第三部第三章 教会の秘密

111 三人目のレベル7

「これ、消えないの?」

焼け焦げた電車四両分の巨大ミミズの残骸が荒地に鎮座している。

「ダンジョンじゃないんだから。消えたらリポップしちゃうでしょお兄ちゃん」

「でもこれ腐るんじゃない?」

まあいいけど。


 メイが巨大ミミズの洞窟に興味があるそうだ。せっかくだから使いたいとか。何に使うんだろう。

 みんなで入ってみたけどもう巨大ミミズはいなかった。まあ、あれ以上いたら大変だよな。岩盤に穴を掘って住んでいたようで意外と広い空間があった。メイは目を輝かせている。


「ここを本拠地とします!」


 なんの?


・・


 メイはしばらくここで工事をするそうだ。動物やら鬼やらが土木工事をしている。式神って工事にも使えるんだな。メイがいない夜の間も工事は進行中らしい。


「そういえばお兄ちゃん、恩恵はどうだった?」

あかりが聞いてくる。

「一個はメッセージで、ある程度の距離まで相手に直接声を届けられるやつ」

「ふんふん」

「もう一個はライト。光るやつね」

「今回は意外と普通ね、ところで私のレベルなんだけど」

そうだよね。忘れてないよ。


・・


 夜中。ひさびさに兄妹三人で出かけている。


「これでレベル7になれるかと思うとなんか胸がいっぱい」

「それ以上フラグ立てない方がよくない?」

「おにいちゃん、いま合図したから開くよ」


 城壁の床がゴトッと音を立てて開く。

「やあシャルロット!」


 出てきたのはエリーさんだった。


「あなたたち、姫様を呼び出すとかどういうつもり?」

どうも、シャルロットが出かけるところをエリーさんに見つかったらしい。それで代わりに来たとのこと。

「ほんとそうですよね」

「ちょっとは反省しなさいよ」

「若者の自主性に任せた方がよくないですか?」

「私だってまだ若いわよ!」


 エリーさんはぼやっと光るペンダントを持っていた。王女から借りてきたらしい。いやちょっと不思議だったんだよね。真っ暗な通路を王女がどうやって来たのか。


・・


「シャリ!」

「シャルロット!」

王女の部屋。二人の美少女が抱き合っている。尊い。


「えーっと、積もる話もあると思いますが、先にやることやったほうがすっきりしてよくない?」

あかりが提案。


 王女はちらっと僕の顔を見る。


「それじゃ積もる話があるから、エリーは外で見張ってて」

「えーっと、まあ、仕方ないですね姫様」

エリーが出ていったあと、シャルロットに説明する。


「シャリの時と同じことをしたいんだけど」

「今度はあかりさん?」

あかりが十回ぐらいうなずいた。シャルロットが顔をしかめる。


「私の部屋は不純異性交遊の場じゃないんですけど」


「いやこれは恩恵の力なので仕方ないし一部の地域では挨拶みたいなもので」

「お兄ちゃんつべこべ言わないでお願いしなさいよ!」

「なんでもするのでお願いします」


「うーん、どうしてもって言うなら考えないでもないですけど……」

あかりがあと二十回ぐらいうなずいた。


「それじゃ、私のレベルも上げてもらおうかな」

「無問題よ」

僕が答える前にあかりが即答する。


「二回ね」

えっと足りるよね。うん大丈夫。


「それじゃ、シャルロット、お願い」


 ちゅっ


 シャルロットは背伸びをすると僕の頬にかわいくキスをした。体の奥からレベルの上がる感触。ポケットから柑橘味のキャンディーを取り出す。


「あかり、口を開けて」


・・


 五分後。すでに涎だらけ。あかりと舌を絡めているところをシャルロットにしげしげと観察されてちょっと気になるんだけど失敗するとめんどくさいので念入りに。


(・・おにいちゃん、シャリのときより熱心じゃない? ・・)

え、そうかな?ていうか、そろそろいいか。


レベル接続コンタクト!』

あかりが僕を受け入れる。レベル回路が形成される。では!


レベル譲渡トランスファー


 成功してほっとしていると、シャルロットもベッドに寝転んできた。縦よりも横が広いベッドに転がった王女が僕にささやいてくる。


「こんどは私の番ですよ」


 二回だよね。


・・


 暗い通路をエリーさんに送られて戻る。

「まったく、こんな通路があるとはね」

「でも外からは開きませんから」

「本当に?」

「大丈夫大丈夫」

「繰り返されると怪しい」

「無問題」


――


フィン:レベル1(3 down)(人間:転生者)

・恩恵:レベル判定、レベル移譲、気配察知、槍使い、投擲、格闘、縮地、精神耐性、スタミナ向上、ロケート、手斧使い、スコップ、庇う、耐久力向上、罠スキル、炎、クリーン、テイム(妖精)、言語理解、耐熱、隠ぺい、盾術、力持ち、覚醒、突撃、予知、解錠、反射、恩恵奪取、メッセージ、ライト


シャリ:レベル7(人間)

・恩恵:癒し(フィンに効果2倍)、プロテクション(フィンに効果時間2倍)、攻撃力付与、メイス使い、リワインド、状態異常耐性、催眠術、盾術、完全回復、変身


あかり:レベル7(up)(エルフ:転生者)

・恩恵:鑑定、初級攻撃魔法、中級攻撃魔法、隠密、耐寒、マッピング、詠唱破棄、空間転移、アカシック・アクセス(new)


メイ:レベル7(人間:転生者)

・恩恵:衣装製作、アイテム化、投げナイフ/ダーツ使い、エンチャント、形状加工、紙の神、上級錬金術


シャルロット:レベル4(2 up)(人間)

・恩恵:レベルブースト、[?]、[?]、[?]


――

イラストです

https://kakuyomu.jp/users/yamamoriyamori/news/16817330653160873164

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