどいのでは。
「なんというか、いろいろな人の苦労を無にする恩恵だね」
「前は堅実って言ってくれたよね?」
聞いただけだと堅実感あったんだけどね。
まずは床の収納庫を調べることにした。僕がトラップを調べたけど特にはなかった。それより鍵が超めんどくさい。レベル上げといてよかったかも。
『解錠!』
床下は金庫だった。さすがにお金には手を付けないでおく。僕たちは泥棒じゃないからね。今更だけど。
「お金以外は契約書とかね。魔法のものはないみたい」
書類は面倒なので関わらないようにしておく。
「それじゃ本命行こう!」
『解錠!』
本棚の一部が手前に開く。通路がある。隠し部屋だ!いいぞ!盛り上がってきた。
・・
「もう帰った方がよくないですか?」
隠し部屋の戸棚をあさっているとメイが言い出した。
「なんで?」
「いやな予感がするんですよ」
そうかな?
「ここにそれっぽい資料があったわ」
「あかりナイス」
そういうのを気にしないあかりにより家探しを続行。
「この小箱の中から魔法の力が」
あかりがなにか見つけてきた。トラップを調べるけど大丈夫そう。
「開けてみようか」
「動くな……」
いきなり声がした。振り向くとメイがシャリを羽交い絞めにして喉にナイフを突き立てている。
「この女がどうなってもいいのか……」
なんかメイの声も口調も違ってるんだけど。
「メイ、どうした?」
「動くなと言っているのだ……」
「お前は誰だ?」
「久しぶりだな……フィン」
メイなんだけどメイの声じゃない。
「……我は……君らに倒された大司教だ」
なんだこの展開。ラスボスかよ。
・・
メイはシャリの喉元にナイフを突き立てたまま。
しばらくみんなの動きが止まっている。
(・・ 大丈夫よおにいちゃん ・・)
シャリが僕をじっと見ている。目でうなずく。
(・・ 3つ数えたら抜け出すから。3、2、1 ・・)
『ライト!』
メイの目の前に光の玉を発生させた。ライトの恩恵はカメラのストロボぐらいの光量が出せる。
「うぁ」
メイの手が緩んだ瞬間、シャリは子猫に変身すると思いっきりメイの手を引っ掻いた。
「ギャ」
引っかかれたメイが思わず叫ぶ。行けるか!
「スイッチ!」
その瞬間、シャリと入れ替わった。そのままメイを組み伏せると、格闘の恩恵で抑え込んだ。あかりが素早くロープで縛りあげる。
「さーて、話を聞こうか」
と言っても、さるぐつわしてるんだけどね。
メイは両手を後ろ手に固定され、腕と胴体をまとめて上からロープでグルグルと縛られてた状態、なんだけど、胸のところだけロープがないのでそこだけ大きく張り出している。
「なんかエロくない?」
「しょうがないでしょ」
いやまあ、いいんだけど別に。写真撮れないのが残念。
「シャリは大丈夫だった?」
人に戻ったシャリの頭を撫でる。
「ん」
すり寄ってくる感じがなんか猫っぽい。
それじゃ、メイだけど。っていうか大司教を尋問するか。
さるぐつわを外すと、じっとあかりを見ている。
「どうやら、これに関心があるみたいね」
あかりが手に取った小箱をひょいと持ち上げる。
「触るな!」
「なるほどねー」
あかりは小箱を両手で持って凝視する。
「アカシック・アクセス!」
一分ほど経過。
「わかったわ」
「話が早くていいね」
――
挿絵はあかりちゃんアカシック・アクセス
https://kakuyomu.jp/users/yamamoriyamori/news/16817330653279371647
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